第77話 あんたはやはり、規格外だよ
ゴルドの、突拍子もない提案に、全員が流石に理解できず固まる。
アイハも目を大きくして止まっている。
「ん?無理かな?行けそうじゃない?」
ゴルドだけが、出来るっしょ?という姿勢を崩さなかった。
「いや、ゴルドさん。それって、もはや転生じゃないから」
美月がようやく、この場にいる全員の代弁をする。
「え?そうなの?」
「だって、転生って、異世界から来ることを指すのよ?この世界にいる人呼ぶのは、違うでしょ?そういうのは、たぶん召喚とか、何なら転移魔法?」
「じゃあ、それでもいい。レジスタンスの偉い人、召喚なり転移させよう!俺たちが行くんじゃなくて、とにかく呼ぶんだ!」
それが手っ取り早いと言うゴルド。
まぁ、そりゃそうだが、と美月は困ったように頬をかく。
そこで、ベルネシアが説明に入ってきた。
「魔法を何でもありと思ってほしくないんだけど・・・まず、転移魔法には、色々と条件がある。詳しくは省くけど、あくまでも術者が、対象を認識していないと、転移はさせれないよ」
「認識って、具体的には?」
「まぁ、目視して、コイツを転移させるって補足する感じだね」
ゴルドが質問して、ベルネシアが答える。
「つまり、姿形もわからないレジスタンスの偉い人を、ここで急に転移させるのは、魔法では無理と?」
「うん。ていうか、そんなの出来たら何でもありじゃないか」
ベルネシアは呆れた様子で言った。
「召喚魔法もベクトルがそもそも違う。ありゃ魔法生物を構築して呼ぶものよ。召喚されるものは、自分の生み出したモノってわけ」
「ありがとう。やはり!アイハの転生魔法でしか無理ということだな!」
「え?!ゴルちゃん!出来るなんてアイハ言ってないよぉ!」
異世界最高峰の魔女、ベルネシアが、魔法での解決が不可能だと説明したところで、ゴルドがアイハに望みを託す。
だが、アイハも首を横に振る、難色を示した。
「出来ないのか?」
「いや・・・そもそもやった事ない」
ゴルドの問いかけに、アイハは丁寧に答える。
「だって!転生魔法って、異世界をいつも検索してたから、この世界限定でなんて・・・とりあえずやってみるだけやろうか?」
「頼む!」
ゴルドは拝む様にしてアイハに頼む。
アイハはうーん、と集中する様に目を閉じる。
「・・・レジスタンスの偉い人、だけだと、限定がやっぱり、難しいよぉ~」
アイハの割とすぐに泣き言が入り、周りも、やはり無理かと諦めムードが働く。
「エリュシール国内に限定しているか?」
「うん。それでも、レジスタンスの指定が難しいの。私の検索は、能力とか、心情までは把握できるけど、立場とかその人の過去までは無理だよぉ~」
いや、十分規格外だけどね、と聞いている周りが思ったが、ゴルドはしばらく考えて、思いつきを口にする。
「人心掌握に長けて、弱きものを見捨てれない、正義感の強い人物で、今焦っている、人で絞れないか」
「ん~・・・あっ!いたよ」
ゴルドの指定に、アイハが声を上げる。
「よし!呼ぼう!」
「いやいやいや!ゴルド様!それがレジスタンスのリーダーとは限りませんぞ!」
「いたずらにアイハの能力を使って、この世界で彼女の能力が露見する方が不味い!考え直してくれ!」
ローガンとヴォルクが相次いで止める。
「・・・そう言われると、それもそうか」
とゴルドは素直に受け取った。
大人しく意見を受け取る辺り、ゴルドらしいといえばゴルドらしいが、そこで終わらないのが彼である。
「アイハの能力がバレるのは確かに不味い。だが、せっかくそれっぽい人物を検索できたんだ、ねぇねぇベルネシア、転移魔法は、場所の指定なら可能かい?行ったことがない場所でも」
ベルネシアはゴルドから質問を受けて、回答をする。
「行ったことがないとはいえ、この世界の場所ならば、私なら可能だよ。詳しい座標などがわかればね」
「アイハ、検索した人物の、詳しい場所、分かるか?」
「えっと~・・・分かるけど、どう説明しよう?ここからねぇ、北と東のちょっと東寄りの方向で、お馬さんの足ですごく歩く距離なんだけど~」
アイハが困り顔で、説明の仕方に困っていると、ゴルドは美月を今度は呼ぶ。
「ミツキに、場所の座標説明をしてみてくれ、ミツキなら解読ができる」
「え?私?」
「君の頭脳なら、アイハの座標指定が計算できると思う」
「わ、わかった」
アイハの、少しフワッとしたその場所までの説明を、量子頭脳の美月が思考計算し、地図に書き上げる。
ものの数分で、その人物の場所が特定された。
その地図の場所をベルネシアが見て、頷く。
「これだけ詳しく書いてくれているならら、この場所へ転移はできるよ」
「よし!じゃあ行こう!そして確かめればいい!」
ゴルドは意気揚々と立ち上がるが、待て待てとまだ待ったがかかる。
家令が今度は意見をあげた。
「我々が行ったとして、追われている身のレジスタンスが、そう簡単に我らへ腹を割って話をするとは思えません」
「あー、そうか・・・あ、でも研究所の捕虜の中に、たしか兄がレジスタンスですっていう兵士いたろ」
「え?そうなのですか?」
今度は家令が目を丸める。
ゴルドも、えっ?と驚く。
「この前、そう教えてくれたけどな?一緒にご飯食べて、実は~、みたいな」
「なに領主が捕虜と一緒にご飯食べてるんですか・・・」
町長が違う部分に反応して突っ込むが、にわかに現実味を帯びてきた。
「その捕虜と一緒に、レジスタンスの親玉と思われる人に会いに行って、協力しようぜと申し出る。うん、完璧じゃね?」
ゴルドの荒唐無稽なプランが、何故か完成しつつあった。
ヴォルクは眉間に指を当てて、考えるポーズをとるが、やはり敵わないなと笑い出す。
「ボス、あんたって・・・やっぱ規格外だよ」
その場の全員が、顔つきが変わり、このゴルドの計画が盤石になる様に、各位が動き始めた。




