第76話 二方面作戦
「それじゃあ、二方面作戦に関して、各位意見をくれ!」
ゴルドが大広間で、呼べるだけ転生者を呼んで、作戦本部をたてる。
「目的はシンプルに2つ。モンスタースタンピートを止める事。そしてエリュシール国を倒す事」
ゴルドが提示した目標に対し、若干ざわめきが起きる。
それぞれが横にいる者に、感想やら何やらをざわざわとした所で、1番に手を挙げたものがいる。
「はい!ヒロ!」
「僕の提案は、山を燃やす事です!そのまま焼け野原にして、モンスターが反対側に逃げれば、エリュシール国も混乱して、その混乱に乗じて攻めましょう!」
「うーん!却下!山燃やすのは危険すぎじゃない!?こっちまで燃えたらヤバいって」
ゴルドがハイ次!と全員を見渡す。
「はい」
「ベルネシア!どうぞ!」
「まずエリュシール国に呪いをかけて、数百年かけてじわじわ追い詰める」
「なげぇ!まずの前提に時間かかりすぎ!モンスタースタンピートどうすんのよ!」
ゴルドが仰け反りながらツッコむ。
「ここにいる戦える者全員で突っ込めば、モンスターなら倒せるわよ」
「お!オレ賛成!」
ノイルが分かりやすいとベルネシアの案に乗る。
「そんなの作戦でも何でもないわ!ただの特攻じゃねぇか!次!」
「はい!はーい!」
「ワカバ!頼むぞ!」
「まずここに居る領民全てを宇宙に逃してですね」
「却下!壮大すぎるわ!」
「えー!最後まで聞いてくださいよー!」
ゴルドと愉快な仲間達の漫才を見たところで、ヴォルクが咳払いをして手を挙げる。
ゴルドは、真打登場だな、となぜか決め顔をするが、ヴォルクは無視をして話し出した。
「まず、現状の整理だ。モンスタースタンピートは、モンスターの出現スピードから見て、まだ多くない。せいぜい山をうろつく程度だ。過去のように、山を降りてくる集団になるまで、数日の猶予はある」
そこまでで説明を切ったところで、ゴルドが手を挙げる。
「どうした?ボス」
「そもそもの質問なんだが、なんで山降りてくるんだ?モンスターは仲間を待っているのか?」
あぁ、とヴォルクは納得して、その解説に入る。
「山には縄張りがあって、モンスター同士でも争いをする。そこへ、見知らぬよそのモンスターが入り込むと、当然だが争う。まぁ、これが100体とかその程度なら、山から降りることはないだろうな・・・」
ヴォルクは少し溜めて、言った。
「スタンピートは、モンスターの数が飽和して起きる。争いに敗れて逃げたモンスターが、追いかけるモンスターを呼び、いつしか集団となり、山から雑多に逃げていく。今回推定される数は・・・およそ10,000体だな」
「・・・え?いちまん?」
ゴルドが目を大きく開けて、驚く。
わなわなと膝が震えて、汗をかき出した。
「だが、さっきも言ったが、そこまでの数になるのに猶予がある。そこが付け入る隙となる」
ヴォルクの自信を持った言い方に、暗くなった大広間が、多少和らぐ。
「それで?その隙とは?」
ミハエルがヴォルクを見て聞く。
「先に、エリュシール国を攻める。そして、泉の秘密や扱いの情報を手に入れて、大元を断つ」
ヴォルクの説明は、なるほど理にかなっていた。
だが、誰もが同じことを思っていた。
「エリュシール国って、そんな簡単に攻めれるの?」
ヒロが、代表して質問をする。
「簡単じゃないだろうな。この前は奇襲でどうにかなったが、本拠地を攻めるとなれば、一筋縄では行きまい」
「え?じゃあどうすんの?」
ゴルドがマジかよっ、という顔でヴォルクを見るが、ヴォルクは落ち着いている。
「エリュシール国の特徴であったろう?侵略国家だと。あの国に攻められて、辛酸を舐めた生き残りがいるはずだ」
「あー、レジスタンスね」
ヒロが納得して手を叩く。
ゴルドはピンときていないが、とりあえず頷いてわかったフリをしておく。
「レジスタンスと連携が取れれば、奴らの自国内から潰していける。崩壊すれば、国の機能はなくなる。あとはスタンピートの大元を絶って、モンスターを料理してやればいい」
「完璧だヴォルク!それで行こう!」
雰囲気、いけそうな感じがしたので、ゴルドはゴーサインを出す。
だが、異議を申し立てるように、数人が手を挙げた。
「え?・・・じゃあ、はい、ローガンからどうぞ」
ゴルドは渋々手を上げたものを指名する。
「エリュシールを内部工作を足がかりに攻めるのは賛成です。ですが、スタンピート開始までの猶予で、エリュシールを倒せますかな?腐っても大国で、レジスタンスがいるとはいえ、今の今まで押さえ込まれている弱小組織では、対して期待もできんでしょう」
ゴルドはうぐっ、と声を出す。
ローガンの指摘は尤もだ。
続けて、手を挙げるものがいるので、ゴルドは指名する。
「はい、ミツキ」
「レジスタンスとの接触方法は?エリュシール国へはそもそも山超えるんでしょ?個人で動くの?小隊規模?どっちにしろ、レジスタンスとの交渉にも時間がかかると思うわ」
「・・・そうね~、その問題もあるねぇ~。まぁでも、ベルネシアの規格外の魔法とか、ワカバ達の超技術を使えばなんとか~」
ゴルドは目が泳ぎだす。
まだ挙手しているミハエルがいるので、ゴルドはどうぞと指名する。
「レジスタンスと接触する際は、我らの情報は秘匿するのだろう?誰を行かせるのだ?ワカバ達の技術も、漏れる恐れがあるなら、使えないが?」
ゴルドは、もはや何も言い返せず、ヴォルクを見て、諦めムードの顔をした。
「まぁまぁ、みんな、そんなに姫をいじめないでよ」
シルヴィがゴルドをよしよしと撫でてなぐさめる。
「いや、別にいじめたわけではないが・・・」
ミハエルがゴルドを引っ張って抱きしめる。
「あ、ちょ、取らないでよ」
「いや、取ってない」
「取ってるじゃん!私がよしよししてたのに!」
「いい歳してよしよしする必要はない。ゴルド様も恥ずかしいだろう!」
どちらかというと、ミハエルに抱きつかれている方が、ゴルドは顔を赤くして恥ずかしがっている。
「レジスタンスとか、不確実な奴らに任せるより、隠密で我らがエリュシール国に潜入して、王族諸共暗殺すれば良かろう」
「それなら、冒険者の私たちが、冒険者のフリして入国するのが自然じゃない?」
「たわけ、この世界では冒険者はメジャーではないと言ったろうが!」
「あの、喧嘩してる場合じゃないから、うん、離してくれるかな?」
ゴルドが手を挙げて2人を止める。
ミハエルは、ハッとなって、顔を赤くしてゴルドを離す。
シルヴィは恨めしそうにミハエルを見ていたが、ゴルドはピンと来たのか、何か思いついた顔をして全員に顔を向ける。
「アイハいるかい?」
「ん~?どうしたのゴルちゃん?」
ふよふよとアイハが浮きながら出てくる。
「今隣国にいるレジスタンスの、偉い人、転生できない?」
ゴルドが言った言葉に、全員が、理解出来ず、固まる。
アイハも「・・・え?」と珍しく素の驚く顔をした。
しかし、ゴルドだけ、自信に満ち溢れた顔をしていたのだった。




