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第75話 救われた者




エドガー伯爵は、覚悟したが足りなかった。


目を点にして、ヴォルクの諜報本部室のモニターの数々を見ていた。




「えっと・・・何この動く絵画?」


「カメラの映像を見る鏡さ。詳しくはオレも知らない」


「鏡じゃなくて、モニター画面ですよ?ゴルド様」


ワカバがゴルドに訂正する。


エドガー伯爵はしばらく考える。



「あっ!魔法か!ゴルドく~ん、人が悪いなぁ。王様しか出来ないと思っていたから、油断してたけど、そうかそうか、転生魔法で魔法使いをたくさん呼んだのかぁ」


「いや?ワカバ達は魔法一切使えないよ?」



ゴルドの純真無垢な顔がそこにあり、エドガー伯爵は黙ってしまう。




「このカメラ搭載の飛行型ロボット飛ばしているんです。便利ですよ?」



小さな手のひらに収まる四角い黒い箱みたいなものを見せられるが、エドガー伯爵は全くピンと来ない。


それが浮き上がって、ふよふよと飛ぶのを見るが、取り敢えず、そういう魔法なんじゃろ?と勝手に思うことにした。


たぶん、考えても答えは出ない、そう悟った。





「で?洞窟の映像は?」




ゴルドは早速、スタンピートの出所を確認する。


ヒロとヴォルクもいて、同じく映像を確認する。




そこには、洞窟から確かに次々にモンスターが出ていた。


しかも、種類がバラバラである。


動物系、虫系、ゾンビ系、悪魔系と、モンスターの博覧会か?と思うほど、様々なモンスターが出てきていた。




「何だこれは・・・ここから生まれているとでもいうのか?」



エドガー伯爵も、苦々しい顔をしながら、その映像を見る。



「洞窟の中も見れます」



ワカバがモニターを操作して、画面を切り替える。



すると、内部に映像が変わり、モンスターが次々に出てくる泉の様子が映る。



「泉?・・・モンスターの湧き出る泉とか、勘弁してよぉ」



ゴルドが、これどうやって止めんの?という意味も込めながら、その映像を見ていた。



「捕虜の奴らにも確認してもらった。まず、この泉が、どうやら今までのスタンピートの原因で間違いないようだ」


ヴォルクが静かに語る。

ゴルド達も聞き入る。



「この泉がどうやって出来たかは、定かではないが、いわゆる異世界への境界が繋がった泉らしい。だから、次々と異世界のモンスターがやって来る」



「次元の狭間とか、異次元ホールみたいなものですね」


ヒロが良く聞く設定なので、それっぽい名称を言う。



ヴォルクは鼻で笑って、いいネーミングセンスだ、と次元の狭間呼びを採用する。




「この次元の狭間だが、エリュシール国の奴らが見つけた際は、動物系のモンスターしか出てこなかった。そういう泉だと思っていたが、研究を進める上で、狭間のチャンネルを変えることが出来るのを発見した」



ヴォルクはそこまで言って、まぁ、どうやってチャンネルを変えているかは、さすがに兵士程度は知らないみたいだがな、と付け足す。



「この場所も、研究所で見ていたが、オレ達の襲撃で全員逃げるようにして帰ったわけか」


ゴルドの質問に、ヴォルクは頷く。


「くそっ、閉じさせておけばスタンピートにはならなかったのに・・・」



後悔をにじませるゴルドに、ヒロは言う。



「ゴッド様、もしかして・・・相手の転生方法は、この泉じゃあ?」


「・・・なるほど、可能性は高いな」


ゴルドも言われて気付き、納得する。



アイハのような規格外は、そうポンポンいるまい。

エリュシール国がこの泉を使って、召喚していると言われれば自然だ。




「この泉について、こちら側でも調べるなりするが、エリュシール国がある程度扱えるなら、そいつらに後始末させた方が手っ取り早いのも事実だ」



ヴォルクが、意を決してゴルドの方に顔を向ける。




「スタンピートも当然対応するが、どうする?エリュシール国も同時に相手しないか?」




ゴルドとエドガー伯爵は、共に開いた口が塞がらないようで、文字通り口をだらんと開けていた。




先に正気に戻ったのはエドガー伯爵である。



「いや、いやいやいや、いやいやいやいや。無理でしょ?こんな湧き出るモンスタースタンピート相手にしながら、侵略しまくっているヤバい国まで相手にするとか、無理無理無理」



エドガー伯爵は顔面蒼白になって言う。


為政者であれば、まず避けるべき行動だ。


複数の戦線を維持することは、ただ消耗を強いられているに過ぎない。



「王様は、エリュシール国は内乱が起きているのでは?と読んでいる。そうじゃなきゃ、未だに宣戦布告して来ない理由の説明にならないからね」



ヴォルクもヒロも、エドガー伯爵の話を黙って聞いている。


ゴルドは口を開けたままだった。



「スタンピートを止めてから、準備してエリュシール国を対応する。なんなら、エリュシール国は内乱で勝手に弱るかもしれない。なら、そこを狙うべきだ」




「・・・長い、戦争に、なりそうですね」




ヒロが、ボソリと言った。





ゴルドの口が閉じる。





「ま、まぁ、長期化は避けられんね。スタンピートの対応して、国同士の戦争になるんだ。すぐに終わる話じゃない」



エドガー伯爵は、当たり前のように言う。早口で、若者達を諭すように続ける。



「もちろん、その分領民には苦労を強いるが、だからといって無謀な選択はするもんじゃない。全て終わってから、再建をだね・・」






「一刻も早く終わらせる選択肢を取ります」






ゴルドが、エドガー伯爵の喋るのをさえぎる。



「ゴルドくん!正気かね!?」



エドガー伯爵は考え直すように、ゴルドの服を掴んで訴える。


「早まるな!君の決断で、このアイハンド家がなくなるかもしれないんだぞ!それこそ!ここにいる部下はどうなる!領民はどうなる!?」



エドガー伯爵の言うことは、尤もであった。


今まで、部下からの諫言(かんげん)はあったものの、領主として、爵位も経験を段違いの上の人から、注意をもらうのは、ゴルドにとって初めての事だ。




「ですが、こんなクソみたいな戦争は、可能な限り速やかに終わらせるべきです」



「出来るなら私だってやるよぉ!どうやってやるって話だよ!」







「転生で呼んだ大勢の仲間がいます」





ゴルドは言い放つ。



間違っても、それは自分の力ではない。



他力本願の極み。



だが、領主であるゴルドは、自分はそれで良いとむしろ開き直っている。




「足りなければ、土下座でも何でもして、更なる転生者を拝み倒して呼びます。オレはそうやって救われてきたんです」



ゴルドはエドガー伯爵にそう言った。


その真剣で、まっすぐな言葉に、エドガー伯爵も詰まる。




「違いますよ、ゴッド様」




そこに、異議を唱える者がいた。



「オレも違うと思うぜ、ボス」




ヒロと、ヴォルクだ。



「あ!私も私も!」


ワカバもニシシ、と笑って手を上げる。









「救われたのは、僕らの方ですよ」






ヒロが、毅然と言い放った。


微笑むその顔は、自信に満ち溢れ、言いたくて仕方のない子供の様に、光り輝くオーラがあった。



ヴォルクもワカバも、嬉しそうに頷く。

その答えに、間違いなどないと、確信を、そして誇らしさを持っていた。




「あの!オレもです!」



「私もです!」



周りで聞いていた、ヴォルクのスカウトした諜報員が手を挙げる。



それだけじゃなく、ワカバの仲間の宇宙組も、嬉しそうに手を挙げでジャンプする。




「・・・ぜ、全員じゃないか」




エドガー伯爵は周りを見て驚く。


手を挙げていないものはいなかったからだ。



全員、ゴルドに救われたと断言した。





ゴルドは、震え出して、急に顔を隠す。




「・・・え?ゴルドくん?・・・あ、泣いてる?」


「エドガーおじさん。黙ってて」



ゴルドに割とガチで怒られて、エドガー伯爵は凹んだ。




だが、2人とも、その後すぐに、ニカっと笑うのであった。






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