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第51話 アイハンド領最強決定戦 開始




デジマ競技場に、領内の住民が集まっている。


かなり集まってくれたが、2万人規模の席はやはり埋まらない。


だが、一種のお祭りのようで、住民達は嬉しそうに、ワクワクした表情を浮かべていた。


ベルネシアが転移魔法を駆使して、領内から希望者を呼び寄せたのだ。

行きと帰りはこれで心配がない。


次に、ワカバ達が総出で、出店を用意している。


この世界に甘味は果物か、ハチミツクッキーぐらいの村民にとって、急にパフェだの、りんご飴だの、チョコバナナだのが並び、度肝を抜かれる。


領内の催しとあって、無料提供なので、子供達は喜んで出店を見てまわる。




「なんか、すげぇな。オレの知っている領じゃないみたいだ」



ゴルドが普通の感想を述べる。というか、もはやそんな感想しか出ないようだ。


リンゼと美月とフィオを連れて、出店を見て周り、ちゃっかり子供に混じって自分もキャッキャと遊ぶ。




「んもー。普通こういう時は、遠方の村長とか、村中に会って挨拶とかをねぇ」


「まぁまぁ、ミツキ。こんな感じなのが、ゴルド様の良いところですわ」


美月が苦言を(てい)すが、フィオが嬉しそうに宥めて、リンゼも別に構わないと言わんばかりに、いつもの無表情でゴルドを見ている。



「よし!リンゼ!お前の気にしていたリンゴ飴だぞ!あとフィオはチョコバナナで、ミツキ殿はからあげ!」


「こっ!子供扱いしないでください!」


「え?いらなかった?」





「・・・いりますけど!」




リンゼが赤くなって、りんご飴をゴルドからもらう。



「いいわね、可愛いりんご飴で。私はからあげって、まぁ、好きだけどさ」


「はい、あーんして」


「ゴルドさん!無敵か!?あなた今無敵か!?」



美月がゴルドから、からあげをあーんされる。


まさに不意打ちの攻撃に、美月は顔を赤くして、カップに入ったからあげを奪い取り、一欠片だけ、ゴルドの差し出すからあげをパクりと食べた。



「まぁ、ラブラブですこと」


フィオがニヤニヤして美月達を見るので、美月がゴルドをけしかける。


「ゴルドさん!フィオにチョコバナナはペロペロ舐めていやらしく食べなさいって指示して!」


「やめんか!!そんな指示はしない!!」



そんな4人を、住人達は微笑ましく見守る。



「来年にはお世継ぎが産まれておるかもなぁ」

「んだんだ。これで領も安泰だで」






所変わって、選手待機場所。


今回は64人が参加しており、6回戦勝ち抜けば優勝となる。

準決勝ベスト4に残れば、最強パーティメンバーとして認定され、ゴルドの護衛に選ばれる。


騎士団員、冒険者がほとんどを占める中、ヒロとヴォルクとシルヴィが、3人でベンチに座り雑談していた。


「思ったより多くの人が参加してくれてますね。なんか緊張します」


ヒロが素直に目の前の待機する面々を見て言う。


「そうかい?私はあまり緊張しないね。若者ばかりで、むしろ微笑ましいさ」


シルヴィがふふっ、と笑顔でいうが、そう言えば、彼女は不死身のため、この参加者の中では年長者になるんだなと、ヒロは思う。



「じじいみたいなこと言って、足元掬われても知らんぞ」


「うん。性別女だから。正しくはばばあだから。てか、ばばあだとしても、失礼だから、ぶっ飛ばすよ若造」


ヴォルクがシルヴィに牽制し、シルヴィも喧嘩売るなら買うぞと言わんばかりに熱くなる。


「いやいや、意味もなく喧嘩しないでよ。雰囲気悪いなぁ」


「不死身の騎士って、ズルすぎだろ。オレはコイツの出場は反則だと思う」


若干、分からんでもないことをヴォルクは指摘して、周囲も同意する空気が出ていた。



「ふーんだ。姫守るうえで、個性の一つだもーん。悔しかったら不死身になれば?」


「なれる訳ねぇから言ってんだよ。でもまぁ、やりようはあるから、覚悟するんだな」


ヴォルクは不敵に笑う。

シルヴィも、ふふっといつものように笑う。



だが、2人とも、目が笑っていないのを、ヒロはわかっていて、怖いので無視することにした。




「そういえば、クローナ殿とキャロット殿は?いつもヒロ殿と一緒なのに」


「うん。2人とも集中するために、バラバラでいるんだ」


ヒロはちょっと寂しそうに言う。


「あの2人はキツイんじゃないか?戦闘能力で言えば、悪くはないが、獣人はあくまでフィジカルオンリー。魔法やら飛び道具なりがないと、厳しいぞ」


ヴォルクが客観的な目線で、分析をする。ヒロも、概ねその認識であった。



「どうかな?私はいいセンいくと思うよ。何たって、ダンジョンを一緒に超えた仲間だしね」


「精神論は否定しないが、現実的に、足りない部分も認めないとな」


ヴォルクが言うと、シルヴィは、まっ、ただの願望だからねぇ~、と軽く流した。




「時間だ」



ヴォルクは立ち上がり、開会式へ向かう。



他の参加者も同調して、競技場のスタジアムへ向かう。



ヒロは、深呼吸と、頬を自ら叩いて、気合いを入れた。






一回戦、二回戦と、広いスタジアムを四つに区切り、4試合同時に行われる。



基本は武器有り、魔法有り、本気の戦闘勝負である。


多少の重症はベルネシアが指揮する救護班にて、蘇生レベルでの治療が可能と説明しており、手加減無用のガチンコ勝負が繰り広げられる。



冒険者と騎士団員は、剣技を使う者が多いので、似た様に見えるが、我流のストリートファイターと軍人という差がある。


型破りの奇襲攻撃がヒットして勝利する冒険者もいれば、正統派の研鑽を積んだ実力者として騎士団員が勝つ場合もあり、生の戦闘を見ることがない領民からすれば、かなり刺激的かつ興奮する内容であった。



その中でも、異色の「獣人」「エルフ」「宇宙人」が、数少ないながらも、面白い戦いを展開する。




「っしゃああ!!」


野生の狼そのものの動きで、体術と噛みつき、引っ掻きで翻弄したクローナ。


今、勝利の雄叫びを上げる。

対戦相手を倒し、2回戦を潜り抜けて、3回戦に駒を進めたようだ。



エルフからは、ミハエルは副町長の立場から出場を断念。


代わりに、エルフ戦士の数名が参加して、騎士団とはまた違う、森の戦士の戦闘術と精霊魔法が、見るものを驚かせた。



まぁ、驚かせた度合いでいうと、宇宙人メンバーから、唯一の出場者、イチゴが、予想外の快進撃を見せる。



ヒロの世界基準で言えば、中学生ぐらいのイチゴ。


この世界に召喚された影響で、宇宙人メンバーには怪力が備わってはいるものの、そのほとんどは戦闘センスを持っていない。


だが、イチゴは自身が開発した「誰でも武天カンフー学習装置」なるもので、はるか昔、星々を征服した武天流格闘術というものがあったそうだ。


その流派の残存資料を組み合わせ、学習装置に落とし込み、イチゴ自身が脳と体に直接学習させたうんたら、とスケマツが解説をするが、とりあえずすごい武術を駆使するということらしい。




そんな異色なファイターもいつつ、試合は佳境に入っていく。





「さぁ!皆さん!いよいよ3回戦突破し、ベスト8に残られた選手の皆様です!」



ワカバが、ノリノリの司会で、マイク越しに楽しそうに喋る。



「まずは!アイハンド家が最初に呼び出した【英雄】!ヒロ!」



歓声と、割れんばかりの拍手と共に、ヒロが照れくさそうに手を振りかえす。


「続きまして!世紀末状態の廃墟都市から来た、諜報部隊隊長!ヴォルク!」


ヴォルクが静かに手を上げる。


「不死身の騎士の名は伊達ではなかった!本当に不死身の理不尽の脅威!シルヴィ!」


「わーい、姫見てるー?」


軽いノリでシルヴィが応える。


「狼少女は甘くない!野生の獰猛な攻撃に気をつけろ!クローナ!」


真剣な眼差しで、クローナは仁王立ちする。


「謎の武天流カンフーの使い手!今大会参加者の最年少!イチゴ!」


「アチョー!」


イチゴがカンフーの構えをしているが、何となく、ギャグ感が否めない。



「ウサギさんは優しいだけじゃない!その筋肉と体格は、百獣の王すら脅かす!キャロット!」


「よろしくお願いします」


キャロットが丁寧にお辞儀をする。


「森の守護者!エルフ戦士の最強剣士!モルアナ!」


短髪のエルフが剣を掲げて応える。

彼は、紹介通り、ミハエルよりも剣技に秀でた、エルフ戦士の中で最も強い人物である。


最後に、騎士団員が紹介された。



「アイハンド家が誇る!最強騎士団!その代表として勝ち残ったのは、ビィンセント!」


「まぁ・・・ボチボチやりますか」


軽い会釈で、そう言う団員。

中年の、決して若くない年齢に見える、顔のシワと、くたびれた様子の風体。


騎士団の中で、昼行燈(ひるあんどん)と呼ばれる彼は、気さくな中堅団員として、親しい存在のキャラであった。


しかし、油断してはならない。


彼はあまり表に出たがらない気質だが、今回わざわざこのような目立つ舞台に立ったのには、理由がある。



彼こそ、数少ない、先の怪物の山遠征で、モンスターのスタンピートを経験した、前線から帰還した、数少ない生き残りなのだから。






「ゴルドの坊ちゃん行かせるなら、あっし以上の適任者はいませんよ」




ベスト8に残った面々に、まるで宣戦布告するかのように、ビィンセントは言う。



「奇遇ですね、ビィンセントさん」


ヒロも、騎士団員のメンバーとは顔見知りなので、彼のことを知っている。


なので、気さくに答えた。






「僕も、自分を、ゴルド様を守る適任者だと思ってますよ・・・まぁ、ここまで残った人、全員がでしょうけどね」





ヒロが笑いながら言って、8人互いが、顔を見合う。



その目は、真剣そのもの。



ひりつく空気が、競技場の歓声とともに、熱く盛り上げてくれていた。






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