表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

51/61

幕間 村長の大皿





村の長老が、縁側でお茶をすすり、緩やかな朝のひと時を満喫している。


長閑な村は、畑仕事をする音だけがして、子供達の無邪気な遊ぶ声だけが、一際聞こえてくる。



「長老、聞きましたか?ゴルド様が温泉なるものを造ったとか」


「ん?なんじゃそれは?」


村役の男が、またゴルド様の偉業を嬉しそうに伝えにくる。


英雄の召喚の時が、1番大盛り上がりの話題を持って来たが、それよりも前から、この村役は何かとゴルド様の活躍を周りに伝えたがる。


まぁ、なんて事のない、よくある村人の行動である。






「ほー、天然の湯につかるとな」


「それはもう!大層気持ちがええそうじゃと!」


「デジマまではまぁ、行けんこともないが・・・家の風呂と何が違うんじゃ?」


「ただのお湯と一緒にしたらいかん。いわゆる効能と呼ばれる、その温泉につかる事で回復とご利益があるらしくてな・・」


村役の男が熱く語り始めたところで、村長の部屋から、何かが落ちる音がする。



2人が振り返ると、村長が大事にしていた、大皿の飾りが、真っ二つに割れていた。



「な!な!なな!なんとぉおお!!これは先代の御領主様から(たまわ)った、大事な記念皿!おぉ・・・おぉ・・・先代御領主様の形見の品がぁ~」



村長は大皿に駆け寄り、涙を流して嘆く。



「あちゃー、先の山のスタンピートからも、これだけは守るって、村長担いで逃げてたのに・・・いや、普通に考えたら、その時担いで逃げたから、ヒビ入ってたんじゃないか?」



「たわけ!この大皿はアマダンタイト製じゃぞ!どんな衝撃にも耐えうる大皿で!先代様の若かりし頃、ワシと山に登り、巨躯の山神を調伏させ、その年のスタンピートを止めた褒賞に賜ったものじゃぞ!」



「それ、いつも聞くけど、なんで村長が先代の御領主様と山登るんだよ?しかも、体のでかい山神を調伏って、どうやって??」



「じゃから、それは2人だけで無くて、不思議な力により、眩い光から勇者を呼んでだな・・・」


村役の男は、また始まったと苦笑いする。


この村名物の、村長の過去自慢だが、あまりに荒唐無稽で、村長自身も、当時は身の丈2メートルを超える大男だったとか言うが、もう当時を知るものはボケているか、寿命で天に召されているので、真実がわからない。



尤も、目の前の好々爺が、元々2メートルもある大男だったとか、そんな恐ろしい存在なわけがないと、誰もが信じていなかった。




「ほら、村長。泣いてないで、この皿片付ける・・・おもっ!何これおもっ!!」



村役の男は、大皿の欠けた半分を持とうとして、その重さに驚く。


まだ齢40なので、体力的に耄碌しているつもりがないのに、この多少デカいだけの皿の破片が、鉛のように重く感じた。



「触るでない!ワシの皿じゃぞ!あと、言ったじゃろうが、これはアマダンタイト製じゃと。下手に触るとケガをするぞ!ほら帰った帰った!」


村長はひょいひょいと皿のかけらを集めて、奥の部屋に行ってしまった。



「あ~、ありゃへそ曲げちまったな・・・まぁ、大事にしていたもんなぁ。皆んな着の身着のままで走って逃げてたあの時も、爺さんのくせに、走り回って避難の呼びかけしていたもんなぁ・・・しかも、あんな重い皿背負って・・・火事場の馬鹿力は恐ろしい」



村役の男はそう言って、畑仕事に戻る。







不吉な予兆は、少しずつ、見えない形で現れていた。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ