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第49話 領主には向いていない領主



ゴルドが広間に主要陣を集める。


初期の主要陣である、家令のシュナイダー、騎士団長ローガン、町長のアルセノス、補佐のフィオ。


そして転生組の、英雄ヒロ、内政家美月、諜報部隊長ヴォルク、デジマ町長ベルネシア、副町長ミハエル、開発部顧問ワカバ、冒険者代表シルヴィ。


そして、ゴルドに、側仕えリンゼに、転生魔法妖精のアイハ。


「おぉ・・・なんか感動的だな。こんなに仲間がいるなんて・・・」


ゴルドがジーンと嬉しそうに感慨深そうにしみじみと言う。


「はいはい、ゴルドさん。話を進めましょうよ」


美月が手を叩いて催促する。



「うむ。皆に集まってもらったのは他でもない。冒険者ギルドについて、私の思いついた案を聞いて欲しい」



改めて、ゴルドが全員へ呼びかける。



「えー、まず。我が領のお金を稼ぐ手段は、まだ現状はない認識でいいな?」


ゴルドがフィオと美月を見て確認する。


「はい。今のところはないですわ。来年に、馬と作物が、上手くいけば売りにできるかと」


「うむ。まぁ、作物が減る一方だった崖っぷちを考えれば、上出来ではある。だが、もう一個の問題として、この領に外部の者を呼び辛い環境にあるのだな?」


ゴルドが今度はローガンとヴォルクを見て聞く。



「そうですな・・・あまりにも変わり過ぎて、見られて困る物が増えたかと」


ローガンははっきりとそう断定した。

続いて、ヴォルクも付け足す。


「まず、今までが無防備すぎた。誰でも構わず領に入れるし、諜報組織もない。今その最低限は整えられたが、ここを観光地にして、人を大量に呼ぶのはやめた方がいい。トラブルの対処が追いつかん」


うんうん、と、ゴルドは頷いている。


「え?そんな見られて困るもの、ありましたっけ?」


ワカバがコソッとヒロに聞く。


「いやいや、ワカバ達の技術に決まってるでしょ。ここ中世のヨーロッパ風な時代なんだから、カメラとかモニターとかカートがある時点でヤバいよ」


ヒロが丁寧に指摘してあげるが、能力的な意味で言えば君がそもそもバレたらまずい超特別保秘対象なんだよ?と聞き耳を立てていた家令は心の中で思った。



「ありがとう。この出来の悪いオレでも、ここまで理解は出来たら、きっと皆もそこまで理解してくれていると思う。だが、冒険者諸君を200人近く呼んでおいて、彼らの能力を遊ばせておくのは勿体無い」


ゴルドは珍しく、まともなことを言いそうである。


それを見て、幼い頃を知る、ローガンに家令に町長は、の立派になられて・・・と、目頭を熱くしていた。


まだ、言いそうなだけでなのだが、大概この3人も、ゴルドに甘い。



「ダンジョンを経験した私だから分かるが、あの場所で働ける人材とは、希少な存在だと思う。そして、シルヴィから聞いたが、ダンジョンで手に入るものは、かなり有益で、早い話金になる」


シルヴィが嬉しそうに、きゃー!姫ー!とエールを送るので、ミハエルが軽めにチョップして怒る。




「この世界には無いダンジョンだが、先の町長選で皆も知っている!そう!」




ゴルドは勢いよく、アイハを両手で指し示す。アイハはポカンとしている。



「ここにおわす!アイハ様が!ダンジョンへ連れて行ってくれる!!」




ゴルドがドーンとアイハを持ち上げる。

アイハはキョトンとしながらも、次に照れて、いやー、それほどでもと頭をかく。



「冒険者ギルドの一つ目の役割として、アイハ殿に協力をしてもらい、異世界のダンジョンを潜ってもらう。そこで戦利品を得て、我が領のギルドで換金するのだ!」



おぉー、と数名から歓声があがる。


確かに、異世界のダンジョンを潜らせるのは名案だ。


「ダンジョンで取れた貴重品・・・なるほど、売り物としては、期待できますわね」


「うん。合わせて、その異世界での活用方法も手に入れられたなら、この世界での先駆者として、その物自体の独占的ルートも手に入る」


アルセノス町長とフィオが、親子で商人のそろばんを弾く。

概ね、利益ありとして期待できる案のようだ。




「もう一つ、私から案がある」



ゴルドは更に、人差し指を立てて、全員に宣言した。



各人が、どんな案かと静かに耳を傾ける。



「観光地として、デジマに人を呼びたい。これは、温泉施設のあの感動的な造りからして、私はぜひ成し遂げたいと思った」


ゴルドの強い意志の表れに、リンゼは無表情ながらも、驚いた。


未だかつて、こうしたいと、ゴルドは領に対して、言ってことがなかった。


どうしよう、どうにかしなきゃ、という受け身の問題ばかりに囚われていたのに、自ら初めて、この領でやりたい事を言った。



リンゼは、誇らしくなって、無表情が崩れそうになった。

慌てて、こっそりと口を手で隠すが、その口元が、ニヘラと笑ってしまっているのを、ベルネシアに見られていたが、ベルネシアも空気を読んで、見なかったことにしてあげた。



ゴルドの話は続く。



「だが、ローガンとヴォルクの懸念も尤もだ。外部の良からぬものを招き入れる可能性があるのは、私も本意では無い」




ーーーそこで、異世界から客を呼ぶ




ゴルドが広間に集まる前、美月達に言ったセリフを、もう一度言った。




「元の世界に戻ることが出来るなら、異世界に生きる者を客として呼べば、彼らは異世界に帰る。この世界には我が領の秘密は漏れない」



どうだ?と、ゴルドが自信満々に言う。


「転生魔法を持つのは、このアイハ様のみ。この領の秘密を知ったとて、異世界に帰れば、もうここには来れない。防犯としては最高だろう。異世界を超えて来れるわけないんだから」



ゴルドがはっはっはと笑い、皆んなからの称賛の声を待つが、なかなか来ない。


全員、驚いた顔をした様子で、反応がないようだ。



「・・・え?なんか不味かった?」


ゴルドが焦って心配になり聞く。



「あ、いえ。ゴッド様、いい案だと思います。普通にいい案すぎて、驚いてます」


ヒロが代表して言う。


続けて、美月も口を開いた。



「異世界のお客様だから、まずは冒険者が無難よね。それも、ちゃんと稼いでいる冒険者。通貨は異世界ごとでちょっと違うでしょうし、基本は物々交換かしら」


「そうですわね。金銀宝石なども、価値があれば良しとみなしましょう。ゆくゆくは、異世界の有識者や貴族も呼べば、物だけで無く、その異世界特有の知識や叡智なども手に入るかもしれません」


フィオも美月に同調する。

考えることがたくさんあるようだが、そのリターンは計り知れないと誰もが思う。



「異世界から人様呼ぶなら、万が一がないように、警備も厳重にしないとな」


「旅館の増設もしますよ~!お客さんいっぱい呼びましょうよ!」


「冒険者ギルドを、異世界からの最初の受付場としたらどうかな?冒険者がいる世界なら、それが逆に安心感に繋がるよ」


それぞれが、ゴルドの案に対して、盛り上がるかのように意見をどんどん出していく。


まさに、活気あふれる様子が、広間に広がっていた。



ゴルドは、安心する。




(オレにも、出来ることは・・・あったんだな)



ゴルドは、ずっと胸の奥にあった、硬い何かを、ようやくほぐせた気がした。




幼い頃に、最愛の母を亡くし、


優秀な兄達が先に戦死して、


偉大な父から、最期の言葉で、領を頼むと願われて、




一度たりとも、自分が領主で良いとは思わなかった。


重い責任に、終わらない仕事に、ただただ逃げ出したくて、隠れていた。



今だって、正直向いていないと思っている。



ヒロ達が来てくれなかったら、終わっていたと思う。




でも・・・



幼き「英雄(ヒロ)」が、慕ってくれている。


人智を超えた頭脳を持つ「内政家(ミツキ)」が付いてくれている。


不思議な妖精(アイハ)が、先祖の縁で来てくれた。


世紀末世界を敵に回した「傭兵部隊(ヴォルクたち)」が守ってくれる。


本来憎いはずの自分達を、信じている「種族ミハエル・クローナたち」が仲間にいる。


宇宙から来た「未知の存在(ワカバ)」たちが、頼ってくれている。


頼もしくも愛らしい、「不死身の騎士(シルヴィ)」と「魂魄の魔女(ベルネシア)」がいる。




そして、ずっと、オレのそばに居てくれている、家臣達(ローガン、家令、町長)彼女達(リンゼ、フィオ)がいる。




オレは、頼りない領主だけど。





そんなオレに、みんなが一緒にいてくれるなら、頑張ろうと思う。





「よし!アイハ様!転生魔法の改めて注意事項などを!」


「うん!分かったよ~」


ゴルドがアイハに呼びかけて、より詳細を詰めていく。




領地の未来は、明るいものであると、誰もが信じて疑わなかった。



「何か参考になる資料があったかも」


ベルネシアが空間魔法で、ダンジョンに関する参考資料を出そうとして、雑多に放り込んでいたアイテムボックスをさらう。


その時、いつか気まぐれで購入していた、占いの本が目についたが、今回は関係がないので放っておく。




ーーーーーーーー



不幸の前触れって、何か知ってる?


それはね、幸せであること。


幸福がやって来た時って、上昇しているでしょう?


だからね、落ちるの。



ずっと落ちている人が落ちても、気持ちにダメージはあんまり無いのよ。


だって、それがその人の普通だもの。


でも、幸せな人が落ちると、普通じゃないでしょ?


だから、不幸だって強く思うの。



落ちるとね、ちょっと落ちただけでも、すごくダメージになるのよ。




でも、覚えてて。




ずっと、上がり続けることは無理だし、無いわ。



下がる不幸ってのは、あって当然のもの。




でもね、上がる幸せって、あって当然じゃないの。




不公平だけど、世の中、上がれる幸せな人って、少ないのよね。



みーんな、基本不幸なの。




もし、あなたは今、自分が幸福だと思うなら、覚悟して噛み締めなさい。




その幸福は、長くは続かないし、とても希少なものだってことをね。




ーーーーー街一番の占い師







次回、50話突入!


形としては新章突入ですので、これからも応援よろしくお願いします!

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