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第48話 冒険者ギルド、いきなり廃止かも




執務室で、黙々と書類に目を通すゴルド。


今読んでいる書類は、建築物の完成や、農作物の順調な生育の報告がメインの書類だ。



「うんうん。発展してきているな。もう心配はいらないだろう」


ゴルドは満足そうにサインをして、さぁ仕事が終わるぞー、というノリで立ち上がる。




「いや、ゴルド様。人が増えたので、その分支出が増えています」



リンゼが逃さないとばかりに、指摘を入れる。


「建造物はもちろんどんどんと建ちますが、ヒロ様のお陰で資金なしで建てれるものの、その維持には人が必要です。つまり、お金が要ります」


「え?あれ?デジマ出来たらお金増えるんじゃないの??人増えたらお金生まれるんじゃ??」


ゴルドは見当違いな事を言う。

リンゼはため息をつきながら続ける。


「特産品や、観光地でもなければ人は居たところで、お金を落としてはくれません。増えているのは住人で、その住人たちがお金を稼がなければ、我々の領たはお金が入りません。今やっている事は、公共事業をして、自分達のお金を住民に渡しています。遠からず、我が領は破産しますよ?」



「・・・あれ?」



ゴルドは汗が吹き出し、慌てて美月の部屋に走って行った。


そこで、もしかしてウチは破産するのかと泣くように美月に縋り付く。



「そりゃあ、何もしなければ破産ですけど、これからその売りとなる物を選定して、フィオの家に取り扱ってもらって、商売を始めます。馬も、貰い物ですけど手に入っているでしょ?」


「おぉ、良かった。じゃあ大丈夫だな!」


「いや、大丈夫ではないですよ、ゴルドさん。リンちゃんが心配しているのは、今先行投資ばかりで、実となるものがない事を、理解してますかって事です」



「すまん。要するにどう言う事だ?」



ゴルドはすごいいい笑顔でそう言った。



リンゼも美月も、困った顔をしながらも、一から説明をする。



「そもそも、領の経営には、人、金、物がいるのよ」


美月がホワイトボードにマーカーで書きながら説明をする。


なぜ中世ファンタジーにホワイトボードがあるのかは、気にしないでほしい。

ワカバたちの技術力により作られた物なので。



「人は、働く人ね。領民とも捉えてちょうだい。人が居なきゃ、困るわよね?」


「うむ。そもそも農作物を作ってくれなければ、私も飢え死にするしかない」


ゴルドが素直にそこを理解する。


「そう。領民は、ゴルドさんの領土に住む権利をもらう代わりに、農作物の一部を納めている。これが基盤ね」


「ここは分かる。町だけでなく、村々もそうだからな」


ゴルドはうんうんと頷く。



「次にお金。領主は、領民に住んでもらう為に、お金をかけて色々するわ。これが公共事業ね。川に橋をつくったり、開墾するとかね。これを、お金を出して領民に指示をする。まぁ、お金の代わりに税を免除してやってもらう場合もあるけど、これも結局、対価を支払ってやらってこと」


「あー、確かに。なるほどね」



「で、お金がないと、この公共事業は出来ない。だから、領主はお金を手に入れる為に、例えば税収の農作物を交易でお金に変えたり、土地の特産物を交易で売ったり、っていうのを、商人に依頼して、お金を手に入れる」


美月がフィオと書いて、まさにゴルドにとっての商人をホワイトボードに書く。


ゴルドは感心しながら美月の話を聞く。



「で、ここに出た、農作物やら特産品が『物』ね。これがあって、初めてお金を手にいれる事ができるってわけ」



「うむ。よく分かった。人、金、物。それぞれの繋がりも、そうなっていたんだな」


ゴルドは深く頷いて、ようやく理解したと笑顔でいう。





「で、今の領の状態は、人はいて、お金が無くて、物は育て中ってこと。馬も繁殖前だし、農作物は前少なかったから、まずは領民優先で余裕なし。すぐ売れる物が無いから、このままだと破産だよってリンゼは言ってくれているのよ」





美月が丁寧に説明して、ゴルドは全て理解した。



そして、理解した分、ヤベーじゃんとツッコんだ。


「リンゼの言う通り!結局今特産品とか物が無いから破産寸前じゃねぇか!」


「すぐには破産しないわよ?前の外部の商家から巻き上げたお金があったから、今年いっぱいは持つわよ。来年は終わりだけど」



「いやーーー!!!タイムリミットあるじゃん!!それ!それがやばいんだって!物を早く手に入れなきゃ!!どうしよう!」


ゴルドは焦りと絶望を、涙と汗で表現するかのように、のたうち回る。



「競技場とか壁とか温泉とか!病院はまぁいるけど!それより優先すべき事あったよ!物だよ!うわぁーー!俺のミスだ!ゴメンみんなぁ!破産だぁぁあああ!!」



ゴルドが絶望する様子を見て、美月もリンゼも距離を空けて見ている。



「フィオの話をちゃんと聞いてないわね、ゴルドさん。馬の繁殖と農作物の収穫が、来年も良ければ、十分黒字が見えるのに」


「いい薬です。そこの理解もなく、この前たくさん許可出したので。今度から気をつけてもらわないと」


美月とリンゼが、2人だけで会話をする。



「でも、デジマに人が呼べないのはキツイわね~」


美月が仕方なさそうにそうつぶやく。


「仕方ありません。さすがに、ヒロ様を筆頭に、外部へ知られるわけにはいかない能力や技術があまりに多すぎます。よそにそれがバレるのは、この領土を狙われる可能性にも繋がります」


「だから、元々予定してた、観光地化とか、お客さんを呼んでの商売が、一切できないのよねぇ。あーあ、温泉とか、まさにうってつけなんだけど、領民にしか解放できないからなぁ~」


美月とリンゼの会話は続く。



だが、ゴルドは全く聞こえていないので、先ほどから絶望したままである。


えぐえぐと泣き出す情けないゴルドに、そろそろ助け舟を出そうかと2人が思っていると、美月の部屋に入る人物が現れる。




「姫!そこで冒険者ギルドの出番だよ!」



シルヴィである。



「冒険者ギルドがあれば!全て解決だよ!」



「ほ、本当か!」


ゴルドが藁にもすがる気持ちで、シルヴィに縋り付く。


「さぁ、涙を拭いて、姫」


「し、シルヴィ!」


キラキラとしたオーラを出すシルヴィに、美月とリンゼがちょいちょいと声をかける。



「ん?何だい?」


「冒険者ギルドを作りたいって言うけど、それが一番無駄なのよ?」


「えぇ!?何で!?」


「だって、この世界に冒険者ギルドないもの」


美月がシルヴィに言い放つ。

だが、シルヴィは負けじと言い返す。


「それは姫からも聞いた。この世界に冒険者ギルドはないとね。だから!先駆者として姫がやれば!独占だよ!」


「いや、気付きなさいよ。ギルドがないって事は、ダンジョンが無いのよ、この世界には」




「えっ・・・嘘でしょ?」



シルヴィが固まる。


少しして、いやいや、そんなバカなと言いながら動き出す。



「だってほら!モンスターいるでしょ!この世界にも!」


「えぇ、います。ですが、あくまでも生物としてです」


リンゼも美月側に立って同じくシルヴィに指摘をする。


「どういうこと?私の世界でも、生物としてだよ?」


「いいえ、そちらの世界では、ダンジョンと呼ばれる場所で、モンスターは生まれて、基本出てこないですよね?こちらの世界は違います。山や海などに、モンスターは確かにいますが、ずっと移動しているので、他の動物と変わりません」


これは、シルヴィだけでなく、200人いる他の冒険者からも聞いて分かった事だ。



「モンスターがいる、塔だとか、廃墟だとか、神殿だとか、そういうのはありません」


「えぇー!・・・じゃあ、宝箱とかは?」


「ありません」


「モンスターが落とすお金とか!」


「ありません」


「何度も倒せるボスとか!」


「いません。この世界ではモンスターは倒せば死にます。二度と復活しません」


「ガーーン!!」



シルヴィは事実を知り、膝をつく。


ゴルドは、え?何度も復活するボスとか、怖っ、と感想を述べていた。



「なので、ゴルド様の許可をとったとはいえ、今できた冒険者ギルドは、あくまでも仕事斡旋所です。モンスターの素材を買い取りするとはいえ、この世界ではモンスターの素材活用はそこまで盛んではないので、動物の骨と皮と大差ない値段です」


「・・・ごめん、姫。私は無力だ」


シルヴィはコテンパンにやられる。

リンゼも美月も、シルヴィに真実を知ってもらう為、心を鬼にして事実を突きつけた。


決して、ゴルドと公開キスシーンをしたから、根に持っているわけではない。


断じてない。




「冒険者がそもそもこの世界はメジャーではない時点で、ギルドというものは必要ないから無いんです」


リンゼがそう告げて、シルヴィは落胆する。


「用意してもらったけど・・・無駄になるなら、無くした方がいいかも。ごめんね、無駄遣いさせちゃって・・・」


そんな様子のシルヴィを見て、ゴルドは、何かを思い付く。







「そうか・・・いないなら、呼べばいい」





ゴルドの言葉に、リンゼや美月、シルヴィも、何のことかと理解ができていなかった。



「どういうことですか?ゴルド様。これ以上、住民を増やしても困りますよ?」


リンゼが無表情で指摘する。


「住民ではない、客を呼ぶ。というか、冒険者を呼ぶ」



「いや、ですから・・・外部の者を呼ぶのは得策ではありません。下手にこの領の秘密が漏れると、そちらの方が大変です」


リンゼが冷たく指摘をすると、ゴルドは静かに立ち上がり、リンゼたちを見つめた。








「異世界から、短期間で帰る客を呼べばいい」




リンゼたちは、その言葉の意味を、すぐには理解できなかった。


だが、ゴルドには、確信めいた自信を持っていた。





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