第45話 デジマ温泉旅館
今回、温泉回なので、ドキドキ感をお楽しみ下さい
ワカバはベルネシアに割とガチめに怒られて、シュンとする。
「まぁ、そもそも看護師は医療行為できないし」
「ワカバよ。そもそも貴殿は看護師ですらない、一般人だからな」
美月とゴルドがもう一発ずつ言葉のジャブを入れておいて、ワカバに釘を刺す。
「分かりました。ちょっとテンションがハイになってしまったので、反省です」
ワカバはそう言って、頬を自分でぱちぱち叩き、気を取り直す。
「さぁ!ゴルド様の健康診断も終わりましたので!続いての紹介は、温泉です!」
「待ってました!」
ワカバが拳を上げて盛り上げると、美月も続いて両手を拍手して喜ぶ。
「あぁ、そういえば。町長選のダンジョン1位突破で、フィオチーム全員が希望したあれか」
ゴルドは思い出す。
ダンジョン踏破の賞品として、好きな建物を建築贈呈するというのを用意したが、フィオに美月、サリーと同僚の傭兵の4人ともが、温泉施設を希望したので、ゴルドは許可して進めていた。
「さすがにヒロさんも温泉を生み出し続けるのは非効率なので、今回は我が科学技術を駆使して、この地に眠る温泉を探し、見事見つけました!」
「へー、うちの領に温泉あったんだな」
ワカバが熱く語るが、肝心の領主であるゴルドが、あったんだね~と、軽い反応しかしてくれない。
「天然温泉ですよ!ゴルド様!湯治できる温泉なんて!超貴重ですからね!」
「ん?え?そうなの?」
「効能が冷え性、神経痛、筋肉痛、関節痛、五十肩、打ち身、捻挫、慢性消化器病、慢性皮膚病、火傷、慢性婦人病、ついでに疲労回復、健康増進、美肌効果」
「多い多い多い、一気に聞いても覚えられるか!」
ワカバが勢いよく熱く語り出したため、ゴルドが必死に止めて、わかったわかったと言う。
「まぁ、とりあえずいい温泉ということだな」
「アルパシウス鉱石の成分が検出されましたから、世が世なら皇帝しか入ることが許されない温泉ですよ?」
ワカバがまたよく分からないことを言い出すが、それはワカバの世界線の歴史なので、ゴルドは鼻から気にするつもりもなく、そりゃら縁起がいいなとだけ答えた。
「じゃあ早速入ろうぜ」
ゴルドが温泉施設に向かおうと呼びかけると、美月とワカバが顔を赤くする。
「ん?どうした?」
「あの・・・やっぱり、その、ゴルドさん的には、私たちも一緒に入れという意味かな?それ」
「わ、わわわ私もですかー!!」
「ぶふーーー!!!」
美月とワカバがすごい事を言い出したので、ゴルドは吹き出しせき込む。
「なんでそうなるんだよ!え?もしかして男女で別れてないのか!?異世界はそうなのか?」
「いやいやいや!こっちはちゃんと男女分かれてますよ!ゴルドさんの世界の方が、温泉とかメジャーじゃないでしょ?お風呂とか、お貴族様にとっては、その、偉い男の人は、女性を侍らせてお風呂に入るもんだと・・・」
「それは一部の変態貴族だけだろう。湯浴みはするが、きちんと男女は別だ」
「な、なぁんだ。安心しましたよ~」
ワカバがホッとしてアハハと笑い、美月も胸を撫で下ろす。
「全く、オレを何だと思っているんだ。なぁリンゼ?」
「・・・私は入ったことありますけどね、ゴルド様と」
「やめてーーー!!!何言いだすのこの子!!」
リンゼはしれっとそう告げて、美月にマウントをかける。
いつもゴルドとの距離が近い美月への当てつけであることが伺える。
美月は顔を赤くし、だが、さすがにここで一緒に入るとも言えず、ピクピク苦笑いをするしかない。
ワカバは修羅場を感じて、そそくさと温泉へ早く行きましょうか~、と促すことにした。
温泉施設の設計は、美月とフィオがメインで行ったためか、美月の世界よりの外観となっている。
どんな外観かというと、和の旅館である。
瓦がびっしりと並んだ屋根に、灯籠や提灯が並べられて、急にオリエンタルな世界がそこに広がる。
「え?何これ?すごい。何というか、オレの屋敷より豪邸っぽい」
ゴルドが目をキラキラさせて言う。
美月はゴルドが喜んでいるのをみて、嬉しそうに説明を始める。
「私とヒロくんの世界にある建築物を再現したのよ。旅館っていう宿泊施設何だけど、まぁここはまだ温泉施設の機能しかないから。デジマの住民はみんな利用できるわ」
ふふんと得意げになる美月に、ゴルドは素晴らしいと素直に褒める。
「ヒロとミツキ殿の世界の建物か・・・いつか行ってみたいな。その世界に」
ゴルドが純粋に、行って見てみたいという気持ちを口にする。
それを聞いて、美月は、まるで自分の親に挨拶でもくる気なのか?という反応をして、顔を赤くし、しおらしくなる。
対するリンゼは、無表情だが、機嫌が悪い。
ワカバがもうリンゼの方を見れないくらいには、不機嫌オーラが出ていた。
「さて、じゃあ入るか。お前たちは女性側の方に入るのだぞ。特にリンゼ」
「申し上げますがゴルド様。お一人で入るのは危険です。私がお供します」
「うん、大丈夫だから。オレ1人で風呂に入れるから。大人しくミツキ殿たちと入りなさい」
ゴルドが珍しくリンゼに正論を言っている。
渋々リンゼはじゃあ、お外でお待ちしていますと言うが、ワカバと美月がそうはさせないと無理矢理女湯に拉致していった。
「仲良くな~」
ゴルドはさて入るかと、男湯とかかれた暖簾をくぐろうとする。
だが、後ろから、聞き慣れた声がして振り返る。
そこには、ミハエルとエルフの一行が珍しげに施設を見学していた。
「おぉー、ミハエル殿とジョアンナ殿達も来てたのか?ここ凄くね?」
「ゴルド様、本日は視察でしたか」
「ゴルド様、本日もご機嫌麗しく」
「相変わらず堅いなジョアンナ殿は」
ミハエルは普通に挨拶するが、側近たちは恭しく挨拶をする。
ゴルドもいい加減慣れて欲しいなと思うが仕方がない。
本来エルフは堅い性格なので、こういうものだと思うことにする。
「ヒロ殿とミツキ殿の故郷の建築物と聞いて、興味が出たので皆で見に来たのです。この様な造形は初めて見ます」
ミハエルが感心して、畳や障子を見る。
「うんうん。オレも初めて見るけど、なんか心惹かれる不思議な魅力があるよなぁ」
「庭園も見られましたか?砂利で埋められた一部に、波模様のアートを描いており、不思議な芸術作品でしたよ」
枯山水の事だろう。
エルフたちはこぞって感銘を受けた様で、ミハエルも滅多に見ないぐらい、感動して興奮している様だ。
「へー!あとで案内してくれ。まだ見てないんだ」
「もちろん、ご案内しますよ」
ミハエルが笑顔で応える。
ひとしきり会話をした後、ゴルドは提案をした。
「あ、温泉はまだだったか?オレ今からだから一緒に入ろうぜ」
軽く言うゴルドだったが、エルフたちの間にピキーンと緊張が走る。
「・・・ん?」
ミハエルだけは、固まり、思考停止している。
だが、その後ろでジョアンナ含め側近エルフたちがゴニョゴニョ作戦会議をし出した。
「これは、どう思われますか?」
「おそらく勘違いで、普通に誘っているだけかと」
「それは先刻承知。ミハエル様のチャンスではという意味です」
「激しく同意」
「では、押してあげましょう」
ゴルドは何が起きているのか分からないが、ジョアンナたちの作戦会議が終わった様なので、ニッコリと笑顔でミハエルの背中を押す。
「「「どうぞどうぞ」」」
「おいっ!私の意思は!?」
フリーズしたミハエルが動き出して、いつものツンツンモードに入る。
「第一!他の者がいるかもしれんのに!入れるか!!」
男湯を指差して、顔を真っ赤にするミハエル。
「ご安心を。受付で申せば、家族風呂なる、特定の者しか入れないお風呂を用意してくださるそうです」
「私!申告してきます!ゴルド様とミハエル殿の2人で!」
「おぉおおおいいーーー!!!」
ミハエルが騒ぐ様子を見て、ゴルドは考える。
もしや、エルフは見目麗しい種族。
こういった大衆浴場で肌を晒すのは、同性であっても禁則事項なのでは?と。
「すまんミハエル殿、もしかしてだが・・・」
ゴルドがミハエルを真剣な目で見つめる。
「な、なななな、なんだ!?そんな真剣な目で見るな!」
ミハエルはなぜか怒る。
ゴルドはやはり、エルフの掟や常識に則ると、あまりよくない事なのかと推測する。
「オレと入るのは嫌か?」
ゴルドは、あくまでも確認のつもりで聞いた。
ミハエルはあまりにゴルドがまっすぐ聞いてくるものだから、何かを言おうにも、口をパクパクするのみで、ついには恥ずかしさのあまり、目を逸らすが、小さな声で答える。
「・・・お前と、だけ、なら・・・イヤじゃない」
その色っぽい答え方に、ゴルドは、やはりエルフって恐ろしいぐらい美しい種族だな、男相手でもこんなにドキドキするとは、と思っていた。
その後ろでは、ジョアンナたち側近エルフたちが、喜びの舞を踊ってはやし立てている。
「家族風呂!使用できます!」
走って戻ってきたエルフに、ゴルドとミハエルは案内されて、2人だけで更衣室に入った。
いよいよ、2人だけの入浴が始まる。




