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第44話 ゴルド様は不健康




近代的な病院が、デジマに急に建っていた。


眩しいくらいに白い壁と、何人入れるんだ?という大きな建物。



「もはやこれ、城じゃない?」


「これが病院ですよ、ゴルドさん」


ヒロは競技場での企画立案のため、お休みである。


なので、ゴルドとリンゼに帯同するのは、美月だ。



「さぁさぁ!ご覧下さい!今揃えれる最新の技術で作り上げました医療施設です!」


ワカバが嬉しそうに自慢する、もとい、案内しようとする。


「ここは冷暖房完備で、空調による空気清浄もセット!ちゃちなウイルスや病原菌程度なら、即清浄ですよ!」


「空気の清浄??・・・空気を掃除するのか?」


ゴルドがこれまた理解が追いつかないが、もう慣れてきたので、何となくで理解していく。



「水道、電気が使えるから、デジマの中でも最新式なのは事実ね。そういえば、そもそもゴルドさんにお抱えの医者っているの?」


美月が疑問に思って聞いてみる。


「いないいない。そんな伯爵家だって、王都から医者を呼ぶんだぞ?お抱えなんてとんでもない。オレは自分で治癒魔法も掛けれるし、医者いらずだったから、病気にかかったこともないぞ?」


はっはっは、と笑いながら自慢するゴルドに、リンゼも頷く。


「ゴルド様は幼い頃も健康優良児でして、風邪すらひいたこともなければ、お怪我をしてもすぐに治されますので、まさに医者いらずでした」


「うんうん・・・ん?何で過去系?」


ゴルドが気持ちよく同意していたが、リンゼの言い方に引っかかる。



「それはゴルド様の不摂生が見受けられるからです。好き嫌いはありますし、夜更かし、朝寝坊もされます。運動もお嫌いで、ぐーたらするのが好き。そういった方には、大きな大病が隠れていると、ベルネシア様から伺いました」


リンゼは無表情だが、怖い圧を持ってゴルドを見つめる。


美月も、あぁ、生活習慣病ねぇ~、と納得顔である。


「ゴルドさんは太ってないけど、結構脂っこいもの好きだし、肝臓脂肪とか血圧高そう」


美月がニヤニヤして指で脇腹を突いてくるが、ゴルドはフッと鼻で笑う。


「何を言うんだ。毎日健康でご飯も食べている。この私が不健康?ないねっ!これだけ元気な病人がいるわけなかろう」


勝ち誇って笑うゴルドは、意気揚々と病院に入る。







ーーー診察室



「うん、精密検査決定で」



ベルネシアがカルテをペラペラめくりながら、さらりと言った。



「・・・ん?なんて?」


「いや、だからゴルドくん。君、再検査ね」


ベルネシアがさも当たり前に言う。


ちなみに、ベルネシアは年齢もキャリアも、自分のほうが上だからと、ゴルドのことを君付けで呼んでいるが、高名な魔女のため、周囲も納得している。



「再検査って・・・なんだ?もう一回血を抜くのか?痛いのは嫌なんだけど」


「血液検査はもういいけど、血中コレステロール値がくっそ高いよ。食事内容見直しが急務ね」


ベルネシアが、異常肥満症だの何だのと、詳しい説明をするが、正直ゴルドは何一つ理解できていない。

まぁ、いつもの事ではあるが。



「要するに、将来的には体悪くなるぞというアレだろ?医者の諫言(かんげん)だろ?」


「ちょっと、私の方が偉いし先輩だって言ってるでしょ」


ベルネシアが諫言であるという点について、納得がいかずジト目でそう訴えるが、ゴルドは気にせず進める。


「まぁ、おいおい改善していくさ!とりあえず、今は気になる病気はないのだろう?」



「あと、糖尿病予備軍ね」


「え?あ、うん・・・予備軍ならまだ大丈夫だな」


「あと脂肪肝。放っておいたら、肝硬変になるね」


「・・・なんかよく分からんが、良くないの?オレ?」



ここでようやくゴルドがしおらしくなってくる。


というか、よく分からないが、指摘が多くて、深刻ではないかとビビり始めている。



「時々、体がだるくて動くのが億劫(おっくう)にならない?」


「と、時々どころか、いつも動くのはだるいし、億劫だ」


それはただゴルドがそういう性格なだけなのだが、医者の話として聞いているので、ベルネシアの質問に、ゴルドは自分が当てはまると思い始めている。



「喉が渇きやすかったり、寝不足だからって、お昼まで寝てない?」


「はっ!当たっている!!」


「運動不足で、急に運動すると疲れやすくない?」


「それも当たっている!!」


「甘いもの好き?」


「大好きだ!ヤバい!!」



ベルネシアは後半、ちょっとふざけてただの質問をしていてが、ゴルドは気付かずどんどん焦る。



「くそっ!治癒魔法で大体どうにかなると思っていたのに!!・・・そうだ、治癒魔法かければいいじゃないか!これで元通りに・・・」



ゴルドが自らにかけるが、ベルネシアは不敵な笑みを浮かべて、ふっ、と侮蔑の笑いをする。


生憎(あいにく)、魔法ってのはそこまで便利じゃないのよ?ケガや病気までいけば、治癒はしてくれるけど、貴方のそれは体質のようなもの。背が低いからって治癒魔法で高くできないし、太っているからって治癒魔法で痩せれないでしょ?ざーんねん」


「うわぁぁあああああ!!!」



ゴルドは発狂して頭を抱える。


美月は、何となく言われている指摘事項は、正直よく聞く程度なので、そこまで驚きはない。


ワカバも同じである。


だが、リンゼだけは、ゴルドと同じく、無表情ながら、頭をガタガタ震えさせて、動揺を見せていた。



「まぁまぁ、ベルネシア先生も、そこまでおどかさないでくださいよ。魔法ではどうしようもないですけど、科学ならある程度お助けできますよ!」


「な!何とかなるのか!?」


ワカバが助け舟を出し、ゴルドが顔を上げる。



「その為の再検査ですよ。ゴルド様の病気まっしぐらのお身体を、最強のマッシブボディに変えてあげますんで!」




「「それはやめて」」



リンゼと美月が真剣な顔でワカバに言う。



「い、良いじゃないですか!筋肉!マッスル!ゴルド様は細すぎます!ナヨナヨしてます!」


ワカバが必死に筋肉教を布教するが、2人には届かなかった。







「えー、ここは身体内部撮影室ですね」


ゴルドは薄着の患者服に着替えさせられて、レントゲン撮影室の様な部屋に案内される。


「レントゲン、って言っても伝わらないわよね。私の世界の発明者の名前だし」


美月がそうつぶやき、案の定、ワカバもゴルド達もピンと来ていない。



「まぁ、ミツキさん達の世界には近しいものがある様ですね。ここはざっくり言えば、体内の写真を撮ることができる部屋です。光の浸透と屈折を操作して、色と形もバッチリ撮れますから、はいここに立っててください」


美月が、ん?色?、と疑問に思ったが、気にせずゴルドは立たされて、パシャリと一枚写真を撮った。



「え?一枚だけ?もっと撮らなくていいの?」


美月がワカバに聞くが、ワカバも、え?もう全身撮りましたよ?と逆に驚く。



「はい、このパソコンデータに内臓から骨まで、全部が鮮明に写りますよ~」


「「「きゃあーー!!!」」」


美月とリンゼとついでにゴルドも悲鳴を上げる。


まぁ、自分のものとは言え、リアルな臓物を、色味もそのままに鮮明に見せられたら、こうなるのも仕方がない。



「あ、あの一瞬で、ここまで撮れているなんて・・・ヒロくんから聞いた通り、恐ろしい技術力!」


「キモい!何だこの映像は!おぞましい!」


美月はグロッキーになりつつ、ワカバ達の技術力に驚き、ゴルドは自分の臓物に嫌悪感を抱いていた。




「はい、次は視力検査です」


「目の検査?見ればいいのか?」


ゴルドは黒い、片目を隠す大きさの平たい先が付いた棒を、珍しげに見る。


「はいはい、それで片目を隠してくださいね。はい、じゃあこれ」


「これって・・・何だそれ?」


「んー、じゃあこれは?」


「いや、だから、それは何だ?」


「分からないですか?じゃあこれは?」


「いや、分からんよ。何だそれ」


「うーん。視力ゼロですね。見えてます?」


ワカバが紙に視力0と書くが、ゴルドがさすがに止めに入る。



「おいおいおい!見えてるから何だこれはと聞いているんだ!その変な模様は何だ!?なにを答えればいい!?」


ゴルドは必死に抗議する。


「ワカバちゃん。ゴルドさんは初めてやるんだから、ちゃんと説明しなきゃ。これはランドルト環っていって、丸の切れている方向を言えばいい・・・って、何このマーク?」


美月は視力検査表のマークを見て固まる。


それは、汚い落書きの様に、ぐしゃぐしゃに書かれた?それとも書き殴られた適当なマークに、美月も驚かざるを得ない。



「これはピラソロ環ですよ。1番芸術的に飛び出ている線はどの方向かを言うんです」


「芸術的とか分かるかぁ!ぐしゃぐしゃの落書きにしか見えんぞ!」


ゴルドの怒りも尤もなので、美月が改めてランドルト環による視力検査を行った。


すると、視力3を叩き出す。


「え?なに?めっちゃ目がいいですね」


美月が驚きを見せるが、ゴルドの世界では、テレビもネットもスマホもないので、自然に囲まれて目を酷使しない分、基準が元々高い様だ。



「こんな単純な絵なら、誰でもそれくらいいけますよ!」


ワカバがなぜが文句を言うので、やらせてみる。


「うん、0.7ね。ちょっと悪いんじゃない?」


「あれ~?ピラソロ環でやる時と同じ結果だぁ~」


ワカバがのほほんと言う。

だが、美月もゴルドもリンゼも、心の底から思っていた。


あの訳のわからない落書きで、どうやって視力を測っているのだろう、と。






「次は歯科検診です」


「しか?」


「口の中を見せてください」


「え?普通に嫌なんだけど・・・」


ワカバに言われて、ゴルドは普通に断る。


「いや、検査ですから。一瞬ですし、口開けてください」


「やだよ恥ずかしい!なんで口の中見られるんだよ!」


ゴルドが乙女の様なことを言うので、面倒になりワカバは強制的にゴルドの口を開けにかかる。


「はーい、じっとしてて下さいね~」



「あだだだだだだ!!やめひぇ!やめひぇ~」



ワカバは小型カメラをゴルドの口の中を撮影して、すぐに解放する。


「痛い・・・領主相手にやるこっちゃないぜ・・・」


ゴルドが涙目でそう言うが、ワカバは聞いていない。


「さぁ!虫歯とかはっと・・・あっ、ありますね。2本」


「えっ?あるの?」


ゴルドは驚いて口を抑える。


「はいはい。治療も任せてください。すぐ終わりますから」


「待て待て待て!治療は医者の仕事だろ!ベルネシアを呼んでくれ!」



「任せてください!何で私がイキイキしてこの病院を紹介していると思うんですか?」


ワカバがいい笑顔でそう聞いてくるので、ゴルドは少し考えて答える。



「そりゃ、ワカバの仲間が作った場所で、最新技術もあるから?」






「いえ!私、将来の夢、看護師だったので」





ゴルドは答えを聞いた後、深呼吸をした。

胸いっぱい、空気を吸って、言う、



「関係ないじゃねえええか!!医者じゃないどころか!看護師ですらないのかよ!!じゃあ何だよ!!」




「大丈夫です!任せて!」




「なにをだぁぁああああ!!」



ゴルドの叫びは病院に響き渡り、変な機械を持ったワカバに追いかけられるハメになった。





後ほど、ベルネシアがちゃんと治療してくれた。





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