第41話 眠れることの幸せ
ゴルドによるデジマの町長選挙が終わり、ごく普通の日常が訪れる。
のんびりと牧歌的なゴルドの屋敷がある町は、変わらない平和を享受しているが、その傍で、デジマの活性化が恐ろしく早く進む。
まずは家。
ゴルドがベルネシアに発注でもするような感じで、お願いをしたが・・・。
資材さえあればと二つ返事でオッケーを出して、その言葉通り、ヒロが出した資材を、瞬く間にベルネシアは家に作り変えてしまった。
「まぁ、緊急だからね。普通はやらないから。面倒だし」
ベルネシアがそう言って、なんて事のないような態度をする。
そして、同時並行で、ゴーレムを出して畑を耕す。
なかなかに便利なゴーレムで、腕部分がすでに鍬であったり、草刈り、開墾のアタッチメント変化機能付きで、24時間動き続ける。
もはやこれ導入した方が、うちの領土豊かになるんじゃね?と、ゴルドは提案するが、畑の管理が出来ないとあっさり否定される。
「いわば機械みたいなもんさ。単純な指示や行動はできるけど、繊細な育てるという作業や、収穫にも向かない。そこまで万能じゃないよ」
そう全ては都合よく行かない。
だが、冒険者たちの働き口的にも、畑の開墾がこんなに早く出来れば、後の管理は彼らで出来る。
エルフたちの育てる馬牧場も、概ね軌道に乗っているので、今度は他の動物の牧場も視野に入れている。
鶏や豚であれば、比較的安価で手に入るし、人がいるなら、仕事を用意すればいいと、美月とフィオがガンガン提案して仕事を増やしていく。
そして、ゴルドは人生初めての三徹目を迎えていた。
真っ白に燃え尽きそうになっている。
「あ、あの・・・ゴルド様・・・もうお休みになられた方が」
リンゼが無表情ながら、さすがにもう仕事を振るような鬼畜な所業はしない。
だが、若干こうなったのも、ゴルド自身の自業自得の部分が多い。
そもそも、急に人を多く呼び過ぎた。
まぁ、これがまずは第一にして、最大の原因。
人が増える分だけ、衣食住が必要になる。
そもそも、それらを自分で確保して勝手に来るならいいが、ゴルドが呼んでいる以上、最低限の面倒を見る必要がある。
住むところは用意できた。
なので、食べ物と衣、つまりお金を生み出す仕事を与えねばならなかった。
それの手配と計画と承認決裁に追われ、ゴルドは文字通り休む暇もなく忙しなく働いていた。
「・・・もう、無理・・・」
ゴルドはダンジョンに行った自分を恨んだ。
だが、今更何を言っても無駄である。
机で自然と目をつむり、意識を夢の世界へ飛ばして、ゴルドは深く眠る。
「バタン!」
「ゴッド様!見てみて!競技場出来たよ!」
「ボス、壁の計画案だ。早く承認してくれよ」
「ゴルド様!発電所出来たので次は、ベルネシアさんの為の病院作りましょ!」
「姫ー!冒険者ギルドないよー!作って!」
いや、眠ることは許されないようだ。
更に騒がしくなるメンバーが増えて、ゴルドは涙を流す。
「待って、ねぇ待って。町長決まったよね?ベルネシア殿いるよね?オレいらないよね?」
ゴルドが涙ながらにそう訴えるが、ミハエルも後から入ってきて説明をする。
「いや、細々としたものはベルネシア町長で決裁出来るが、コイツらの提案はデカ過ぎて町長の権限を超えている。なのでゴルド様の決裁がいる」
ミハエルの淡々とした説明に、ゴルドは諦めてヒロにまずは話しかける。
「競技場は出来たんならもういいっしょ?」
「まだだよ!娯楽は無限大だよ?競技場周辺にショッピングモール作ろう!人が集まって買い物できる大きな市場を作るんだよ!」
「か、買い物のできる市場?・・・あー、はいはい、うん、いいよいいよ。買い物は出来ないとね。うん」
ヒロはやったぁ!と言って喜ぶ。
「ボス、壁の件は?資材も費用もかからねぇんだ。やるなら今だぞ」
「あー、でも景観とか、圧迫感がって、町のみんなが怖がるかも・・・いや、もういいや。なんかミツキ殿やフィオ殿に、デザインも一緒に考えてもらって、やっちゃって。うん、安全第一だしね」
「よし、承認だな。ついでに諜報部創設してくれ。冒険者の中になかなか粒揃いがいてな。スカウトしたら、人材が揃うんだ」
「あー、はいはい。承認しまーす」
ゴルドはもはや後半は聞いていなかった。
ヴォルクだし、大丈夫だろうという安易な考えで承認した。
続いてワカバが病院!病院を!と意気込む。
「うん。もうオッケー。ミハエルもいるって言ってたし。病院ってのが何かよく分からんが。治療院的なのだろ?」
「今用意できるレベルの最新医療技術と機材を用意しましょう!」
ワカバはやる気満々でそう言う。
ゴルドはもう好きにしてくれと瞼を閉じ始める。
「あ、あと温泉!湯治は大事ですよ!温泉施設作っていいですよね!」
こくり、こくりと、眠た過ぎて頭を上下させるゴルドを見て、ワカバは頷いていると思って、了承を得たと思った。
「姫!冒険者ギルドがないんだよ!冒険者の仕事がないなんて考えられない!ギルド作って~」
「・・・ごめん、シルヴィ殿。その冒険者ギルドってなに?」
ゴルドが、適当に返事をするにも、そもそもそれが何なのか分からないので、仕方なしで聞く。
「冒険者へ仕事を斡旋する、仲介役というか、モンスターの素材を買い取る所だよ」
「・・・???」
ゴルドが、半分以上寝ている頭だが、考えて、そして理解できなかった。
「何だそれ?・・・慈善事業か何か?」
「仕事の斡旋の際に、手数料を取ったり、モンスター素材の独占利用で、荒稼ぎすれば、ギルドは大儲けだよ!私の世界のギルドはそうだったぞ?」
「ふーん・・・じゃあ、いいよ」
ゴルドは理解せず、シルヴィの世界にあったものなら、まぁ大丈夫だろうと、適当に承認した。
「お、おい、ゴルド様。そんなポンポン決めて、本当にいいのか?」
ミハエルが心配する様子を見せるが、もう遅いと言わんばかりに、要望を出した面々は張り切ってゴルドの部屋を出ていき、取り残されたゴルドはいびきをかいて机に頭を乗せて寝ていた。
「おまっ、もう・・・知らないぞ、私は!」
リンゼがかけ布をゴルドにかける。
ようやく寝れただけあって、もうちょっとやそっとでは起きそうにない。
「はぁ~・・・本当にこいつは」
「ミハエル様、よろしかったのですか?こちらに来たということは、何か依頼があったのでは?」
リンゼがミハエルに聞く。
ミハエルはうーん、と頭を掻きながら、言おうかどうか悩んでいるようだ。
「ないのですか?」
「いや、あるにはあるんだが・・・」
ミハエルは疲れて眠るゴルドを見て、しばらく考えたのち、決断した。
「やめておく。ゴルド様はお疲れだからな」
「遠慮してますと、いつまで経ってもお願いを聞いてもらえませんよ。他の方々も我が強いですから」
ミハエルは、言えてるな、と笑いながらリンゼに言う。
「まぁ・・・じゃあ、起きたら伝えて欲しい。その・・・べ、別に、深い意味はないんだが、その・・・き、記念碑、とか・・・あった方がいいと思うんだが」
ミハエルが顔を赤くしながら言う。
リンゼは無表情なので、いつも通りの反応に見える。
「・・・その記念碑とは、どういう?」
「ま、まぁ、我らエルフにとって、恩人なわけだしな一応。我々は長命だからこそ、代々受け継ぐためにも、オリハルコンにゴルド様の名と、感謝のために、あの日、奴隷商と戦った記録を、永久に残すためにも、デジマの中心に、シンボル的な記念碑として設置をだな」
ミハエルは、珍しく早口で、たくさん喋る。
リンゼは顔にこそ出さないものの、しっかりと言葉に出してツッコミを入れることにした。
「ミハエル様も、他の皆様と同類ですね。それはもう、しっかりと」
「な、なな、何をいう。別にっ、た、ただの石碑だし!深い意味なんて無いし!」
ミハエルが顔を真っ赤にさせて、必死にリンゼに弁明するが、何の弁明にもなっていない。
ゴルドは心地良さそうに寝ていた。




