表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

41/60

第40話 デジマ町長選終結




デジマに、ゴルド達が帰ってくる。




ステージ上に、ゴルド、ヒロ、クローナ、キャロットが立つ。


更に、シルヴィ、ベルネシアもいる。




更に更に、ステージに乗り切らないので、観客席後方に、突如として200人の冒険者が現れる。


シルヴィが把握していたのは、大体300人ほどの冒険者だったが、当たり前だが実際はもっと多い。


シルヴィより先に入っていた冒険者や、そもそもシルヴィと会わずして亡くなった者もいる。


その中で、この世界に来ることを望み、人格として問題のない者をアイハが自動選定し、キリよく200人が、デジマの新たな住人として加わった。






「諸君!我々は帰ってきたぞーーー!!」



帰って来れた喜びを爆発させ、ゴルドがそう叫ぶ。



ノリのいいデジマ住民は、先ほどまでの展開を全て見ている。


領主の、割と命懸けだったダンジョンからの帰還に、全員が歓声をあげる。


ついでに、復活した冒険者達も、すでに終わったかに思えた自らの人生が、もう一度転生して復活した事に、心から喜びと歓声をあげていた。




思ったよりも反応が良すぎるオーディエンスの声に、ゴルドはビビって萎縮してしまった。



「うわ、耳痛いくらいすげぇ声だな。てか、こんな大勢の前に立った事ないし、すげー緊張してきた」



「今更何言ってるのゴッド様?」


クローナが呆れているが、ヒロは嬉しそうに手を上にあげて、歓声に応える。




「ゴルド様!」

「ゴルドさん!」

「ボス!」


フィオと美月とサリーが相次いでゴルドに駆け寄る。



「おー!みんなも無事だった?ダンジョンのレベルヤバくない?みんなケガない?」


ゴルドがいつものノリで声をかける。


「いや、レベルヤバかったの、ゴルドさんの行ったダンジョンだけだったから」


美月が冷静にそう言って、お帰りなさい、と笑顔で迎える。


「ダンジョンのレベルは、ゴルド様の方が高かったのですが、1番に踏破しましたのは、私たちのパーティですことよ?」


フィオが自慢げに笑い、ゴルドに言う。


「1番の商品、楽しみにしておりますわね?」


「おぉ!フィオ達が1番か!みんな頑張ったなぁ。ミツキ殿もサリー殿もおめでとう」


「ありがとうございます!ボス!」


サリーが嬉しそうに笑い、少し涙を流す。


「し、信じてましたから!帰ってくるって!」


「はっはっは、当たり前だ。私はここに必ず帰ってくるさ。居なくなるわけないだろう」


親指を立てて、任せろと言うゴルドに、サリーはたまらず抱きつく。


「まあっ!はしたないですわよサリー!」


「ずるい!っていうアレじゃないけど!その!うー!」


フィオと美月が悔しがるように顔を赤くするので、ゴルドが両手で2人の頭を撫でる。


こうするといいよと、ヒロにアドバイスを言われていた。



「・・・まぁ。悪くありませんわ」

「同じく」


「はっはっは、さぁて、リンゼはどうした?どこだい?」


キョロキョロ周りを見るゴルドに、ようやくステージの下で、ひっそり大人しくしていたリンゼを見つける。



「おぉ~、リンゼ!帰ってきたぜ!どう?泣いてない?」


ゴルドが見つけて手招きをすると、リンゼは無表情で頭を下げて、そそくさと去ろうとする。


「・・・えっ?なんで?」



「あー、ちょっと待ってて、私たちで呼んでくる・・」


ゴルドが目を点にして驚いていると、美月が、リンゼの気持ちを察して、自分が追いかけてあげようとするが、それよりも早くゴルドが走り出す。



「はっはっはー!リンゼ~!!オレだぞ?帰ってきたぞ~!はっはっは!」



笑顔で全力ダッシュするゴルド。


リンゼはあくまでもメイドに過ぎないので、あっさり追いつかれる。


肩を優しく抱き寄せ、ゴルドがリンゼの顔のすぐそばで、顔を近づける。


「・・・ふっ、やはり泣いていたか?ん?泣いてたっしょ?」


「・・・私の、誤った判断で、ゴルド様を危険な目に合わせたのです。側使え失格ですので、もう私には」


「あ!やっぱ泣いてた?目赤いし!無表情崩れてしおらしい顔になってるし~」


「うっ!うるさいです!ゴルド様のお側に、もう私は相応しくなくて・・」






「まぁまぁ、そう言うなって。お前の為に必死に帰ってきたんだから」





ゴルドが笑顔で、心底嬉しそうに笑う。



ーーあぁ、敵わないな、この人には。




(せき)を切ったように泣き出すリンゼを、ゴルドは優しく、抱きしめてあげていた。




「うーん、敵わないなぁ」

「リンゼ様は特別枠ですわよ」

「実質、正妻ですからね~」


美月達がその様子を見守る。






その同時刻、数十年ぶりの再会を、シルヴィもしていた。



シルヴィがその姿を、ステージ後方に見つけた時、慌てて走り出した。


何度かすっ転びながらも、夢中で走る。



夢だろうか?


いや、夢ではない。


転んだ痛みがしっかりとしている。




「よっ!・・・おひさ、シルヴィーっ」


金髪ポニーテールの、女性剣士が、親しげに声をかける。


その後ろに、白いローブを着た、メガネの大人しそうな魔法使いの女性と、弓を肩に背負った、ハーフエルフの女性がいた。


会いたいと思っていた。


でも、もう会えるわけがなかった。



どれほど、この瞬間を夢見てきたことか。



いや、ただの夢なら、悪夢でしかないだろう。



あの時のように、あの頃のままで、懐かしい声と雰囲気で、仲間達はシルヴィを見つめていた。



シルヴィは、もう今日だけで何度目だという泣き声をあげる。



だが、死ぬ事すら許されず、仲間の死を見届け続け、あの古の塔に囚われ続けていたシルヴィにとって今日という日はーー


たとえこの先、不死が続き、悠久の時を過ごしたとしてもーーー






ーーー奇跡はあるのだとーーー






そういう、生きる希望と表現するべきか、心が生きていく上での、大切なエネルギーを、(ちから)を、シルヴィは確かに、そして尊く感じていた。



「もう、泣き虫シルヴィは変わんないなぁ」


「だって!だって!」


「はいはい。みんな居るよ。ここに、全員、いるから」



シルヴィは、おそらくは長年溜め続けていた涙を、ここで使い切る事だろう。


それでいい。


この異世界に来て、新たなスタートをすれば良いのだから。









「で!センキョだよセンキョ!投票に移るぞ!」



ゴルドがリンゼをいつものように側に居させて、ステージにまた上がり、早速続きをしようとする。


「さぁ!今回の立候補者から!みんな選んでくれ!」



若干、え?まだやるの?、という雰囲気が漏れ出ているが、ゴルドはその空気を読まない。


彼の頭の中は、まだ普通のダンジョン踏破をしたに過ぎない認識である。


まぁ、そもそもダンジョンに入るのも初めてなので、普通を知らないわけだが。



ワカバが慌てて投票用紙を用意する。


住民と、とりあえず復活した冒険者にも配られて、冒険者達は頭にハテナを浮かべる。



「えー、今来た冒険者の皆さんにも、一から説明するとですね。私はゴルド・アイハンド。この地の領主男爵です。そして、皆さんは異世界から転生してまいりました。まぁ、その辺りはベルネシアの手配で、何となく理解しているのかな?」


「え?私何もしてないけど?」


「アイハだよー!私がその記憶補填したんだからー!」


ベルネシアがシレッとそう言い、アイハが私が頑張ったと主張する。


「おぉー、そうなのか。アイハ殿ありがとう。助かったよ」


「えっへん」


喜んで胸を張るアイハにお礼を言って、ゴルドは続ける。



「で、今ね、デジマっていう町を作っているんだが、町長がまだいなくてね。コイツこそは任せられるっていう人物を、この中から選んで欲しい。おーい、ミハエルいる?どこ?」



「ここだ!たわけが!何、何事もなかったかのように、帰ってきてすぐセンキョの続きしているんだ!ていうかあの200人近い冒険者はなんだ!?」



ミハエルがステージによじ登ってきて、開幕説教をする。


「えー、まじ?カメラ見てない?ヒロの活躍見てない?」


ゴルドがダルそうにそう返す。


「見ていたが!この人数の転生は聞いてないぞ!町の機能はまだまだ貧弱なんだぞ!これだけ多くの人を受け入れるには、まずは家が追加でいるし!食わせていく畑もいるし!いよいよ本格的な医療施設がいるし!もう何もかも足りないんだよ!」



ミハエルの絶叫説教は、とても的を得ていた。


ゴルドは事実だけに、ヤバいやり過ぎたと焦り始める。


どうしようかと周囲をキョロキョロ見ると、ステージに取り残されていたベルネシアと目があった。



「あ!ベルネシア殿!あのでっかい塔作ったの、貴女ですよね!」


「え?あ、うん。まぁ、作ったけど?・・・魔法で」


「こう!いい感じの家、ポポンと作れません?」


「一から生み出すのは私でも苦労するから嫌なんですけど」


ベルネシアが本気で嫌そうな目をゴルドに向ける。


「ヒロが資材出してくれるから!どう?資材あればいけそう?」


「あぁ~、まぁ・・・それなら。簡単にできるし」


よし!家問題はこれで解決、とゴルドが言い、次は畑、食糧事情について考える。



「ベルネシア殿。畑とか一気に作れない?」


「はぁ?あんた私を便利屋か何かと勘違いしてない?怒るよ?」


ベルネシアがジト目でゴルドを睨むが、ゴルドは華麗に言い訳をする。


「いやいや、ベルネシア殿が農家の生まれと聞いたから、何か妙案がないかと思ってね。何せ偉大な魔女としてご高名なのだから、きっと私のような冴えないボンクラ領主なんかより、聡明で美しい魔女であれば、きっと!何か良い手をご存じなのだと、そう期待してしまったのです。いやはや、お許しを」


怒涛の褒めをくらい、褒められ慣れていないベルネシアが、ちょっと照れ笑いをする。


「な、なによ急に。そんな褒めたって・・・えっと、畑だっけ?さすがに魔法で一気に作るのは無理よ。だから、ゴーレムとかを大量に生み出して、短時間で一気に作る事なら可能よ。ただ、さすがの私も、畑を作るところまでしかゴーレムを維持できないから、継続は他の人でしてよ?」



「勿論ですとも!いやぁ!さすがコンパスの魔女様だ!優しい!超優しい!その寛容さに!偉大さに!私は敬意を表します!」


リンゼがボソリと、魂琥珀(こんぱく)の魔女です、ゴルド様、と訂正するが、ベルネシアは褒められて気が良くなっているので、気付いていない。



「医療施設もどうせなら任せなさいよ。私は魂の研究、つまり人の生と死を学んでいるから、医学的知見も持っているわよ、ふひっ」


気持ちよくなり過ぎたベルネシアは、とうとう自分から仕事を請け負うと言い出す。


ゴルドは、いよっ!女神様!なんて優しいんだ!異世界からの天使!みんなのアイドル!と、(はや)し立てるだけ派手に囃し立てていた。


ベルネシアは、恐らくはここまで褒められたことがないのだろう。


ふひひ、と淑女らしからぬ笑いをして、嬉しそうにしている。




「よし!ベルネシア殿のお陰で、だいたいどうにかなった!これなら大丈夫だろミハエル殿!」


「うっ、ぐぅ・・・まぁ、確かに・・・」


若干、釈然としないミハエルだが、事実、異世界とはいえ高名な魔女なのだ。

出来ると言った以上、嘘ではないだろう。



「す、すごい人?だなあ・・・家や畑をたった1人で?」


「お医者さんでもあるのか?ゴルド様がすごいという人ということは、すごい人なんだろうなぁ」


「さすがゴルド様、今度は高名な魔女様をお呼びしたのね」


デジマの住人達がざわざわとする。


ゴルドはワカバに、投票を続けるように指示して、町長選を完遂させるよう念を押す。




ワカバは分かりましたと言って、忙しなく投票の手順を呼びかけているのを見て!ゴルドは一安心する。




「ふぅ、とりあえずこれでセンキョは上手くいくぞ」


「何が上手くいくだ。カメラで追いかけていたから、まだ見れていたものの、領主のお前が異世界から帰って来れないかもしれないとなった時、どれだけの者達が心配したと・・・」


「あー、すまんすまん。いや、すまんと言うか、オレはそこまで悪いわけじゃないが・・・」


「そ、それはそうだがなぁ・・・まぁ、何となく、帰ってくるだろうとは思っていたが」


ミハエルがため息をつきつつ、そんなことを言う。



「・・・無事で何よりだ」


「え?何?ミハエルまで心配してくれてたの?えぇ~、悪いねぇ~、心配かけちゃって」


「軽いなお前は本当・・・」


ゴルドがヘラヘラ笑うのを見て、ミハエルはまたため息をつく。


そこへ、シルヴィが仲間と戻ってきた。



「姫!仲間と会えたよ!」


「おっ、シルヴィ殿。良かったじゃーん。え?何、この後ろの美女3名がお仲間?」


ゴルドが変わらない調子でシルヴィに話しかけて、その仲間達を見て驚く。


「うん。私のパーティメンバーだ」


「何だよ~、ハーレムパーティじゃねえか~。このこの~。オレを姫とか言ってる場合か?お姫様みたいな仲間3人もいといて~」


ゴルドがシルヴィの肩を組み、おちゃらけたイジリをする。


「えっと・・・シルヴィ、やっぱり、この人、勘違いしてると思うよ?」


白いローブをきたメガネの女性が、おずおずと言い出す。


「まー、これに関しちゃ無理もねぇよ。シルヴィと最初に会った時、私らでも分からなかったし」


「・・・同感」


金髪ポニーテールとハーフエルフ女子も口を揃える。




「ど、どしたの?ん?ん?」



ゴルドは妙な反応をするシルヴィの仲間に、違和感を覚える。


ミハエルはじーっと、シルヴィを見て、「あぁ~・・・」と納得するような声を上げた。



「なになに?何納得したような声あげてるのミハエル殿?」


「いや、私じゃなくてシルヴィ殿から聞きたまえ」


ゴルドが何も分からず、シルヴィをもう一度見る。


シルヴィは、気まずそうな顔をして、頬を指で掻きながら、目を逸らしている。





「んー・・・私が女の子って、さすがにわかってるよね?姫・・・」





「・・・・・えっ?」





ゴルドは固まる。


時は止まる。



シルヴィはちょっと拗ねる顔になる。

仲間達は我慢できず爆笑する。


「何だか変な反応するなって思ってたけど・・・キスまでしたんだからさぁ。気づいてよ姫」


「分かるかぁ!美形だけど!男の騎士みたいに振る舞っているから!男に思うに決まってるダルォ!」




「まぁ、そこは、ほら。姫って姫っぽいから」



シルヴィがふふっと笑って、ゴルドをお姫様抱っこする。



「よろしくね!私のお姫様」



「よろしくない!恥ずかしい!降ろして!」



ゴルドは涙目で赤面した。





そして、町長選の投票の結果、ベルネシアに票が集まり、町長はベルネシアになった。


ゴルドが命懸けでダンジョンを踏破し、不死身の騎士や他にもS級冒険者達を数百人引き連れ、ダンジョンの主であるかの魔女をスカウトし、町長にしたという伝説が、のちのち語り継がれるが、それは後世の話である。




「ヒロじゃないのかよ!」



未来を知らないゴルドは、カメラを守ったのにヒロが町長になれず、絶叫していた。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ