表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

37/66

第36話 異世界でも通用する、万人受け飯




「まずね、彼、水出せるから。ね?ヒロ?」



「え?あ、う、うん!出せるよ」



ゴルドは自慢げに、ヒロの肩に手を置いて言う。


「あと、実は野菜とか、お肉も出せるんだ。な?ヒロ」


「う、うん。まぁ、料理はしなくちゃだけど」


「料理ぐらい!私でもできるさ!」


ゴルドは勝ち誇るように言う。


何一つ、ゴルドは偉くないが、ゴルドは自信満々で、ヒロの隣に立つ。



シルヴィが初めて表情を変えた。

驚きの表情だ。



ヒロの能力に驚いたのか、ゴルドの、お前関係ないのに、なんでそんなに偉そうなの?という驚きなのか、そこは分からないが、すぐに穏やかな笑みに戻る。



「それは、本当にすごい!私の、ただ生きているだけの能力より、何万倍も素晴らしい!」


「はっはっは、だろう?まぁ、シルヴィ殿の能力も十分やばいと思うがな」


「偉そうに言うけど、ゴッド様は関係ないってば」


クローナがようやくいつもの口調で話に入る。


「しばらくは、食糧問題も大丈夫ですけど・・・何か、脱出のヒントになることはありませんでしたか?」


キャロットが、シルヴィに質問をする。


「そうだね・・・まず、私がパーティメンバーといた頃は、とにかくこの塔を歩き回った。迷路のようで、もしかしたら、出口が見つかるかもと・・・だが、一年、ただひたすらに真っ直ぐ進んだが、何故か道は途切れなかった」



「い、一年?・・・長いなぁ~」


長いなんてものでは無いのだが、ゴルドはうーむと考えながら、デジマとか大丈夫か?リンゼ泣いてないか?とか、そういう心配ばかりをしていた。





「おそらく、それだけ動いてゴールがないなら、迷路的なダンジョンではないと思います」



ヒロが改まって考察を話し出した。


こういった知識があるのは、もはやヒロしかいない。

ゴルド達も腰を下ろして話を聞く。



「最初のステージである、古の塔は、きちんと空間があるステージでした。そこから、シルヴィさんが検証して、一年も真っ直ぐ進めると言うことは、ここは現実のダンジョンではなく、虚実、魔力によるものか、あるいは幻か、そういった延々と空間が広がっているタイプの裏ステージだと思います」



「おぉ・・・なんというか、それってずるいな。そんなの初見じゃ看破出来なくない?」


「ゴッド様の言うとおりで、正直、シルヴィさんの証言がなきゃ、この事実に気付くまで、僕たちも相当な年月をかけてないと気づけなかったと思います」


クローナとキャロットがゾッと顔を青ざめるが、ゴルドは、よしよし、気付けたのラッキーと、前向きに捉えていた。



「で?その攻略法とやらも、ヒロならいくつか心当たりがあるというわけか?」


「そうですね。パッと思いつくのは、これが幻術や幻のパターンです。その場合は、それを破る魔法をかけるのが答えなんですが・・・」



ヒロと残りの4人も、誰もが顔を見合わせて、そんな魔法待っているか?と目で問うが、誰も手をあげない。



「オレの治癒魔法の中に、異常状態回復ならあるが?とりあえずいっとく?」


ゴルドが、まるで駆けつけ一杯のビールみたいに、軽いノリでいうので、みんなにかけてみる。



「おぉ、体が軽くなった」


シルヴィが喜ぶが、それは、栄養失調、脱水症状、日光不足からくるその他不調が改善されたに過ぎない。


ヒロやクローナ、キャロットは、当たり前だが効果がない。


「ふむ・・・魔法の類ではないと考えて進めようか」


ゴルドはサクッと次に進めようとする。



「次のクリア方法となると、このダンジョンの謎を解く、が良くある次のパターンですね。正しい道順で進むと出れるとか、ダンジョンが崩れるとか、そうやって進めるはずです」


「正しい道順?なんかヒントある?」


「部屋のどこかに、模様とか、文字があるとそれがヒントになります」



ゴルド達は手分けして部屋を隅々まで見る。


クローナは鼻も効かせながら、キャロットは聴覚を研ぎ澄まして、何かないかヒントを探る。




その間、ゴルドとシルヴィは、天井を見る係として、シルヴィがゴルドを肩車していた。

身長的に、シルヴィの方が高く、力もありそうなので、自然とそうなる。



「シルヴィ殿大丈夫か?キツくないか?ミイラから復活してそんな経ってないだろう?」


「ふふっ、心配してくれてありがとう。でも、さっきの治癒魔法も相まって、元気がみなぎっているよ。アイハンド卿1人くらい、軽いものさ」


「そりゃ頼もしい。ちなみに、シルヴィ殿が歩き回っている時、文字やら模様やらなかったか?」


シルヴィはうーん、と考え込みながら、記憶を辿るが、正直に思い当たる節はないと答えた。


「かれこれ40年ここにいるけど、ヒロ殿に言われてから、そんな方法があるのかって、ようやく気付いたくらいだよ。正直いうと、文字とかあったかなんて見てないから、見逃していたと思う」


「そうか~。まぁ、気にしなきゃ、気付けないしなぁ・・・天井には何もないな」


そっか、残念、とシルヴィが言って、ゴルドを降ろす。


ヒロ達も、この部屋にはもう何もないようで、捜索を終えていた。



「じゃあ、次に・・・」


「まぁ待て」


ヒロが次の道に進もうとすると、ゴルドが止める。



「腹ごしらえしない?喉も渇いてきたしさ」



ゴルドが能天気にそう言う。


そこで気付いたが、ヒロとクローナとキャロットは、部屋で何も見つけられなかった焦燥感があったからか、ひどく疲れを覚えていた。


「そ、そうですね!体も休めないと!」


「あ!私ヒロのこの前言ってたカレー食べたい!」


「燃やすものとか、鍋とかどうしましょうか・・・あ、それらもヒロ様が出せましたね」


ワイワイと3人が盛り上がって、薪や石を出して、簡易的な釜戸を作り、鍋や具材を出していく。




ちなみに、鍋は出せるんかい、と都合がいいなぁと思った読者のために、簡単な解説をすると、ヒロは転生初期は自然物創造の初期スキルであったが、自身のレベルアップに合わせて、その生み出した自然物の操作(風や水を動かすなど)から、もう一つパワーアップし、創造する物の形を意のままに形成して、生み出せる。


なので、実は建築の時から、これくらいの資材、この形の釘、等々、日々建築をしつつ、スキルアップに努めていたので、鉄などを鍋に加工することなど造作もない。



ただ、食べ物を加工する、すなわち、米をすでに炊き立ての状態にするなどは、まだレベルが足りないのか、そこまでは出来ない。


おそらく、形を変える以上に、水や熱など、化学変化と呼ばれる過程を経て、生み出すには、まだ力が足りないのだろう。


以上、ヒロの能力についての仮説である。by美月。






「へー、これがカレーか。シチューみたいだな?美味そうだ!」



ゴルドが皿に盛られたカレーを見て、早く食べたいと言わんばかりにワクワクした顔をする。


にんじん、じゃがいも、お肉と、オーソドックスながらも、具材がゴロゴロある。


「玉ねぎは抜いてあるから」


「ん?玉ねぎもいるのか?てか、なんで抜いてるの?」


「クローナも食べれるようにね」


「「「???」」」



クローナ以外が、頭にハテナが出るが、クローナは気付いて顔を赤くする。



「あ!アタイは犬じゃなくて狼だってば!それに!そもそも獣人で人の部分が強いから玉ねぎも食べれるぞ!」


「あ、そうだったの?犬に玉ねぎはダメって聞いてたから・・・まぁいいや!美味しいから食べて!」



いっただっきまーす!と、全員がカレーを口にする。



外で食べるカレーの旨さは、異世界を超えても共通のようだ。


シンプルな具材ながら、カレールーというシンプルな調味料が、旨みを更にパワーアップしてくれる。


ホクホクのジャガイモに、にんじんと肉が、ご飯と合わさることで、そのハーモニーは極上である。

子供だろうが大人だろうが、夢中にさせてくれる最強の万人向け飯の代表格は、文字通り格が違った。


水を相方に飲みながら、辛さや旨さに舌が楽しみ、口に運ぶスプーンが止まらない。





食事が終わり、全員が人心地つく。


ヒロもクローナ、キャロットも、体ではなく、心に負担があったようだが、食事を挟んですっきり出来たようだ。



「どうだい?シルヴィ殿。カレー美味かっただろう。まぁ、オレも初めて食べたけど」


ゴルドがニコニコして言ってくる。

言っている内容は適当にも程があったが。



「ふふっ・・・アイハンド卿、君ってすごいね」


「・・・ん?なんで?作ったのも出したのもヒロだぞ?」


ゴルドが予想外のシルヴィの答えに、首を傾げる。


「いやいや、まぁ・・・なんていうんだろう。空気を変えるって、そう出来ないことだからさ」



シルヴィが、久しぶりに、過去を思い出したようだ。

それは、この古の塔の裏ステージに来て、絶望していた時の記憶。


仲間の疲弊する姿を見て、そのドン底の空気を変えられなかった自分。


身と心が、数十年ぶりに満たされたシルヴィに襲いかかったのは、過去の後悔と苦い思い出であった。





「空気を変えることができたのも、ヒロのお陰だろ?オレは何もしてないし。それより、ここ出る為にも、行こうぜ!」


過去に囚われ始めたシルヴィに、手を差し伸べて、物理的にゴルドは引っ張る。


不思議と、シルヴィは、包まれていた黒いモヤから、本当に連れ出してくれたかの様な錯覚がした。


笑顔のゴルドに、つい、つられて自分も笑う。




「なんていうか・・・好きです」



「・・・・」



シルヴィが自然とそう言って、ゴルドとヒロ達も固まる。




「・・・あ、人としてね?」



シルヴィが慌てて付け足し、少し笑う。


だが、美形も相まって、もう何というか、その少しの笑いも、いわゆるガチのアレにしか見えない。



美月の顔がチラリとよぎる。


ゴルドはまさかな、とその予感を振り切り、シルヴィに、そりゃ嬉しいと、とだけ答えた。


その時、ポケットから紙が落ちる。


「おっと、失礼・・・てか、なんだっけこれ?」


ゴルドがもはや存在を忘れていたそれを拾い上げる。


そして開いて、思い出した。



「あー、これか・・・これだよ!!」



ゴルドが紙を二度見して、興奮する。



何故なら、この紙こそが、脱出の鍵となるヒントであったからだ。







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ