第33話 ダンジョンメンバードラフト会議
「ゴルド様?」
「ゴルドさん?」
リンゼと美月がステージを降りてきたゴルドにジト目で見つめる。
「うん。まずは申し訳ない。このような急な事になってしまい、本当にすまないと思っている」
ゴルドは口では謝りつつも、態度はデカデカと胸を張っている。
「だが!試練や戦いについてはバレてしまっては、あの4人の真の力を試せないと思ってな。というわけで!あとは任せたまえ!」
ゴルドはウキウキで準備に入る。
いつの間にか、巨体なスクリーンがステージの後ろにセットされて、一気に世界観が壊れる。
「あの・・・これは?」
家令がマジで何コレ?という顔で驚きを隠せない。
「説明しよう!ワカバ殿!頼んだ!」
ゴルドが勢いよくポーズをとるが、説明は別の者に投げる。
「任されました!このスクリーンは我々スペースロイドにとっては日常的な道具の一つ、テレビです!」
「テレビにしては大きすぎない?」
美月がボソリと呟くが、ワカバは気にせず進める。
「残念ながら!テレビ局がないので、チャンネルは何も映りませんが、今からこの全自動追尾カメラが、候補者の皆様を追いかけますので!どんな場所であっても、完璧かつ滑らかな映像をリアルタイムでお届けできます!」
四つの球体が宙に浮かんでおり、その中央にレンズがきらりと光っていた。
「おぉ、何と面妖な・・・」
「異世界のカラクリか?なんと不思議な力を持っているのだ・・・」
実際に自動追尾カメラから映像がスクリーンに映し出されて、巨大スクリーンが4画面にされて、ヒロ達候補者の顔のアップが映し出されていた。
「わぁ!すごーい!」
ヒロがはしゃいで、手を振ったりする。
住民のどよめきが起こるが、半数以上は宇宙人なので、彼らは特に驚かない。
「カメラで追いかけさせて、何をさせる気なの?」
美月がゴルドに聞くと、ゴルドはふっふっふ、と笑いながら、溜める。
「ゴルド様。その溜めはイラつきますのでおやめ下さい」
「ああん!リンゼひどい!イラつくとか言わないでくれ!」
ゴルドがリンゼのご機嫌を直そうとしている間に、ワカバがマイクごしに宣言する。
いつの間にマイクを用意したのだろう。
「ずばり!異世界ダンジョン攻略です!」
ワカバがそうシャウトすると、住民のボルテージは一気に加熱する。
「いや、いやいやいや。急に今までにない要素ぶち込まないでよ。町づくりの内政してて、なんで異世界のダンジョン潜る方向に話が進んでいるわけ??選挙どこいった?」
美月がいよいよ迷子になりかけているが、話はどんどん先に進む。
「ここからは、転生魔法の第一人者、アイハちゃんにもご登場いただきます!」
「わーい!お祭りお祭り!」
アイハが無邪気に喜んでいる。
「異世界から召喚できるし、元の世界にも戻せるなら、異世界のダンジョンに送り込むことも可能!つまり!ミハエルから聞いた、部族の長となる長老の試練!洞窟の踏破を参考にした試練だ!」
「難易度が桁違いに上がっているぞ!異世界のダンジョンと割と近所にあるモンスターのいる洞窟を一緒にするなぁ!」
ミハエルが大声でツッコむが、ゴルドは笑ってごまかす。
「ルールを説明します!今から、候補者の4名の皆さんには、自分を含めた4人パーティーを組んでいただき、それぞれ異世界のダンジョンへ行っていただきます。そこで!ダンジョンの踏破と、己の力の証明をして下さい!見事、1番に踏破された方には、豪華景品がもらえます!」
「ねぇ、選挙は?選挙どこ行ったの?」
美月がいよいよ選挙の色が木っ端微塵に消え去りかけている事に警鐘を鳴らす。
「もちろん!その後、ダンジョン踏破の様子を見ていただいて、町長に誰が向いているかを判断して投票してください」
取ってつけたかのような説明に、美月や家令は微妙な顔をするが、住民はふむふむと納得顔である。
「あえて危険な場所で、リーダーシップを発揮できるか、そこが重要かな」
「パーティーを安全に進めさせられるかも重要だよ。安全第一!」
「絶体絶命なシーンで、人の本性って現れると言うしねぇ」
思ったよりも好意的な意見が出ている。
演説のみで判断するよりも、納得した投票が出来ると、住民は真剣に考え始めたようだ。
「じゃあ、まずはパーティー決めからね。それぞれくじを引いて、順番を決めた後、指名制でメンバーを1人ずつ決めていきます」
ワカバがさらさらと慣れた様子で説明して、くじの箱を立候補者に引かせる。
1番はミハエル。
2番はフィオ。
3番はスケマツ。
4番がヒロだ。
「では!ミハエルさん、最初の指名は?」
「ヴォルク殿で」
「おぉ~!手堅い!というか大本命をノータイムで選びました~!」
ワカバがノリノリで盛り上げる。
なお、ヴォルクも初耳なので、なんでそんなことをと、しかめ面をしていた。
「では、フィオさん!どなたで?」
「サリーを選ぶわ」
「おおー!やはり傭兵チームが人気です!」
まぁ、そうだろうねと全員が頷く。
この領内きっての最強格といえば、世紀末異世界からの転生をしてきた傭兵チームに違いない。
続くスケマツも、傭兵チームのヴォルクの右腕的存在、トーマスを選ぶ。
オシャレ短髪の、傭兵チーム内のムードメーカーである。
「さぁ!ヒロさんはどうしますか?」
「ローガン団長で!」
「あ、それはさすがに・・・業務に支障が出るので」
ヒロがジョーカー的人物を指名するので、やり直しをワカバが言う。
「あたいー!あたいを選んでよー!ヒローーー!」
観客席で叫ぶクローナを見て、ヒロはじゃあクローナで、と軽く決めた。
2週目は、ミハエルは順当に傭兵チームのメンバーをもう1人指名。
フィオも同じく傭兵チームを指名。
スケマツも同じく。
ヒロも最後の7人目を指名しようとして、観客席で泣き叫ぶキャロットがいたため、キャロットを指名。
「さぁ!最後のメンバー指名です!ミハエルさんどうぞ!」
「・・・ジョアンナで」
ミハエルはもう1人傭兵を選ぶか迷ったが、最後は自分の側近を選ぶ。
続いてフィオは、悩む素振りもなく指名に入る。
「ミツキで」
「うぇぇぇええい!?」
美月が驚きの声を上げる。
「な、ななな、なんで!?私強くないよ!?」
「貴方の頭脳が必要になるわ!よろしくね」
「おぉー!意外な人選がきましたー!!」
ワカバが盛り上げる。
「おぉ、フィオーナ様のチームは、最後にミツキ様を選ばれたか」
「中々に策士ですな。パワーによる突破ではなく、頭脳を用いて戦略的に1番を目指すというわけか」
住民の考察が捗り、会場は盛り上がっていく。
続いてスケマツは、手堅く最後の傭兵メンバーを選んだ。
これはこれで、スケマツ以外は傭兵なので、ガチメンバーともいえる。
「さぁ!ヒロさん!最後の1人は?」
「うーん・・・ど、どうしよう」
ヒロは悩んだ。
できれば頼りたかった傭兵メンバーは7人全員選ばれてしまった。
獣人のクローナとキャロットがいるので、やはり役割を変えられるメンバーが欲しい。
だが、エルフから選ぼうにも、実は側近のジョアンナさん以外は、名前が怪しい。
さすがに、エルフの側近の、えっと名前なんだっけ?なんて呼べば、始まる前からチームに亀裂が入る。
だが、じゃあそれ以外は?と言われると、宇宙チームは荒事には向いていない。
ワンチャン、美月を選ぼうかと思っていたが、それもすでに選ばれている。
騎士団メンバーは呼んでもいいのか?いや、ローガンがダメだったのだ、そもそも仕事中に呼ぶのは確かに不味い。
ヒロは悩みに悩む。
そこで、ふとその人物と目が合った。
「あっ!そうだ!」
「おぉ!選ばれましたか?最後のメンバーは?」
「ゴッド様で!」
「・・・え?」
ゴルドは頑張れ~、とヒロを応援していたが、急に指名されて固まる。
「え?ご、ゴルド様ですか?・・・仕事してないのでいける?じゃあ!ゴルド様で!」
ワカバがリンゼに確認して、リンゼがゴーサインを出す。
「うぉおおおおい!!」
ゴルドは見事に、自分が蒔いた種で、異世界のダンジョンへ潜ることとなった。




