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第32話 デジマ町長選




「センキョ?」



 ミハエルが何だそれは?と言う顔で説明を聞く。



「住んでいる者達が、町長になりたいという人物へ投票して、自分たちでデジマの町長を決めることさ!」


 ゴルドが我が物顔でそう言う。

 別に自分が発案したものでもないのに。


「なんだその面倒な決め方は。お前が領主で一番偉いんだろ!スパッと決めんか!」


 ミハエルらしい指摘で、ゴルドは怒られる。


「まぁまぁ、ここは異世界人の町だ。常識に囚われた方法じゃあ(ほころ)びが出る。異世界ではこうしてトップを決めるらしいから、それに則ろうじゃないか」


「まぁ、エルフの伝統的な長老選も、近しいものはあるが・・・」


「お?エルフ式のセンキョか?」


 ミハエルたち、エルフにも選挙に近しいものがあるようで、ゴルドは興味津々で聞く。


「投票はするが、同時に試練をクリアせねばならない。その出来映えを民に見てもらい、長老になり得る人物かの判断を得るというものだ」



「いいじゃん!採用!それも取り込もう!」


「おまっ・・・そんな簡単に決めていいのか?」


「はっはっは、私は領主だぞ?決め方は私に権限をくれている。エルフのみんなだって、自分たちの文化を盛り込んだ選出方法の方がいいじゃないか」


 いい笑顔になるゴルド。

 決して、その考え方も悪いわけではないので、ミハエルは怒るに怒れず、ゴルドが方法を聞き出そうとしてくるので、仕方なく説明した。





「あー、センキョですかぁ」


「まぁ、僕たちもやってはいましたけど」


「ほとんど出来レースみたいなもんだよ。誰でも出れるわけじゃないし」


 ワカバと、オタク風の青年のスケマツ、そして中学生の女子の3人が、ゴルドから説明を受けていた。


「イチゴ殿、出来レースだったとは?」


 ゴルドが中学生女子、――ここで初めて名前が出たが、イチゴというらしい――に、気になった部分を聞く。



「立候補出来る人にルールが定められているのよ。年齢が40歳以上とか、政治経験があるとかね」


「うーん、素人を除くためのルールか。だが、今回はそんなの決めていたら誰も立候補できぬな。それは無しとしよう」


「いや、全く無いというのも、それはそれで困りますよ?」


 ワカバが指摘する。


「例えば、このデジマと全然関係のない人が来ちゃったらどうします?」


「え?なんでそんな人が来るの?」


 ゴルドが首を傾げる。

 こんな発展途上の町に、急に知らない人が来るだろうか?


「だって、町長になれるんですよ?町で1番偉い人ですよ?お金もたくさんもらえるでしょうし」


「何でだ?町長は手当はあるが、町長だけでは食べていけないぞ?現に、アルセノス町長は、商人をしているからお金があるように見えて、稼ぎのほとんどは商売をしているからだ。町長だけでは食っていけんぞ?」



「「「え?」」」



 ワカバたちが今度は驚く。

 ゴルドも同じように驚く。


「それ・・・町長やるメリットないですね」


「まぁ、本来は、奉仕活動であるべき、とはいえ・・・」


「それ、誰もやりたくないよ」


「え?なんで?」


 ゴルドが驚く。

 だが、よくよく考えてみると、自分だって領主がやりたくてやっているわけではないので、何となく察してきた。


「そう言われてみればそうだな。アルセノス町長も、代々やってくれているから、やっているに過ぎないし・・・何か特典をつけるか」


「特典て・・・汗」


「何だか安く感じちゃうなぁ」


「まぁまぁ!任せておけ!特典を聞けば、それなりにやる気が出ると思うぞ!」


 ゴルドは意気揚々とワカバ達の意見を汲み取り、去って行った。





 今度は、獣人の人たちのところへゴルドは行く。



「はぁ・・・センキョですか」


「うむ。皆で投票をしてもらうぞ!」


「え?オレ達も投票するんですか?」


「当たり前じゃないか。君たちだってこの町に住む住人だぞ?」


 獣人達は顔を見合わせて、ポカンとする。


「ありがたいですけど、なんか恐れ多いですなぁ」


「我々は学もなければ、奴隷として1番下の位だったので、町長様なんて偉い人を選ぶだなんて、気が引けますよ」


「まぁまぁ、そんなに気負うことはない。ミツキ殿も言っていたが、要するに、この人なら任せられそうだなとか、この人の言う政策に、納得するなら投票するだけさ。名前は書かないし、誰が誰に投票したかも明かさないから、プライバシーも安心さ!」


 ゴルドがババン!と手を広げるが、獣人達はやはり気が進まないのか、まぁ、ゴッド様がおっしゃられるなら、やらせてもらいます、というノリで答える。


「そういえば、獣人の集落や国ではどうなんだ?どうやって長を決めるのだ?」


「そりゃあ、強い者が長になるので、戦って1番を決めます」


「おぉ、シンプルだな・・・でも、そいつが嫌なヤツだったり、めちゃくちゃな政治をしたらどうするんだ?」


「文句があれば、より強い奴が今の長を倒せばいいんでさ」


「大丈夫かそれ?」


 さすがのゴルドも、獣人達の文化は入れられそうにないと頭を悩ますが、獣人達は言った。


「まぁ、我々は強いリーダーがいないと、舐められますし、死なれてしまうのが1番困るんです。強くて、腕っぷしがある者だと、ついて行く下々のものが安心するんですよ」


「うーん、直接戦うのはアレだが、強さを証明すればいいのか。検討しよう!」


 ゴルドは任せておけと豪語した。

 なお、獣人達は特にお願いしたわけでもないので、え?何をですか?という顔をそれぞれしたが、ゴルドは特に気にせず行ってしまった。




 屋敷にて、ゴルドは集めた意見を美月に伝えて、リンゼと家令も巻き込み、せっせと選挙内容を詰めていく。



 そして、大部分をまとめた後、町長選の立候補者を募集した。


 1週間ほどの募集期間を経て、いよいよ、デジマ初代町長選挙の出馬者がそろう。


 デジマの空き地に、立候補者が集められた。

 そこに、デジマの住民と、ゴルド達も揃っている。


 まずはここで、立候補者の紹介と、演説が行われる。


 本来なら、広い選挙区であれば、長い期間選挙活動なり何なりするが、まぁ100人に満たないデジマなので、演説等を聞いてその日のうちに投票する、超簡易的選挙で進める。



 まずは、領主のゴルドから挨拶がある。


「うむうむ。まずは立候補をしてくれたもの達よ、領主として感謝する。選ばれるのは1人だが、町のためにと立ち上がった皆の心意気に、私は心強い気持ちである!」


 ゴルドの挨拶はちゃっちゃと終わり、立候補者の紹介に移る。


 まずは、宇宙人チームより、スケマツが立候補していた。


「改めて、スケマツです。私が町長になったあかつきには、このデジマに、この世界のどこよりも明るい電気による生活を、住民の皆様にお約束しましょう!」


「「おぉ~」」


 さすが選挙を知っているだけあって、スケマツの演説と公約は、なんだかそれっぽくいい感じになっていた。



「良いわね。選挙っぽいわ。どうなる事かと思っていたけど、ここまでちゃんと出来ているなんて、意外だわ」


 美月が今の所までの雰囲気を見て、一安心する。


 ゴルドは、「まだまだこれからさ!」と意気込んでいるが、美月は、ゴルドがはしゃいでいる程度にしか思っていなかった。



 次に立候補しているのは、エルフチームのミハエルである。


「あー、仲間からの推薦で、立候補させてもらった。まずは、医者や薬師を呼び、医療体制を整える。今の状態でも、ゴルド様の権限のもと、治癒魔法でなんとかなってはいるが、この先も考え、領主からの特別な対応頼りから脱したいと思う」


「「おお~」」



「ふむ。やはり為政者として頭ひとつ抜けているのはミハエル殿ですな」


家令が改めてミハエルをそう評価する。

美月やゴルドもそれに同意して、ミハエルの堂々とした演説は終わる。



次に立候補しているのは、ヒロだ。



「え、えっと、山田浩史です。ヒロって呼んでね。こういうみんなの前で話すのは、慣れていないから、えっと・・・とりあえず頑張ります!」



獣人達は歓声を上げて喜んでいるが、他の面々は生暖かい目でヒロを優しく見てあげていた。



「うむうむ!立派に話せているぞ!ヒロよ!」


「親バカみたいよ、ゴルドさん。まぁ、高校生だし、ヒロくんにはちょっと、町長は荷が重いかな」


ゴルドと美月がそれぞれ感想を述べて、次なる候補者が最後となる。




ステージに上がったのは、豪華なドレスに身を包んだ、上品な令嬢であった。





「ほとんどの方はお初にお目にかかりますわ。フィオーナ・グレイシスです」




堂々と佇むフィオの姿がそこにあった。


ゴルドも美月も、最初聞いた時は驚いたものだ。

デジマの住民も、顔を合わすのは初めての者ばかりなので、戸惑いがある。



「私は、デジマのすぐ隣にあります、ゴルド様のお屋敷がある町にて、町長を務めるアルセノスの娘です」


そこでようやく合点がいったと言わんばかりに、住人の納得した声が漏れる。


近くの町長の娘ということで、町の運営に関して、ある程度安心して任せられる理由にもなっている。



「私の掲げる理想は、それぞれの文化と叡智を融合した町、デジマを目指す事です」


ざわざわと会場が騒がしくなる。

フィオの掲げる理想が、いまいち伝わっていない故だ。



「ゴルド様の転生魔法によって、本来はつながらない『異世界』より、皆様の中にはやって来られた者もいます。ヒロ様がお声をかけて、奴隷から解放された者もいます。それぞれご事情はあるのでしょう。しかし、ゴルド様の元に集いし私達にならば、《《ここに》》しかない、唯一無二のものが出来るはずです」



「「おぉ!・・・」」


これまた、今までにない切り口からの公約に、住民達は高揚する。


確かに、我々は異世界から来た者など、普通では出会えない者同士である。


それが、一体どんな唯一無二のモノになるのか。


具体的な政策こそないものの、住民を魅せる演説が、そこにあった。



「うんうん。じゃあ、早速だけど投票に移りましょうか」


美月がタイムテーブルを見てそう言うが、ゴルドがいつの間にかステージに上がる。



「皆の衆!聞いて欲しい!」



「あ!ゴルド様だ!」


「ゴッド様、どうしたんだろう」


住民がザワザワとゴルドの呼びかけに、驚きつつも耳を澄ませる。



「今回のセンキョは、ヒロやミツキ殿の世界のものを参考とした。だが!このデジマに来てくれたエルフや獣人や宇宙の民たちにも、それぞれの選ぶ方法があったと聞く!」



ゴルドが威勢よくそう呼びかける。


美月と家令は嫌な予感がしていた。

リンゼはいつも通りに無表情である。



「というわけで!投票の前に!エルフ長老選で代々伝わる試練と!獣人に伝わる戦いと!宇宙の民からの要望で!その試練と戦いを勝ち抜いた勝者には報酬を用意している!その一連の経過を見て!投票してくれ!」



全部、ゴルドは混ぜてしまった。



ステージに立っていた4人も聞かされていないので口を開けて固まっている。



ゴルドの自信満々の顔と、よく分からないが、面白そうであるという住民の興奮の歓声だけが、その場を支配していた。





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