第31話 デジマ発展の為、決めるべきこと
今日はゴルドはとても良い気分であった。
朝から目覚めも良く、書類の進みがいい。
午前中で、キリ良く仕事が終わる。
リンゼが驚くぐらいだった。
まぁ、無表情ではあるが。
「よし!今日も視察に行くぞ~」
毎日デジマへ出歩くゴルド。
日に日に建築物が建てられるデジマが面白いのもあるが、ミハエルやワカバ達から、困ったことがないか直接聞きに行く意味もある。
まぁ、今のところ、無いものが多すぎて、どうする事も出来ないのが実情ではあるが。
ゴルドとリンゼがデジマの入り口に来る。
「あ!ゴッド様!」
ヒロが手を振って迎える。
ほとんどヒロは家が出来てからデジマに住んでいる。
獣人チームを率いて、一通り家を建てたのち、ここをより栄えた町にするべく、必要な建築物を建てると意気込んでいたのが昨日だ。
「ねぇねぇゴッド様!これ見てください!競技場作りましょ!競技場!」
「はっはっは、え?なに?競技場?」
ゴルドが笑いながらも、何だいそれ?とヒロに聞く。
「この世界って、娯楽が少ないじゃないですか。だから、スポーツとかができるでっかい競技場作りましょう!そして町のみんなと大会するんです!」
「んー?王都にあるという、闘技場的なものか?剣闘士同士が戦って命のやり取りをするというアレか?」
「い、いや、そこまで野蛮なものじゃなくて、もっとこう、平和なスポーツとかですよ。他にも野外ライブができたり、演劇も観られるようにしますよ?」
「野外らいぶ?演劇は想像つくが、王都の一座を呼ぶと高くつくぞ?」
「自分達で作れば良いんですよ!きっと楽しいですよ~!」
ヒロがキラキラした目で言うので、へ~、いいんじゃない?とゴルドは軽く許可する。
「ちょっと待て。それよりもっと先に決めて欲しいものがあるんだが」
ミハエルがそこにストップをかける。
「お、ミハエル。今日も元気~?」
ゴルドの緩い声かけに、ミハエルはふぅとため息を吐く。
「あぁ元気だよ。毎日見に来るのはいいが、そろそろ例の件をだなぁ・・」
そう言いかけたミハエルの後ろから、次の声がする。
「ボス。兵舎の次は壁だ。この町を囲う壁をそろそろ建てるぞ」
「え~、ヴォルク。それはちょっとやりすぎじゃないか?オレの屋敷のある町だってまだ囲われてないんだぞ?」
「あー、それならそっちが先か」
「違う違う!そういう事じゃない!壁はやり過ぎだって話だよ!」
ゴルドがそう言うが、ヴォルクは聞く耳を持たずに言う。
「いや、壁はあって当然だろ。聞けば、変な妄言を吐くヨソの商家次男が、馬車で入り込んだらしいじゃねぇか。オレ達の元の世界より平和だろうと、さすがにここのセキュリティはガバガバすぎるぜ」
「そ、それを、言われると・・・まぁ」
ゴルドは口をすぼめながら、目を泳がせる。
「うちのサリーを連れて行くんなら、セキュリティぐらいあげてもらわねぇとな」
そう更に言われて、ゴルドは小さくなりながら、そっすね、と壁作りを了承する。
「待て待て、だから、それよりもだなぁ」
ミハエルが割り込んでそう言うが、その後ろからまた更に声がする。
「あぁー、ゴルド様!ちょうど良かった!」
ワカバがゴルドを見つけて走ってくる。
「見てください!スケマツくんが思いついたんですけど、発電所作りましょうよ!明かりがないの不便ですよ!」
スケマツというのは、あのメガネをかけたオタク風の青年のことである。
「電気が1番サクッと作れて管理が楽なんです」
ゴルドが、電気って何?という顔で理解が追いつかない。
「いやいや、でも電線とか電柱とか、色々作らないと大変だよ?」
ヒロが元の世界からの知識から、疑問を口にする。
「え?なんでそんなのがいるんですか?電気だから信号型電波のエルアルファスタに変化させて、自動スクラズマさせれば、必要な場所に必要なだけ電気を送れますよ?」
今度はヒロがエルア・・なに?スクラ?とゴルドと同じ顔をする。
「まぁ、とりあえず、明るい街灯ができると思えばいいんです。夜道も安心ですよ~」
「いや、別にロウソクと松明があれば・・・王都にあるという、魔法のランプ的なやつだろう?魔力で光る。値段高いし、修理もややこしいし、そもそも魔力コストかかるし、要らないよ」
チッチッチ、とワカバが指を振る。
分かってませんねぇ~、と偉そうにするのが、何だこいつ可愛いなとゴルドは思った。
「その魔力ランプは逆に知りませんけど、こっちの街灯は、コイル回せば無尽蔵に生まれる電気使ってるんですよ?開発コストもそこに居ますヒロ様を使えば、材料費タダで作れます!そして私達からすれば、作り方も簡単なうえに、修理要らずの自動修復機能搭載です!」
「す、すげーー!本当か!?」
ゴルドが通販番組の観客ばりにリアクションする。
ワカバは、今しかこのチャンスはありませんよ!と煽るが、チャンスとは一体何なのか不明である。
「ヒロ単体でも、何でもありで訳わかんねぇけど、ワカバたちも訳わかんねぇよな・・・」
ヴォルクが感想みたいにそう言う。
そんなわちゃわちゃとしたやり取りの中で、ミハエルがぷるぷると震える。
「まずは競技場を!」
「いやいや、壁をだな」
「電気!電気ですよ奥さん!」
「うるさーーーい!!!」
ミハエルがブチギレてゴルドに詰め寄る。
「ゴルド!いい加減決めろ!この町の町長を!!」
物凄い剣幕で、ゴルドにゼロ距離で詰め寄る。
「あぁ、うん、はい。いるね、町長。あ、ミハエルやる?」
「そんな軽く決めるな!よく熟考しろ!」
ガミガミとゴルドは怒られる。
だが、何一つ言い訳などできない。
ゴルドは正座して、ミハエルの説教を受けていた。
「というわけで、町長を決めたいと思う。まずはやりたい人~」
ゴルドは屋敷の広間でいつもの主要陣を呼び、軽く聞く。
ローガンも家令のシュナイダーも、町長のアルセノスも、全員黙ってしまった。
「えぇ~、3人しか居ないんだから、腹決めて挙手してよ~」
「ゴルド様、我等を過労死させる気ですか?」
ローガンが青筋を立てて笑顔で言う。
「そもそも、デジマは特殊過ぎます。住民が異世界人のみで、元々のこの世界の常識も通じず、文化や風習も違う。ゴルド様にのみ従っている状態で、別の者が代表をするのは酷かと」
「獣人たちはこの世界の者だぞ?」
「ではそこだけ訂正しますが、獣人との交流をした者はここにおりませんので、結果は同じです」
家令の冷静な指摘に、ゴルドはうーむと悩んでしまう。
「なので、ゴルド様。ここは、異世界人の中から、町長を選ぶべきかと」
町長がそこで切り出した。
「そもそも。私も町長をしておりますが、結局何をするかと言えば、町の者達から意見を聞いて、領主であるゴルド様に、町の代表として陳情や現状報告をする、これが第一の仕事です」
町長が噛み砕いて説明して、ゴルドがふむふむと理解する。
「細々とした町で決められる決定は、そりゃ町長がしますが、そんなのはほんの一部です。大事なのは、町民が安心して代表をしてくれる人物です」
「なるほど、それなら、確かに異世界人から出したら、町民も納得するな」
で、誰がいい?とゴルドがそこまで投げる。
そこで3人はため息をつきつつ、ローガンから意見する。
「ミハエル殿だろう」
「私もミハエル殿に1票」
「あ、私も」
家令も町長も、サラリとローガンに同意する。
「あ、なーんだ。オレも薄っすらそう思っていたし。いいじゃん、ミハエル殿で!」
ゴルドがパァッと笑顔になって、よしよし決まったと終わろうとするが、黙って聞いていた美月が口を挟む。
「ミハエルさんが1番しっかりしてるのは分かるけど、エルフ寄りの考えにならないかしら?」
「んん?・・・というと?」
ゴルドが美月に聞くと、美月は答える。
「1番人口が多いのは、宇宙人チームよね。ざっと50名。その次に、エルフの30名、そして獣人の10名。まぁ、ヴォルクさん達やヒロくんもいるけど、そこは置いといて・・・エルフの皆さんの代表を、すでにミハエルさんがしてるよね」
「いやー、住む人増えたね~・・・え?あ、ミハエル?うん、うん、エルフの代表だね」
「つまり、その時点で、エルフ寄りの考えというか、その意見を聞いてあげてるわけよ。そこから、ワカバちゃんたち宇宙人の意見や、キャロットさんたち獣人の意見、って聞いて行っても、エルフの代表である以上、エルフ寄りになるでしょ?」
「そうか?森の賢者だよ?きっと公平にしてくれるさ~」
のんきに考えるゴルドに、美月は軽くチョップをする。
「いてっ」
「私が言いたいのは、異世界からそれぞれ来た種族の代表をまとめる人を、町長にしたらって事。エルフ代表ミハエルさん、宇宙人代表ワカバちゃん、獣人代表キャロットさん、そして、その人達をまとめるのが町長」
美月の指摘に、ローガン達は「確かに」と納得する。
「うむ。ではミツキ殿。それで誰が町長をしたらいいんだ?」
ゴルドは清々しいほど自分で考えなかった。
美月はうーん、とそこは悩み、ぶっちゃける。
「私の世界だと、早い話選挙してたからなぁ。こっちで決めるってのに違和感があるわ」
「センキョ?」
「住民が投票で決めるのよ。誰が町長にいいかって」
ローガン達はそこでちょっと顔をしかめる。
さすがに、封建社会、つまり貴族が決めるべき道理の中で、これはまずかったか?と美月が思ったのだが・・・。
「お!いいじゃん!それで行こう!」
当の本人である、ゴルドが1番乗り気であった。
「・・・ゴルドさんって、本当に貴族向いてないのね」
「何を今更言ってるんだ?さあ!そのセンキョとやらのやり方を教えてくれ!」
ゴルドはキラキラとした目で、美月にそう言うのであった。




