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第27話 圧倒的差があるが、我等が領主はそれに気付かない




「つ、つまり・・・我々は異世界に来たという事なんですか?」


赤髪の美女、ワカバ・イトーがそう言った。


屋敷の外で、宇宙から転生してきた面々にはお茶とお菓子を振る舞い、代表者である3名が、ゴルド一同と客間で話をしていた。



「うーむ、不思議なことがあるんですね。古代の文献に、かつて星に住む者は、そういった不思議な体験を著書に残したと、そういった記述はあるのですが・・・」


メガネのオタク風青年が、興味深そうにパッドをポチポチタッチしながらそう言う。



「そ、それって、スマホかタブレット?」


ヒロが興味津々でオタク風青年に聞く。


「ん?その名称は知らないけど、この時代には無いオーバーテクノロジーに驚かない辺り、貴殿が違う世界からの転生者というのは本当なのだね。うーん、興味深い」


「私たちと名前が似ているのも、何か異世界同士でも、繋がるチャンネルがあるということかしら?それとも偶然?」


確かに、ワカバも含めて、彼らは和名なので、ヒロと美月は親近感があった。


もう1人の更に若い少女——中学生くらいだろうか——が同じくスマホのような四角い端末でタッチとフリックを繰り返してそう言った。



ゴルドは彼らを見て、忙しなく手を動かしているなぁと不思議に思ったが、その手に持つ機械の画面を見せてもらって、驚愕する。



「な、なんだこの不思議な絵は!?我々が映っているぞ!!」



「記録端末として撮影をしているんです。あと、内臓されている映像資料や記録をタッチして表示することもできますよ」


「まんまスマホね」


美月も、この世界で見れるとはね~、という驚きはしつつも、この物自体には驚かない。


ゴルドは、とんでもない世界から人を召喚したのだなぁとしみじみ思った。


そして、こんなすごい文明の所の人々は、温厚で良かったなぁと思う。


ヴォルクやミハエルのように、心臓に悪い流れにならずホッとしていた。



「話は分かりました。もう死を待つだけの私達に、生きる機会を与えてくださったので、喜んでこの領に住まわせていただきますし、発展もお任せ下さい!」


ワカバは意気込んで胸を叩く。


ゴルドは穏便に話が進み、感動で涙が出る。


「さて、それでは、お願いするお仕事としては、農業か建築をお願いしたいのですが」




「え?それって、ボタン1つじゃないですか?」





美月の提案に、ワカバは首を傾げる。


美月とヒロが若干嫌な予感を覚えた。



「いや、宇宙に出るほどの機械文明だと、そうかもですが・・・ご覧の通り、ここって中世レベルの技術でして」


美月が自分の感覚で言うと、オタク風青年が答える。


「中世レベルということは、ロケットや自動車、飛行機の時代か。確かに文明の発達はまだまだだね」


「あ、ダメだこれ。私達の文明レベルで中世という認識よ。もうこれあれだ、石器時代レベルっていう説明しなきゃ」


「石器時代?それは伝説のお話よね?」


中学生女子が純真な眼差しでそう言う。


美月は頭を抱えた。




「なぁ、ところで、なんで君たちは若い人ばかりなんだ?」


ふと、ゴルドが話についていけず、ボーッとしていたが、思いついた疑問を口にする。


窓の外を見ても、他の面々も若い。

ワカバが代表ですと言ってきたが、そのワカバが20代半ばくらいなのに、確かに他にワカバより年上の人物が見当たらない。



「・・・あの、それは・・・」


ワカバが急に元気なく、言いづらそうにする。

ゴルドは慌てて、いや言いにくいなら大丈夫ですよ、むしろすいません、とへこへこ謝るが、ワカバは意を決して話す。



「他にも、ちゃんと大人は居ました。でも、みんな我先に脱出ポッドで宇宙に逃げちゃって・・・小さい集落みたいなセンターだったから、残ったのは、親がいなかったり、親から捨てられた子ばかりで・・・かく言う私も、親は事故で亡くなって、いないんです」


ゴルドは肩を落とした。





(他の異世界・・・ブラックすぎるだろ)





口には出さないが、ゴルドはいい加減言いたくて仕方のなかった事を、胸の中で言った。


まぁ、そもそも幸せであれば、異世界に転生したいなど思いもしないだろう。


生まれた世界から離れたいと思う理由があると言うことは、それすなわち、こういった事情が多いのだろう。



それにしたって、異世界ってそんなに生きづらいの?もうしんどいよ・・・と、ゴルドは静かに思っていた。



「はい、じゃあ。農業の方法も、地上での生き方も、文明レベルがガタ落ちしようが何だろうが、生きていく術も教えるから、今日からよろしくね!」


美月がバシッと言って、空気を変える。


ゴルドは、うむ!そうだな!と同調し、ワカバ達を受け入れる。


ワカバも、残り2人も、顔を見合わせて、照れながらも、嬉しそうに、よろしくお願いしますと頭を下げた。






「んじゃ、兵舎の建築資材運びからいくぞ」


日付が変わり、宇宙転生者達は、チームに分かれて作業に従事する。


ヴォルクが担当するのは、兵舎の建築である。

一般家屋は、獣人とヒロが担当しているので、この手の防衛施設は、ヴォルクたち傭兵達が総出で造っている。


みんな若いとはいえ、機械文明に慣れたもやしっ子にしか見えない。

ヴォルクはまずはケガをさせないことと、気持ちが萎えない様に、甘めに見てやろうと心づもりをしていた。



「え?これ木?軽くない?大丈夫ですか?」


「複数で持つんですか?私1人でも持てますよ?」


ヴォルクはその必要はないと気付かされた。


もやしっ子しかいないのに、全員ヒロかな?っていうくらい怪力の持ち主だった。


瞬発的な力も、体力も無尽蔵である。


サリー達、傭兵チームも引いていた。


「やっぱ、異世界ってヤバいですね」


「いや、まぁ、もう考えても仕方ねぇよ。弱いよりかは強い方が何かと便利だし、助かるからもういいさ」


ヴォルクは投げやりにそう言った。



「うーむ、これは恐らく、重力の違いが出ているかもしれませんね」


オタク風の青年が、ヴォルクにそう言う。


「重力の違い?宇宙だと無重力だろ?」


「はい、おっしゃる通りです。なので、人工プラントのファルテシオンでは、重力発生装置を稼働させていました。その出力により生み出された重力よりも、この星の重力の方が軽いのでしょう。だから、我々は非力でいながら、まるで怪力の様な力を発揮できるのです」



「いや、アイハのお陰な気がするが・・・」


メガネをくいっくいっとあげる青年を横に、ヴォルクはアイハから聞いた話を思い出してそう呟くが、もう青年は聞いていない様だ。重力計算をしようとブツブツ言いながらパッドをタッチしている。



程なくして、兵舎の枠組みが完成する。


「なんという想定より早い完成だ」


「ねぇ、どうせなら木製じゃなくて、もっと頑丈な資材にしない?燃えにくい石とかさぁ」


学者肌が揃っているせいか、予定の作業が終わると、全員であーだこーだと技術に関するディスカッションを始める。



「お~、はっはっは、出来てきてるね~。あれ?これ作り始めて何日経ってるっけ?3日目?」


「今日が初日のはずです。ゴルド様」


ゴルドが視察に来て、すでに柱が立ち始めている兵舎を見て言うと、リンゼがすかさず答える。



「・・・早くない?」


「あー、まぁ、ボス・・・コイツらヒロ並みに強いみたいだから、運ぶのも建てるのも普通のスピードじゃないぜ」


ゴルドはもう驚いたり考える事はやめて、そうか、まぁしっかり休憩はしてね、とだけ言った。



「領主様、領主様、この粘土使いましょうよ」


「ん?何々?粘土遊びはこう見えても私は得意だぞ」


「いやボス、粘土遊びって歳じゃねぇだろ・・・」


高校生くらいの少年に声をかけられて、ゴルドはワクワクした面持ちで話を聞く。

ヴォルクはため息をついてそう言うが、ゴルドは一切気にしない。


「この粘土はですね、木製の壁の上から塗ると、雨や湿気にも強く、耐熱、耐火性もあって、即席ですけど耐久力アップにいいですよ」


「何か思っていたのと違うな。粘土遊びじゃないのか?資材の話か?」


ゴルドが一気にやる気をなくすが、粘土をコネコネして触り、少年の説明を聞きながら、ふーんと返事だけしていた。


「ここの土にたまたま必要な成分が入っていたので、この粘土作り放題ですよ。まぁ、中世から近世辺りに使用されていた古い手法ですけど、役には立つかと」


「まぁ、役に立つなら良いんじゃない?」


ゴルドがよく分かっていないが、まぁ粘土を壁に塗るくらいなら良いだろうと許可をする。


ゴルドはまだ気づいていない。

この粘土材が、時代を二つほどぶっ飛ばすオーバーテクノロジーである事を。




「あ、トイレってこの世界、穴掘り式のトイレですよね。水洗トイレにしましょうよ!」


「何だそれ?どんなトイレなんだ?」


別の少女が今度は提案する。


「お水で流すんです。臭いも気にならなくなって、清潔ですよ!」


「いやいや、水道管工事やら何やらで数年単位で工事がいるぞ。そんな簡単にできるかよ」


ヴォルクもその水洗トイレを知っていたので反応するが、この世界にそれを用意するのは現実的ではないと否定する。



「あぁ、めっちゃコストのかかる中世のトイレはそのシステムでしたよね。下水管やら水道管とか複数のパイプを地下に埋めてって、昔の人って不便でしたね。下水処理場とか、大規模な施設作ってとか、手間が半端ないよね」


「・・・それ以外に方法あんのか?」


ヴォルクが驚く様子を見せて、少女に聞く。


「独立完結型の簡易水洗トイレで良いんですよ。空気中から水分を生成して貯めるタンクと、流した汚物を促成ミクロ分解して、燃料に変えます」


大きさは、水洗トイレの下に小型タンクがあれば出来ますよ~、と少女はなんて事のない様に言った。


「・・・燃料?」


「可燃性の液体です。化石燃料の代名詞であるオイルとはまた違うんですが、ほぼ同じものですね。燃やしても有害な物質が出ないのと、洗えば落ちるぐらいの違いですかね」


ヴォルクは汗をかいた。


こいつら、こんな子供でここまで技術知識に差があるのか、というか再現できちゃいそうなのかよ、と。


この世界では、超超超オーバーテクノロジーにして、下手すれば惑星もろとも、影響を出してしまうほどの技術革新が起きてしまう。





「は~、そんなよく燃える燃料なら、薪より暖かそうだな」



それを束ねるのが、この何一つ理解できていない領主、ゴルドである。



「・・・ボス、確かデジマって、交易もバンバンしたいって言ってたよな?」


「ん?あぁ、なんでもミツキ殿いわく、そうやって金を儲けると」


「交易関係は、町長かそのお嬢さんに絶対任せな。今の面々に、交易の顔になれる奴はいない・・・というか、コイツらがバレたらヤバいと思う」


ヴォルクの神妙な顔つきに、ゴルドはただ事ではないと気付き、静かに頷いた。



「どうです?水洗トイレ作りましょうよ~」


のほほんと休憩中に、世間話をするノリで、彼等はこの世界を揺るがす物を作ろうとしていたが、やはりそこはまだ子供の為か、そこまで考えられていない。



「まぁまぁ、おいおいな。まずは目先の事に慣れて、メシ食って、この世界に慣れていこう!」


「「はーい!」」


子供の扱いには慣れている。


ゴルドは親指を上げて、ヴォルクにウインクしてグーサインを出す。


ヴォルクは、元の世界にもしゴルドが来たら、良い保育士になるか、カルト教団の神輿にされるかのどっちがだろうなと思った。




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