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第26話 次の転生者達は、未知の存在




「草だけではこの馬の頭数は賄えないです。ましてや軍馬ともなれば、麦がいりますね」


「マジ?」


馬飼の責任者となってくれたエルフがそう言って、ゴルドは驚きの声を上げる。


「馬って草だけ食べてるかと思ってた」


「まぁ、主食はそうですが、体を大きくしたり、エネルギーがいるともなれば、穀物を食べさせないとですね」


馬牧場が完成して、続々と馬が運ばれていく中、麦が必要となることで、視察に来ていたゴルドは頭を抱える。


「村に余剰分あったか?麦って、そんな育ててたかな・・・」


フォローに美月が答える。


「村人も主食はパンだから、麦は結構育ててるわよ。でも、小麦でもいいの?馬に合うのかしら?」


「もちろん馬は喜んで食べますが・・・逆に贅沢といいますか、食用ではなく、もっと馬用の麦の種類があるんです。飼料用の麦を育てれば、食用と分けて運用できますよ」


「・・・じゃあ、飼料用麦の育成も必要ということか」



ゴルドは遠い目をしながら黄昏(たそがれ)る。


何とか資金分配をやりくりした先に、また必要なことが出てくるとは・・・領地経営は終わりがないのだな、と悟った。


「とりあえず、今年は小麦を村々から融通してもらおう。それと干し草か、それは周辺の草原から集めるよう、騎士団に依頼する。冬はそれで何とかして。飼料用麦の畑は、ヒロと獣人の皆さんに依頼して・・・ん?作るのはいいが、管理は誰かできるか?」


ゴルドはここまできて、ふと人が足りないのではと気付く。


「そうですね、我々エルフも、馬飼い組織と自分達が食べる分の畑の管理で手一杯です。馬用の麦畑も管理となると、ヒロ様や獣人の方々へ依頼することになりますが、そうなると開墾はこれ以上できないかと」


「ゴルドさん。ヒロと獣人のみんなを畑管理に回したら、建設がストップするわ。資材提供のヒロと、力仕事で大工が出来る獣人以外だと、ヴォルクさん達になるけど、明らかにスピードダウンは否めないわね。エルフさん達のテントから木造住宅に建て替え計画が遅くなるわ。夏が来る前に、家があると良かったんだけど・・・」


ゴルドは固まる。


人材的には転生者をどんどん呼んだはずなのに、大きくなればなるほど、人手足りなくない?

そんなことを思いつつ、ゴルドは唸る。


「ヴォルク達はデジマの防衛の要になっている・・・町づくりの際の防衛建築について、今は計画してもらっているから、普通の建築に回したら、その計画も遅くなる・・・うわぁーー!もうどうしろってんだよぉぉおおお!」


お家芸となる絶叫が入ったところで、ゴルドは例のアレに入る。




「転生者を呼ぶぞ!今度は能力者ではなく!純粋な人手としてだ!」




デジマのキャンプ地に、アイハを呼んで、詳細を詰めていく。


「まずは転生を望んでいて、召喚されてもすぐに交戦しないタイプをお願い、ここ!ここ重要だからね!」


見学に来ていたミハエルが顔を赤らめるが、ゴルドは気にせず、この重要ポイントだけは譲らないと固く誓った。


「種族とか、能力は?」


「うーん、特に希望しない。畑仕事とか、建設が出来る人がいいけど、有能うんぬんというより、真面目でごく普通の村人みたいというか、獣人でもいいし、エルフでもいいし、人間でもいい。まぁ、異世界に来て、心機一転、頑張りますっ!て人達を集めてくれたらそれでいいさ!」



「雑すぎやしねぇか?ボス?」


ヴォルクがやれやれと言わんばかりに感想を述べるが、内容としては、警戒する必要がなさそうなので、そこについては一安心する。



「人数は何人でもいいの?」


「んー、多すぎても困るし・・・50人くらい?」


何も考えず、フィーリングで答えるゴルド。


アイハは分かったよ!丁度良い人達がいそうだからやろね!とノータイムで転生魔法に入った。


慌ててゴルドも魔力を込めて、来い!良いの来い!と、スマホゲームのガチャを引く人みたいな事を言っていた。



「どんな人達かな?ちょっとワクワクするよね、こういうの」


ヒロがウキウキした様子でそう言う。

クローナは珍しげに目を見開いていて、兎のキャロットと、他の獣人達も、見たことがない転生魔法の光に、おぉ~とどよめいていた。



「まぁ内容的に、今回転生してくるのはごく普通の村人たちじゃないかしら?貧村で困っているとか、襲撃を受けた所為で、行く宛てがないとか」


美月がリアルな目線でそう想像する。


「我々エルフがまさにそうだったしな。しかし、異世界まで飛んでおきながら、普通の村人を呼ぶというのは、贅沢というか、そもそも転生させずとも、呼べそうな気がするというか・・・」


ミハエルが元も子もないことを言い始めているが、転生魔法は完了する。



光に包まれた転生者が、総勢50名現れた。



そこにいたのは、銀色の防護服に身を包み、頭部をガスマスクで完全に覆われた、異様な集団であった。





「「「「・・・???」」」」





ゴルド側の全員が、その場で固まる。



防護服?宇宙服?に身を包んだ50名も固まる。




「・・・しまったな。種族は人型種とか指定すべきだったか」


ゴルドがやってしまったという冷や汗をダラダラかきながら、どうしようかと頭をフル回転させる。



「ご、ゴッド様。あれは防護服的な物で、要するに服なので、おそらく中の人は、人?・・・だと思います・・・だといいな」


ヒロが自信なさげに言う。


ヒロと美月にヴォルクたちは、あれがそういう服だと分かるので、まだ驚きは少ないが、他の者はみな、一様に銀色のテカテカの肌に、全員見た目が一緒すぎて、未知との遭遇状態になっていたので、驚き度合いは更に上である。



ガスマスクの人間?の1人が、手を挙げて歩み寄る。


ゴルドも意を決して、手を挙げて前に出る。


「え、えー。私の名前はゴルド・アイハンドです。ここの領主をしています・・・通じてる?俺の言葉分かるかな?」


アイハを見るゴルドだが、アイハも見たことのない出で立ちの転生者達に、ビビってヒロの後ろに隠れている。



「・・・ここの空気は、吸っても大丈夫なんですか?」


くぐもった声が相手からする。


予想外にも、女性の声だったので、ゴルドは普通に驚く。

何せ見た目で女性とは全く分からなかったので。


「す、吸っても大丈夫かって・・・うん、まぁ・・・特に、大丈夫かと、はい」



ゴルドは質問の意図がよく分からず、とりあえず普通に答える。


目の前の女性?と思わしき、未知の存在は、恐る恐る、震える両手を、自身の頭に向けた。


未知の存在たちが、どよめく。

大丈夫か!?取るのか!?、みたいなことをそれぞれ言っている。


ゴルド達は更に困惑して、相手が何をしたいのか全く理解できなかった。



ゴルドの目の前で、女性?は、自らの頭を掴み、ガスマスクを脱いだ。


「「「あぁ!」」」


ガスマスク勢達が、驚きの声を上げる。



「「「「ぎゃあああ!!!」」」」


ゴルド側勢も、絶叫する。

何せ、ガスマスクを知らない彼等からすれば、自らの頭をもぎ取った行為にしか見えなかったからだ。


「だ、大丈夫よ皆!あれはマスクだから!頭を取ったわけじゃないから!」


美月が訂正して教えてあげるが、獣人やエルフの一部は失神している。


ミハエルも悲鳴を上げていたのを見て、ヴォルクはコイツ女々しいなと目を細めていた。




ゴルドも漏れなく絶叫していたが、目の前には、頭のない宇宙人・・・ではなく、ごく普通の人間が、赤髪の美女が、そこにはいた。



美女は深呼吸をする。


そして、体に異常がないことに気付き、歓喜の声を上げた。


「みんな!大丈夫!呼吸できるよ!」


「ほ!本当か!?」


「マスクを脱げるのか!?」


次々にガスマスクを脱ぐ未知の存在達は、マスクを脱ぐと、ごく普通の人間であることに、ゴルド達はようやく気付いた。


だが、そんな一安心したゴルド達を余所に、召喚された人々は互いに抱き合い、歓声を上げる。


まるで祭りとでも言わんばかりの騒ぎように、それはそれでゴルドもどう反応したら良いか困惑していた。


赤髪の美女は、涙を流してゴルドに声をかける。


「貴方がこの惑星の代表ですか?」


「わ、ワクセイ?いや、この地の代表ではあるけど。領主のゴルド・アイハンドです」


「我々は、宇宙のスペースロイドです。銀河系第877スペース人工プラント、ファルテシオンの住人です」


何を言っているのか全く分からなかったが、とにかく国?村?の説明をしているのだと辛うじてゴルドは分かり、とりあえずそういう所から来たんだな程度に思っておくことにした。


「いやー、遠い所からどうもどうも」


「プラントの空気製造機(エアバンク)が故障し、周囲へのSOSも出せず、死にゆく我々を救助いただき感謝します。ここへはワープか何かで?」


「え?なに?わーぷ?ははっ、ちょっと何言ってるか分からないですけど、えー、皆さんは異世界転生しておりまして、私が転生魔法でお呼びしました」




「「「「・・・・え?」」」」



赤髪の美女ならびに、喜んでいた宇宙人の他の面々も、はい?と理解が追いつかない顔をする。



「いやぁ・・・僕、転生ものとかのラノベや漫画はよく読んでいるけど、宇宙人とかを中世に呼んだ展開は、これまた渋いね」


「渋いって何よ」


ヒロがポツリとそう言って、美月が答える。


ゴルドはとりあえず、お茶にしますか?とリンゼに人数分のお茶を用意するようお願いした。




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