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第25話 終戦後、幕間



エルフ総勢30名。


獣人総勢10名。


デジマ予定地となるキャンプに、一気に人が増えた。



ゴルドはそれには満足しつつ、あの豚からの手紙には苦虫を噛み潰したような顔で読む。



「なんて書いてあるんですか?」


美月が見せてよとゴルドの横を覗き込む。


「ミツキ様。近いです」


「大丈夫よリンちゃん、ゴルドさん取らないから・・・たぶん」


リンゼが無表情で動揺する。

そんな感情の表し方が出来るとは、美月は感心した。

いや、単純に美月もリンゼの感情表現がわかってきただけなのかもしれない。


「要約すると、取引はやっぱり無しにしました。なので受け取りにも行ってません・・・て書いてある」


あー、無かったことにしたか、と全員が思った。


ついでに、豚の上司というか、そのデカい商会からもわざわざ文が届く。


そこには、どこで知ったか経緯を明らかにせず、ゴルドの領が野盗に襲われた事に深く胸を痛めますだの、見事撃退したことへの賞賛をいたしますだの、その様なお強い方には、私たちは良い関係性を築いて、ほどよい距離感でいたいですだの、要するにもう何もしませんという遠回しの文だった。


ついでに、お気になさらず、心ばかりの贈り物ですと、露骨に金銭をどんと送ってきた。


その資金、ゴルドの領の年間収入に匹敵する額である。


「ふん。まぁ、もう争う気がないのなら、どうでもいいか。金は有り難く頂いて、デジマ建設に注ぎ込もう」


「そこで私腹を肥やさないあたり、うちの領が金持ちになれない理由が見えるわね」


ゴルドが右から左へ金銭を投げて、美月が思ったことを素直に言った。


「私腹を肥やすと、みんな金持ちになれるのか?」


「いや、みんなはならないけど、ゴルドさんは、惜しくないの?この大金見て。パーっと使いたいなぁとか、贅沢したいなぁとか」


「オレ貴族だから、もう贅沢してるよ?美味い飯食ってるし、ベッドフカフカだし」


本気でそう言って、これ以上いる?みたいに聞くゴルドを見て、美月は何とも言えない顔になる。


「ゴルド様は日々の優雅な日常にこそ、幸せを感じる方。素晴らしいと思いますわ」


フィオがゴルドを褒めて甘やかす。

ゴルドはふっ、照れるぜと喜んでいるので、まぁもう何も言うまいと美月も思った。



「さて、馬もやって来るし。お金もあるから、これでデジマもどんどん出来上がるぞ~」


のほほんと安心するゴルドの目の前に、書類の束が持ってこられた。


ゴルドが目を点にして、持ってきた家令と町長、ミハエルを見る。


「ど、どしたのこれ?」


「資金が出来たとのことなので、家令である私からは、我が屋敷の修繕費、屋敷使用人の採用依頼、財務担当の採用、その他要望書です」


「町長の私からは、町の修繕依頼から、自警団の強化要望、町役場採用に関する意見書です」


「エルフの意見書だ。テント暮らしから、自分たちで木造の家を建てて住みたい。希望者のリストと家の設計書がある。あと、デジマの責任者はゴルド・・さ、様・・・なのだろうが、町長を選ぶのだろう?誰がなってくれるのだ?」


家令と町長はいつもの調子で言い、ミハエルは、照れながらゴルドに様をつけて言う。


「・・・み、ミツキ殿、これ見て欲しいなぁ~」


「一緒になら考えてあげるけど、私は判断できないわよ?」


ゴルドはカタカタ震えて、今度はフィオを見る。


「・・・ま、町の件は、フィオで判断を」


「あら?今回の資金は全てデジマに回されるのでは?町には資金がありませんので何もできませんことよ?」



町長が怖い目をする。


その目には、新しい町だけを優遇するのか?

資金多いなら、今ある町にも還元しないのか?

というプレッシャーがあった。



「・・・り、リンゼ~」


「ゴルド様。屋敷の使用人及び、護衛を増やすべきです。ヴォルク様を筆頭に、近衛隊を設立して、資金全てをそこに充てましょう」


「リンゼ!なぜそんなことを言う!そんなの認められるわけないだろう!」


「では、ゴルド様が考えて、判断されるしかないかと」


ゴルドは白く燃え尽きたように座る。

風が吹けば、サラサラと崩れてしまいそうだ。


「お、おかしい・・・転生者を呼んで、英雄が来れば、オレは『良きにはからえ』だけ言ってれば良いはずなのに・・・」


まぁ、そうはならんやろ、と一同は思ったが、とりあえず頑張ってくれるゴルドを全員で笑って見てあげる。


「さて、ゴルドさんはどれが重要だと思う?そこから決めていきましょう」


美月が代表して話を整理してくれる。


「うーん。ヴォルクたちを呼んだ時もそうだが、デジマは早く作った方がいいと思う。そんな予感がする」


「まぁ、住む人も増えたし、そこは継続して資金を投入してくれる方がありがたいわね。馬牧場も急ピッチで作っているし。まぁ、ヒロくんと獣人の皆さんがどんどん進めているから、かなり早いと思うわ」


相変わらずヒロのチート様様なのだが、木材や建材用の石と土を出すので、実はそんなに費用が掛かっていない。


「ヒロくんが元の世界の『ワイのクラフト』を思い出すよ~、って喜んでいたけど、本当、この領地の第一級秘匿事項よね、彼は」



バレたら、この前の傭兵との戦闘どころではない、世界を巻き込む戦争になるだろう。


「ワイノクラフト?まぁ、よく分からないが・・・デジマがそこまで大きく資金が要らないなら、三等分するか」


「ゴルド様、それは流石に安直すぎますわ。せっかくここに意見書や要望書があるのですから、一通り見て優先順位を決めましょう」


フィオが書類に目を通しつつ、ゴルドにも分かるように噛み砕く。


美月も同時に他の書類に目を通して、量子頭脳を使って客観的な考察を交えてゴルドに提案する。


リンゼは側でお茶を用意しつつ、屋敷の困っている点や、急務で必要なものについて助言する。



家令と町長とミハエルは、お邪魔しましたとそそくさと出て行くことにした。




「頼りになる奥方様たちだな」


ミハエルが執務室を出て、ふぅと息を吐き言う。


「「・・・え?」」


家令と町長が声を揃えて驚く。


「ち、違うのか?あれだけ心を許しているし、いつも一緒じゃないか」


「ミハエル様。まだゴルド様は婚約されてすらおりません」


家令がそう言うと、ミハエルは普通に驚く。


「まだ若いだろうが、あの歳の貴族には、少なくとも許嫁がいるはずでは?」


「まぁ、フィオーナが元々そうでしたが・・・あくまでも、貴族の妻ならまだしも、領主様の妻としては、家格がどうしても・・・」


町長が困ったように言う。

ミハエルはふむ、と考えてから、口を開いた。


「嫁探しもしなければならないな。ゴルド様の後継者がいないのは困る。だがすぐには無理だろうから、とりあえず子供だけでもつくってはくれないだろうか?」


「それならリンゼが・・」

「それならフィオーナが・・」



家令と町長が同時に喋る。

声が重なるが、双方が違う人物を推薦しているのが分かる。


「・・・アルセノスよ。己の娘をそんな無体にも差し出す必要はなかろう。ゴルド様が正式に成婚なされば、その子供は私生児。権力のしがらみなきメイドが母親として育てればよい」



「お言葉ですが、シュナイダー先生。ゴルド様のお子ですよ?私生児となっても、我らグレイシス家にて面倒を見ますとも。むしろ、グレイシス家とアイハンド家のより強固な繋がりにもなりますし、何だったら、新たな家を起こして、アイハンド家を支える家臣にしてもいいでしょう」



家令の名前が、これまたしれっと出ているが、気にせず2人は不敵に笑いながらも、目が笑っていない。


「腹黒小童が、ワシを超えられると思うてか?」


「先生、貴方より多くの薫風を頂戴しましたが、愛娘の幸せに関しては、私も本気にならざるを得ない」



2人の見えないバチバチの火花に、ミハエルはうっすら冷や汗を流しながらも、どっちも子を作ればいいのでは?と、身も蓋もないことを思っていた。





「よーし、柵完成!これで馬牧場出来たね!」


「「「よっしゃー!!」」」



獣人たちが拳を振り上げて、ヒロの完成の合図に雄叫びをあげる。


クローナもすっかり元気になり、尻尾をブンブン振って喜んでいる。


「いやぁ、あっという間だね。獣人のみんなって本当に力持ちだね」


「当たり前でさぁ!体が強くてなんぼですよオレ達は!」


「ヒロ様とゴッド様のためなら!いくらでも頑張りますよ!」


ヒロの影響のせいで、ゴルドではなくゴッド呼びになっているが、まぁもう良いだろう。


獣人たちはクローナを入れて10名。

獣人と一括りにしているが、狼のクローナに、兎、熊、獅子、カバ、ゴリラと、種族は微妙に違う。


まぁ、雑多に集められたため、そうなったのだが、特徴として、とにかくガタイがよく身体能力の強い者が集められていた。


リーダー格は兎の獣人である彼女だ。

名前をキャロットという。


ウサ耳に、人懐っこい可愛い顔をしているが、首から下はたくましい肉体をしている。

筋骨隆々で、おまけに2メートルの背丈なので、実はクローナだけが雌と思われていたが、彼女も女性である。



「次は何も作りますか?ヒロ様!」


声と顔は可愛く聞いて来るが、ガッチリした腕で重いハンマーを片手で軽々と担いでいる。


ギャップ萌えの要素が濃厚に凝縮されている彼女を前にしても、ヒロはなんて事のないように、次は干し草を入れるための倉庫を作ろうと言う。


「お馬さんは結構食べるらしいから、馬飼をしてくれるエルフさん達から依頼されているんだ。設計図はみっちゃんから降りてきているし、ちゃっちゃと作っちゃおっか!」


「「「おーー!!」」」



ヒロも若干、ハイになっている。

どんどん建物がさくさく建てられることに、興奮と達成感が気持ち良すぎて、止められなくなっている。


本来なら、早くて3日ほど掛かるだろうと思っていた干し草の倉庫を、結局今日中に建て切ってしまった。


翌日、オーバーワークであると美月に指摘されて、ヒロと獣人たちは無理やり休む羽目になる。


「暇っす~、何か仕事くださいよ~」


「体がウズウズする~!仕事、仕事したい~!」


「ダメだよ~。今日はお休みだから。あ、鍛錬でもする?」


クローナとキャロットが喚きながら、ヒロに縋り付く。

ヒロはそこで鍛錬を提案するが、ヴォルクがいいわけないだろとツッコミを入れて止めた。


ヒロの様子を見にきたゴルドが、仕事したいと求める獣人達を見る。


「いかんな。仕事したいなどと休みの日に言うなんて・・・ここはオレに任せろ!世の中には楽しくて仕方ないことがたくさんあるんだ!遊ぼうぜ!」


「ゴルド様、貴方様には仕事があります」


リンゼに引きづられて連れて行かれるゴルドは叫んでいた。


「なぜだああああああ!!!」



デジマは活気がついてきていた。


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