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第99話 首都侵攻9





ーーークローナに、過去の記憶はない。






正しくは、自分の出生の記憶がない。




何かに追われて、逃げていたのが最初の記憶。


その後、根無草の放浪を1人で続けて、奴隷に落ちて、ヒロに救われる。





クローナにとって、ようやく生きる自分の物語に色が付き始めたのが、このアイハンド領に来てからだった。






白と黒の、どこか不気味で寂しげな世界が、ようやく、楽しく彩り始めた。







(ーーーそれなのに、死ぬのか?ーーーアタイは?)





クローナの意識は、深い深層心理に落ちた。








覚えていない、記憶が掘り出される。





(ーーど、どこここ?ーーー)






クローナは見ていないので知らない。




ここは、ゴルド達が壊滅させた、エリュシールの研究所だ。




幼い、クローナは、ここで生まれた。




ーーーいや、造られたというべきか。




獣人、ではなく、人と狼の融合生物として、生み出された。




当時は転生で連れてこられた、スライムとケンタウロスがいた。







(お、思い、出した・・・)








「おい、967番」





研究員にそう呼ばれる。




(そうだ、アタイは、番号で呼ばれていた)




それを名前呼びにしたのが、クローナ。


967(クローナ)だ。






(んだよ・・・ケンタウロスのおっちゃん・・・スライムさん・・・何も言わず、帰っちゃってさ)





懐かしい。



それでいて、ホッとする。




あの地獄のような研究所を、彼らは抜け出せた。


数年越しになったが、故郷へ帰れた。






ふと、ここでクローナが思う。






(やばい・・・これって、あれかな?走馬灯?・・・死ぬ寸前に見るっていう・・・アタイ、死ぬのか?)




クローナがそう焦りる心を持つも、意識は何も変わらない。




ヒステリック魔女の攻撃をモロに受けて、もう体が無いのかもしれない。





ーーーあぁ、でも、ヒロが無事なら、別に良いかもなぁ。





クローナは割りかし、そんな考えで、取り乱すことはなかった。





(くそ、しかしエリュシールの奴らによって、アタイは生み出されて、そしてエリュシールの手先によって殺されたのか・・・なんかムカつく)





クローナのそんな考えは、風に流される砂のように、さらさらと流された。






意識が、薄れていく。




あぁ、終わりかな?ーーー




クローナの、そんな達観した感想が、同じく風に流されるように、さらさら飛んでいく。















ーーーー戻ってこい!!!!


















光が、音もなく爆発した。




クローナは、その光に見覚えがある。




光の柱が、クローナを包み込む。



「こ、これって・・・」




声が、戻ってきた。




意識が、鮮明になってきた。




生きねばと、気力が湧く。


殺されてたまるかと怒りが生まれる。


キャロットたち、仲間を悲しませたく無いと、後悔が渦巻く。


ヒロに会いたいと、恋心が叫びだす。





アタイは、ここで終わらないと、クローナが全身全霊で叫び、立ち上がる。






記憶の中の、ケンタウロスとスライムが、背中を押すように手を貸してくれる。

















「だぁぁぁぁああああああああ!!!」






クローナの叫びが、現実の戦場にこだまする。



敵兵は動きを止めて、驚く。


レジスタンス達は、魔法を受けて、なおも存在を残しているクローナに、同調するように雄叫びを上げる。



魔女は、そんなバカなと、口を開けて黙る。





ヒロは、涙を流して、クローナを抱きしめた。





「クローナ!クローナぁあ!」




「ヒロ!アタイは!大丈夫だぁ!」




体は、光に包まれている。




「うえ?な、なんでアタイ光っているの?」


「わ、わかんない・・・最強決定戦の時みたい?」


「まぁいいや!」





クローナが光を受け入れると、ふと輝きは消えた。




そこに、少し成長した感じのクローナがいた。




「あれ?お、大きくなってる?」



ヒロが驚いた顔でクローナを見る。

成長が、強制的にされたのか、20歳くらいのクローナになっている。





「うお!ほ、本当だ!ヒロ!胸も大きくなってる!キャロットにも負けないくらいだぞ!」


「うん、クローナ。今はそこは置いておこうか」



ヒロは涙を引っ込めて、顔を赤くした。






「キィぃええええ!!!!死ね死ね死ね!!!」





ヒステリック魔女は、空気も読まずに攻撃をしてくる。




物理的に消去されるその魔法を、ヒロとクローナに向けて放たれる。




クローナは、飛んでくる魔法に向かって、目を向け、手のひらをかざす。



何やら呪文めいた言葉を発すると、クローナの手から、魔女よりも質量の多い魔法が発生する。





「あ、あれ?クローナ、魔法使えたっけ?」



ヒロが疑問を口にするが、クローナの魔法の威力は、魔女の魔法も飲み込み、そのまま魔女も飲み込んだ。




そして、魔女は存在を無くした。





一部始終を見ていた敵兵は、最大戦力が呆気なく消された様子を見て、錯乱し、逃亡をしていく。



口々に、悲鳴と助命を在らん限りの声でぶちまけながら、恥も外聞もなく、怯え逃げる。




レジスタンス達は、もはや追うことすら不要だと悟り、立ち尽くす。




逃げた敵兵の背を見ながら、レジスタンス幹部はヒロとクローナに目線を向ける。





「・・・帰りましょう。もう、十分ですね?」





ヒロは頷く。



そして、クローナも同じように頷こうとしたが、ふと、意識が途切れる。



ヒロが抱き寄せる。




顔の血色も良く、呼吸が聞こえるので、問題はないようだ。



ヒロはホッとして、クローナをおんぶした。



「うん、帰ろう・・・攻めたフリは、これで十分だよね」





「うん、まぁ・・・フリって、何でしたっけ?」




レジスタンス幹部は、目を逸らしながら、自問自答するように、そうつぶやいた。






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