第96話 首都侵攻6
「うぉぉおおおおお!!!」
シルヴィが、雨のように降る矢を物ともせず、魔法剣による炎で単騎突っ込む。
そして、見事壁をよじ登り、敵兵を薙ぎ倒していった。
「もう、あの人だけいれば勝てるんじゃね?」
レジスタンスの1人がそう口にするが、シルヴィはハシゴを下ろしてレジスタンス達を呼ぶ。
「さぁ行くぞ!狙うは教皇の首だぁぁあ!!」
「え、ちょ、待ってください!フリですよね!首都攻めのフリですよね!?」
付き添いの騎士団員がシルヴィの言動に訂正するが、シルヴィは知らぬと言わんばかりに先へ先へと進む。
首都に侵攻するまさにレジスタンス達と、先頭を直走るシルヴィと騎士団員。
その目前に、1人の重騎士が、物々しい金属の甲冑に身を包み、仁王立ちしていた。
「やぁやぁ!我こそはエリュシール国教会騎士団所属!十戦士の1人!不動のエバンス!」
身の丈2.5メートルの、人間か?と思うほどデカい巨躯に、片手で持っているランスは、さらに長い3メートルであった。
「なっ!きょ!教会騎士団の!十戦士だとぅ!?」
レジスタンスの1人が、青い顔をして震え上がる。
「知っているのか?」
ゴルド家の騎士団員がレジスタンスに聞く。
「エリュシールの教皇が、自分の権力と金を唸るほど使って呼び寄せた、一人一人が一騎当千の強者達のことだ!その数!10名!」
「あぁ、だから十戦士なのか」
レジスタンスと騎士団員との間に温度差はあるが、目の前のエバンスとかいう重戦士は、確かに強そうである。
「さぁ!どこからでもかかってこぉぉぉい!!!」
ランスを豪快に振り回し、風を切りながら、その先端をシルヴィに向ける。
「どけぇぇええええええ!!!」
「ぶらっしゃぁぁああああ!!!」
だが、シルヴィが一瞬で鉄の甲冑ごと袈裟斬りにする。
エバンスの断末魔と、残った巨体は、シルヴィが邪魔だと言わんばかりに蹴り飛ばした。
そのまま走り続けるシルヴィの後ろに、レジスタンス達が続く。
「え?なんか一瞬でやられたけど?」
「い、いや、強い、はず、何だがなぁ・・・」
騎士団員が、予想と違う呆気なさに、レジスタンスへ疑問をぶつける。
だがレジスタンスが、答えを持っているわけがない。
困り顔でシルヴィについて行くしかなかった。
その後も、十戦士を名乗る腕利きの人物が2人目、3人目と現れるが、その全てをシルヴィはロクに話も聞かず、文字通りなぎ倒して進んでいく。
「ちょ!まて!まてぇぇい!ホント!待ってよ!」
4人目となる、帽子を被った背の小さい女性が現れた。
「なんだ!やるのか!?子供は引っ込んでろ!」
「子供じゃねぇわ!ドワーフで小さいけど大人じゃボケェ!」
「じゃあ!斬る!」
「待て待て待て待って!!」
シルヴィとコントを繰り広げる十戦士の1人は、涙と汗をかきながら、片手を必死に前にブンブン振りながらシルヴィに非難の声を上げる。
「私たちこの国最強の戦士!そんなポンポンあっさりやられる一兵士みたいな扱いはおかしい!おかしいわよ!」
「知らぬ!弱いお前らが悪い!」
シルヴィが剣を持ってジリジリ詰め寄る。
ドワーフの女はガタガタ震えながら、チラチラ後ろを見る。
「ん?」
「ドンっ!」
すると、シルヴィが気付くと同時に、シルヴィの頭部に衝撃が走る。
狙撃銃によるヘッドショットだ。
「よっしゃぁあああああ!!!」
ドワーフの女が立ち上がってガッツポーズをする。
遠くにスナイパーがいたようだ。
さっきまでの姿と打って変わって、ドワーフ女は喜びの踊りを披露してバカにした笑いをする。
「へっ!ザマァみやがれ!これが十戦士の力よ!ふははははははははは!!」
「し!シルヴィ殿!」
仁王立ちで頭から噴水のように血を噴き出すシルヴィ。
レジスタンスが絶望の顔をする。
騎士団員は引いている顔をする。
「てめぇ!私の顔に傷がついたらどうするんだよぉおおおお!!!」
「うぎゃぁああああああ!!!」
ドワーフの女をタコ殴りにする。
そして、そいつが武器として持っていた斧を奪い取ると、急に遠くへ放り投げた。
レジスタンス達がなぜ?と頭に疑問を浮かべていると、斧は遥か遠くへ飛んでいった。
よもや、その遠い先で、隠れていたスナイパーに、その斧がスナイプしたとは、まだ誰も気づいていない。
十戦士の、超怪力のドワーフ、カテリーナと、千里望鏡の狙撃手、サウザンドが相次いでやられて、あっさり十戦士は半分になった。
「もう!治るとはいえ、女の顔に狙撃とか、まじセンスない!」
「あー、はい。それはセンスないですね」
シルヴィの怒りは更に増大していた。
もはや騎士団員はイエスマンとして、何も考えず返事している。
レジスタンス達は、なぜシルヴィがピンピンしているのか、理由は分からないが、まぁそういうものだろうと、考えるのをやめた。
シルヴィ率いるレジスタンス達は、敵兵達を押し込み、侵攻を進める。
もはや、フリとはなんだ?という疑問は、誰も口にできない。
「よし!時間だから帰るか!」
シルヴィは散々暴れ回った後、きっちり時間だからと撤収する事にした。
「なぁ・・・十戦士どこいった?」
「最後、残った5人で、文字通り束になってシルヴィ殿にかかっていったが、全員一撃を受けて、その後どうなったかわからん」
レジスタンス達は、シルヴィの強さに震える。
「ほ、他の者も、シルヴィ殿並に強いのか?」
「あー、いや、まぁ、シルヴィ殿は、アイハンド領内の最強決定戦、優勝者ですから」
騎士団員が、フォローになるのかならないのか、分からないがそういってお茶を濁す。
レジスタンス達の間で噂は広まった。
最強の騎士シルヴィの、顔は狙ってはいけないと。




