第三章『黒曜色のエロ狐』:-005-
-005-
一瞬の出来事だった。いや、一瞬なのかは目を瞑っていたので定かではないのだが、目を開けるともうそこに青い提灯と祠はなかったのだ。勿論、狐も居ない。床に描かれている洞窟と同じ転送陣は未だに光り輝いている。
周りには壁があるが、洞窟のようなゴツゴツとした岩壁ではなく、ブロックが綺麗に敷き詰められたキチンとした壁だ。
「城内でしょうか……?」
「だと思うけれど……」
しかし、周りを見るがドアと言えるようなものは何処にも見当たらない。家具もなく、四角い部屋に転送陣が隔離されている部屋だ。幸い空気だけは通っている用で、息は出来る。ひょっとしてここは隠し部屋なのだろうか。どちらの転送陣も人里離れた場所に位置しているため、敵が攻めてきた時に日本への避難用に転送陣だけの部屋を作った可能性は十分あり得る。その場合、何処かに隠し扉がっても良いのだが……。一番下から手が届くブロックを押してみるがどれもスイッチのようには押し込めない。ありそうだと思ったんだけなぁ。
「誰かいませんかー! 魔王様のお帰りですよー!」
犬耳娘が壁の外に向けて叫ぶが返事は返って来ない。天井を触ってみようも、ジャンプしても届きはしない。このままココに閉じ込められたままってのもマズい。
「この壁、壊せないかな?」
「私の力では無理ですね……」
「いや、オレの力で」
今さっき魔法が使えたんだから、天井やら周りの壁やらを壊してしまえるはずだ。
「主は転送陣起動の詠唱しか知らないではないですか……」
「あっ、そっか……うおっ!?」
万事休すか、そう思った矢先に、揺れと共に大きな地響きが始まった。それに驚いた犬耳娘がオレに飛び付き、その揺れとタメを張れるくらい震えてきた。地震を怖がるのは犬の性なのだろうか。きっと強風や落雷にも弱いのかも知れない。
「ふぇえ……私はあるじと死ねて本望ですぅうう……」
「まてまて、諦めてんじゃねぇよ!従者ってのは主人が諦めるまで諦めちゃダメだろ!?」
そう言う決まりがあるかどうかは知らない(思いついた事を言っただけだ)が、頼りない従者だ。それに壁が迫って来ていると言うのならまだ分かるが、揺れているだけでまだ何も起きてはいない。それでも彼女は聞かず、顔を真っ青にしてしがみ付いて離さない。だが胸の突起が当たって少しいい気分なので許してやろう。少しだけだが。
この地響きは、天井が中心から半分に開く振動だった。どうやら本当に隠し部屋だったらしい。しかし、まさか地面の下の隠し部屋とは……足音の違いで案外簡単にバレそうな気がするのだが。まぁ、そこはきっと魔法で何とかするのだろう。さっき魔法を使ったばかりのオレが何を知った気になっているのだろうか。
天井が開き切ると今度は目の前の地面が階段を一段一段作るようにせり上がる。自力で壁を這い上がるのかと思ったが中々の親切設計だ。
「ふえぇ……」
犬耳娘がいつの間にかオレの脚から離れて端っこで頭を抱えながら震えている。尻がふるふると震えていて可愛い。尻尾はしたに垂れ下がり動かない。なんだか無性にお尻を叩きたくなったので、勢い良くペチンッと叩く。
「ひゃうぅ!?」
「いつまで震えてんだ。もう止まったから上にあがるぞ」
「あれ?本当だ……」
お尻を叩いた感触が良すぎて手にその時の感触が残ってしまっている。何かに目覚めてしまいそうだ。今度本格的にお仕置きしてやろうかと思ったが、罪悪感が時間差でじわじわと心の中で溜まってきた。未だにおどおどとしている彼女の手を引いて階段を上ると、そこにはあの洞窟と同じく、初めて見る光景があった。
「よくぞお戻りになられました、魔王よ」
「「「「「お帰りなさいませ、魔王様」」」」」
山羊のツノを生やした執事と山羊の骨を被ったメイド服の少女達がオレを出迎えてくれた。まぁ、こんな光景を見たことがある奴なんて居るはずがないだろう。
-あとがき-
凄いストーリーや設定を思いついたぞ!ってなった後、誰かが市販されている小説の中や、アニメにすでにその設定を使われていると、『私はこの偉大な作家と同じ発想が出来るんだ!』嬉しくなりませんか?




