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第47話: ステラとの再会――エリアスの「小さな守護対象」

カエン帝国の太陽が、氷に閉ざされた大神殿の向こう側に沈んでいく。

 かつては灼熱の象徴だったその光も、今はジークフリートが張り巡らせた絶対零度の結界を通し、どこか頼りなげな薄紅色の輝きに成り果てていた。


「……はぁ。パパの魔力は相変わらず重いな。ママを独り占めしたいのはわかるけど、大陸一つを冷蔵庫にするなんて、本当に大人気ない」


 十五歳になったエリアス・フォン・アイスベルクは、氷のテラスから眼下の街を見下ろし、深いため息をついた。

 湯上がりのママを独占して離さない父親から逃れるように、彼は一人、宵闇の散歩へと繰り出したのだ。

 その背中には、ジークフリートがかつて贈った魔剣ではなく、自らの「凍らない焔」で鍛え上げた黄金の細剣が下げられている。


「さて……少しはカエンの連中もおとなしくなったかな」


 エリアスがパレスの外へと足を踏み出すと、周囲の空気が一変した。

 ジークフリートが維持する「春の領域」を抜け、まだ熱気の残る市街地へ。かつて彼が「喰らった」火神アグニの余波か、この大陸の魔力はエリアスの肌に心地よく馴染んだ。


 ふと、路地裏から怒号と、何かが砕ける音が聞こえてきた。


「逃げるなと言っているだろう! お前のような『冷たい女』が、我が帝国の巫女を名乗るなど片腹痛い!」

「離してください……! 私は、ただ聖女様に……リリアーナ様に恩返しがしたいだけです……!」


 エリアスの足が止まる。

 その声には、聞き覚えがあった。

 十年前、絶望の氷河期の中で、自らの焔で溶かしたあの「冷え切った少女」の声。


「おい。そこで何をしてるんだ?」


 エリアスが路地裏に踏み込むと、そこでは数人のカエン騎士の残党が、一人の少女を囲んでいた。

 少女は泥に汚れ、服もボロボロだったが、その瞳だけは誇り高く、かつての「王女」としての輝きを失っていない。


「なんだ、ガキが……。お前、アイスベルクの回し者か?」

「ガキか。……パパに聞かせたら、お前たち、一瞬で分子レベルまで分解されるよ」


 エリアスが冷淡に言い放ち、指先をパチンと鳴らす。

 瞬間、カエン騎士たちが構えていた炎の槍が、まるでエリアスの指先に吸い寄せられるように折れ、消滅した。


「なっ……魔力を吸い取られた!? この子供、もしや……『神を喰らった皇太子』か!」


「ご名答。……でも、僕、今はお腹いっぱいなんだ。だから、お前たちは食べない。ただ、凍らせるだけ」


 エリアスが地を蹴った。

 彼の動きは、ジークフリートのような絶対的な「静」ではない。それは、爆発的な熱量を内包した「動」の氷。

 一閃。

 黄金の炎を纏った氷の軌跡が路地裏を駆け抜け、騎士たちは叫び声を上げる暇もなく、その場で氷像へと変えられた。それも、ただの氷ではない。内側から魔力を焼き尽くし、二度と解けることのない「拒絶の檻」だ。


「……ふぅ。ママの教育に悪いから、あんまり暴れたくなかったんだけど」


 エリアスは剣を納めると、地面に座り込んでいた少女に手を差し伸べた。

 少女――セレーネ、今はステラと呼ばれている彼女は、信じられないものを見るようにエリアスを見上げていた。


「……エリアス、様……?」

「……お。覚えててくれたんだ、セレーネ」

「ステラ、です……。今は、そう名乗っています。……あの、本当にエリアス様なのですか? あんなに小さかったのに、こんなに……」


 ステラの視線が、エリアスの高い背丈と、パパ譲りの整った顔立ちをなぞる。

 彼女の頬が、カエン大陸の熱気とは別の理由で赤く染まった。


「……まあ、十年前とは色々変わるよ。パパの独占欲以外はね」


 エリアスは、ステラの汚れを払うように彼女の細い肩を引き寄せた。

 その瞬間。

 エリアスの胸の奥で、今まで感じたことのない、けれど遺伝子の奥底に刻まれていた「何か」が、火を噴くように疼いた。


 ――このひとを、誰にも触れさせたくない。

 ――僕が救ったこの命は、僕だけのものだ。


 それは、ジークフリートがリリアーナに対して抱いているものと、全く同じ色の「執着」だった。


「ステラ。……君、これからどうするつもりだったの?」

「私は……かつて国を救ってくださった皇后様に、侍女として仕えたいと思って……」

「そう。……なら、僕が許可する。でも、一つだけ条件があるよ」


 エリアスはステラの顎をクイと持ち上げ、ジークフリートそっくりの、けれどより若く野心に満ちた瞳で彼女を射抜いた。


「……ママの前に、僕の侍女になってもらう。……いいよね?」


「え……? あ、はい……。喜んで……」


 ステラが小さく頷くと、エリアスは満足げに、けれど決して離さないという強い力で彼女の腕を引いた。

 

 それは、新しい「独占欲」が芽生えた瞬間。

 皇帝ジークフリートが、自分の息子という最大のライバルを、ついに「男」として認識せざるを得なくなる日の、始まりでもあった。

第3部、本格始動です!

15歳になったエリアス様、パパに負けず劣らずの「強引さ」と「執着」を見せ始めましたわね。

あの時救った少女との再会……これは、アイスベルク家の『家族会議(という名の修羅場)』が荒れる予感しかしません!


* 「エリアス君、パパそっくりの顎クイ……! 遺伝子が強すぎる!」

* 「ステラちゃん、こんなにカッコよくなった王子様に救われたら、もう逃げられませんわね」

* 「ジークフリート様、息子が女を連れて帰ってきたらどんな顔をするのかしら(笑)」


と感じてくださった方は、ぜひ【ブックマーク】の継続、そして第3部への熱い【評価】をお願いします!

皆様の応援が、エリアス様の「初恋」をより過激に(?)加速させます。


次回、第48話「息子が拾ってきたのは……!? 皇帝パパの複雑な心境」

霧島 結衣でした。

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