表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
46/59

第46話:湯上がりの誘惑――皇帝の理性が溶ける夜

カエン帝国の熱帯夜を、ジークフリートの魔力が完璧に遮断していた。

 神殿の奥に建てられた仮初めの氷の離宮。月光が透過する白銀の壁は、まるで深海の中にいるような、静謐で冷ややかな青を湛えている。


 だが、その室内の温度は、ジークフリートの自制心と共に緩やかに上昇していた。


「……旦那様。そんなにじっと見つめられては、恥ずかしいですわ」


 湯上がり。

 リリアーナは、薄絹の寝衣一枚に身を包み、濡れた蜂蜜色の髪を背に流していた。

 温泉の効能か、彼女の白い肌は仄かに桜色に上気し、そこから立ち上る「世界の熱源」としての柔らかな熱が、部屋の冷気と混ざり合って甘い霧を作っている。


「……無理な相談だ。……今の君を他の男が見れば、私はその場でこの大陸全土を氷の墓標に変えてしまうだろう」


 ジークフリートは、リリアーナを寝台の縁に座らせ、自ら柔らかな布を手に取った。

 皇帝の地位にありながら、彼はリリアーナの髪を乾かすというこの「儀式」だけは、決して誰にも譲ろうとしない。


 細い指先が、彼女のうなじに触れる。

 ひやりとした彼の指と、彼女の肌の熱。その温度差が、かえって互いの存在を強く意識させた。


「……あ、旦那様……。指が、少し震えていますわ?」


「……。……君が悪いのだ。……温泉で清められ、より一層輝きを増した君を前にして、平然としていられるほど、私は聖人ではない」


 ジークフリートは布を置き、リリアーナの背後からその細い腰を力強く抱き寄せた。

 彼の低い声が、彼女の耳朶を震わせる。


「……エリアスが火神を喰らい、大人しく眠りについた。……この離宮の周囲一キロには、私の魔力の網を張った。……今、この世界には、私と君、二人しかいないも同然だ」


「……旦那様。……本当に、独占欲が強すぎます」


「……足りないくらいだ。……君の吐息一つ、視線の一つまで、私のものだ。……リリアーナ、こちらを向け。……君の瞳に、私以外の絶望や希望を映すな」


 強引に顎を持ち上げられ、リリアーナの視界はジークフリートの灰青色の瞳で埋め尽くされる。

 そこにあるのは、皇帝としての威厳ではなく、愛する女を渇望する一人の男の、剥き出しの情欲だった。


 重なる唇。

 リリアーナの甘い熱がジークフリートの体内に流れ込み、彼の内に残っていたわずかな理性を、跡形もなく溶かしていく。


「……っ、リリアーナ……。……今夜は、君を甘やかすつもりはない。……私の氷が溶け切るまで、その熱を私にだけ注ぎ続けろ」


 氷の壁の向こう側で、カエン大陸の夜風が虚しく吹き抜ける。

 だが、この絶対聖域の中では、世界で最も熱い、皇帝と皇后だけの密やかな「夜の法典」が刻まれ続けていた。

第46話、いかがでしたでしょうか。

「甘やかすつもりはない」と言いつつ、結局はリリアーナ様に翻弄されているジークフリート様……。

この「絶対的な力を持つ男が、一人の女にだけ屈する」という構図こそ、なろうの美学ですわね!


* 「閣下、独占欲が全開すぎて心臓がもたない……!」

* 「エリアス君が爆睡してるのをいいことに、やりたい放題なパパが好き」

* 「『世界には私と君しかいない』……これ、最大級の殺し文句ですね!」


と感じてくださった方は、ぜひ【ブックマーク】や【評価】をいただけますと、

霧島 結衣、次なる「激甘回」への執筆意欲が爆発いたします!


次回、第47話「ステラとの再会――エリアスの『小さな守護対象』」

霧島 結衣でした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ