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第42話: 宣戦布告への「返礼」――海を氷の道に変えて

アイスベルク帝国の最北端、外海へと続く巨大な軍港。

 そこには、カエン帝国からの使者が乗ってきた、赤く燃え盛る「火竜の船」が停泊していた。

 使者であるカグツチの配下たちは、未だに傲慢な笑みを浮かべ、帝国の将軍たちを挑発している。


「どうした、氷の国の臆病者ども。我が『カエン』の熱に触れるのが怖いか? 船一隻出すのにも震えているようでは、リリアーナ様を救うことなどできんぞ」


 その嘲笑を、凍てつくような靴音が沈めた。


 ジークフリートが、リリアーナを隣に、そしてエリアスを従えて埠頭に現れたのだ。

 彼の背後には、完全に武装した帝国騎士団が、一万の軍勢となって整列している。


「……船だと? そんな脆弱な箱で海を渡るつもりはない」


 ジークフリートが冷淡に言い放つ。


「何を馬鹿な……。ここからカエン大陸までは、魔導船でも三日はかかる。泳いでくるとでも言うのか?」


「……必要ない。……リリアーナ、少しだけ君の熱を借りるぞ」


 ジークフリートがリリアーナの手を握る。

 瞬間、彼女の「太陽の熱」がジークフリートの「絶対零度」の核となり、圧縮された魔力が埠頭から海面へと放たれた。


 パキィィィィィィィン!!


 耳を裂くような、巨大な結晶が生まれる音が響き渡る。

 水平線の彼方まで、波打ち、荒れ狂っていた外海が、一瞬にして純白の「氷の平原」へと姿を変えた。

 しかもそれは、ただの氷ではない。一万の軍勢が同時に馬を駆ってもびくともしない、鉄よりも硬いアイスベルクの結晶だ。


「……!? 海を……外海すべてを凍らせたというのか!? この季節に、これほどの範囲を……ッ!」


 カエンの使者たちが腰を抜かし、真っ青な顔で後ずさる。


「パパ。……あの燃える船、邪魔だよ。……僕が片付けていい?」


 エリアスが楽しげに指を鳴らす。

 彼の指先から放たれた『凍らない焔』は、火竜の船を焼くのではなく、その「火の魔力」だけを喰らい尽くし、ただの木屑へと変えてしまった。

 魔力を失った船は、ジークフリートが作った氷の中に無様に閉じ込められ、沈むことさえ許されない。


「……返礼だ。……お前たちは、この道を歩いて帰るがいい。……死にたくなければ、我が軍の足跡を追い越さぬようにな」


 ジークフリートは、怯える使者たちを一瞥もせず、リリアーナの腰を抱き寄せた。


「……さあ、リリアーナ。……散歩の時間だ。……海の上に、君の好きな冬薔薇の道を作らせよう。……カエン大陸に着く頃には、彼らも理解するだろう。……誰を敵に回したのかをな」


 皇帝の進撃。

 一万の騎士たちが、凍てついた海の上を整然と歩み始める。

 

 かつて世界を隔てた氷は、いまや愛する妻の道を切り拓くための、輝かしい「覇道」となったのだ。

海そのものを「道」に変えてしまうジークフリート様、いかがでしたでしょうか。

「船で行くのは時間がかかるから」という理由が、もはや神の視点ですわね。

そして、エリアス様の「火の魔力を喰らう」能力……これ、カエン帝国の天敵になること間違いなしですわ。


* 「閣下、海を凍らせて歩いていくなんて、スケールが違いすぎる!」

* 「エリアス君がパパのドSなところをしっかり受け継いでて微笑ましいわ(笑)」

* 「使者たちの絶望顔が目に浮かぶ……ざまぁの予感が止まらない!」


と感じてくださった方は、ぜひ【ブックマーク】の継続、そして第3部への熱い【応援】をお願いします!


次回、第43話「灼熱の大地への第一歩――溶けない雪を降らせましょう」

霧島 結衣でした。

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