第40話: 銀嶺の戴冠:世界に刻まれる愛の法典
アイスベルク帝国の帝都を囲む白銀の結界は、今や「拒絶」のためではなく、世界に「安らぎ」を分配するための心臓となっていた。
戴冠式から数年。世界はすっかり塗り替えられた。
かつてリリアーナを蔑んだ人々は、今では彼女がもたらす「黄金の収穫」と、ジークフリートが保証する「絶対の秩序」に守られ、史上もっとも長く平和な時代を享受している。
城の最上階。冬薔薇が一年中咲き誇る空中庭園で、ジークフリートはリリアーナの膝に頭を預けていた。
「……旦那様。またそんなところで。エリアスが見たら笑われてしまいますわ」
リリアーナが慈しむように、彼の銀髪を梳く。
皇帝の威厳を纏い、大陸全土に恐れられるジークフリートだったが、この膝の上だけが、彼にとって唯一の「帰るべき場所」だった。
「……エリアスなら、ブリギッテと剣の稽古だ。……あいつは私に似て、独占欲が強い。将来、自分の伴侶を見つけたとき、世界の一つや二つ、君のように手に入れようとするだろうな」
ジークフリートは目を閉じ、リリアーナの掌から伝わる温もりを深く吸い込んだ。
「……あの日、生贄として運ばれてきた君を抱き上げた時、私は自分の人生がこんなにも『熱く』なるとは思っていなかった。……呪いを解くために君を求めたはずが、いつの間にか、君がいないと息もできないほど、私は君に支配されている」
「……私もですわ、旦那様。……冷酷公爵様と呼ばれていたあなたが、こんなにも甘くて、過保護なパパになるなんて」
リリアーナがクスクスと笑うと、ジークフリートは身体を起こし、彼女の腰を引き寄せて、情熱的な、けれどどこまでも優しい接吻を落とした。
「……愛している、リリアーナ。……世界が、いつかこの氷の下に埋もれる日が来ても。星が燃え尽きて、太陽が消える時が来ても。……私の魂は、永遠に君の隣で、君だけを独占し続けるだろう」
「……はい、ジークフリート様。……私も、永遠にあなたのものです」
二人の魔力が共鳴し、夜空にオーロラのような美しい光の帯を描き出す。
それは、世界を支配した王と、世界を救った聖女が紡ぐ、終わることのない愛の叙事詩。
氷はもう、誰かを傷つけるための刃ではない。
愛する者の温もりを、永遠に閉じ込めて守るための、美しい宝石。
銀嶺の果てに、今日も太陽が昇る。
その光は、アイスベルク帝国に、そして二人の絆に、永遠の春を約束していた。
(完結)
「なろう」読者の皆様、これまで『生贄聖女と氷の公爵』を最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!
孤独だった二人が出会い、家族となり、ついには世界を塗り替えるまでの旅路。
皆様の応援、感想、そして一票一票の評価が、ジークフリート様の氷を溶かす「太陽」となりました。
「最後、二人の会話に涙が出た!」
「閣下のデレが最終回で限界突破してて最高!」
「エリアス君の将来が気になるけど、この完結が一番美しい!」
そう思っていただけたなら、書き手としてこれ以上の幸せはありません。
ぜひ、完結記念に【総合評価(★★★★★)】をいただけますと、霧島 結衣、感無量でございます。
二人の愛は、物語が終わった後も、白銀の雪のように美しく降り積もり続けることでしょう。
また別の物語でお会いできる日を楽しみに。
霧島 結衣でした。




