表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
29/70

第29話: 二つの魔力が描く、絶対防御の聖域(エリュシオン)

「……報告します。中央大聖堂にて『全人類守護宣言』が採択されました。……リリアーナ様を『終焉を呼ぶ魔女』、若君を『災厄の芽』とし、大陸全国家による共同討伐軍が結成される見込みです」


 ブリギッテの声が、かつてないほど沈んでいた。

 世界を敵に回す。それは、このアイスベルク公爵領が地図から消えることを意味していた。


 だが、その報告を聞いたジークフリート様は、リリアーナの膝の上で眠るエリアスの柔らかな頬をつつきながら、鼻で笑った。


「全人類、だと? ……大きく出たな。リリアーナの笑顔一つ守れない連中が、人類を語るとは滑稽だ」


「旦那様……。本当に、よろしいのですか? 私一人のために、あなたが築き上げてきたすべてを……」


 不安に震えるリリアーナの手を、ジークフリート様は力強く、熱く握りしめた。


「……リリアーナ。君がいない世界など、私にとってはただの氷の塊に過ぎない。君が笑い、エリアスが健やかに育つ場所。そこだけが、私の守るべき『世界』だ」


 ジークフリート様は立ち上がると、リリアーナを背後から包み込むように抱き上げた。


「……さあ、始めよう。リリアーナ、君の熱を私に預けてくれ。……お節介な世界をシャットアウトする、最高の『カーテン』を引く時間だ」


 二人は城の最上階、天を衝くような尖塔のバルコニーに立った。

 眼下に広がるのは、白銀の公爵領。


 ジークフリート様がリリアーナの手に自分の手を重ね、魔力を解放する。

 絶対零度の蒼い魔力と、すべてを溶かす黄金の焔。

 相反する二つの力が混ざり合い、美しい白銀の旋律となって空へと昇っていく。


「……我がこおりよ、彼女を守る壁となれ。……彼女のほむらよ、私を照らす核となれ!」


 ドォォォォォォォン!!


 公爵領の境界線に沿って、空を裂くような巨大な光の壁が突き立った。

 ただの氷ではない。内側からは春の陽だまりのように温かく、外側からは触れるものすべてを瞬時に分解し凍結させる、絶対不可侵の聖域『エリュシオン』。


 王国の国境を越え、襲いかかろうとしていた討伐軍の先遣隊は、その壁の威容を前にして、ただ立ち尽くすことしかできなかった。

 彼らの剣が、魔法が、その壁に触れた瞬間に光の粒子となって霧散していく。


「……これでいい。……これでもう、誰も君たちを傷つけることはできない」


 結界を完成させたジークフリート様は、ひどく穏やかな、そして狂気的なまでに澄んだ笑顔でリリアーナを見つめた。


「……この壁の内側は、永遠に君たちのための春だ。……外の世界で何が起ころうと、誰が死のうと、私たちには関係のないこと」


「旦那様……」


「……さあ、リリアーナ。……エリアスが起きたようだ。……今日は彼に、この平和な庭の冬薔薇を見せてあげよう」


 世界を拒絶し、最愛の二人と共に閉じこもることを選んだ氷の王。

 それは人類に対する最大の「ざまぁ」であり、同時に、一人の男が辿り着いた究極の溺愛の形だった。


 エリュシオン――神話に語られる楽園は、

 今、この凍てついた北の大地に、二人だけの力で現実のものとなった。

世界から完全に隔離された「絶対聖域」の完成、いかがでしたでしょうか。

「敵が攻めてくるなら世界ごとシャットアウト」という、閣下らしい力技。

これぞ究極の引きこもり……いえ、究極の守護ですわね。


「閣下の『世界なんて知ったことか』という割り切りに痺れる!」

「二人の合体魔法が美しすぎて、もはや神話のレベル……」

と感じてくださった方は、ぜひ【評価】や【ブックマーク】をお願いいたします。

皆様のブックマークが、エリュシオンの結界をさらに強固にする魔力となります!


次回、第30話(第2部・第1章 完結)「宝物エチュードたちの微睡み」

聖域の中での、静かで、甘すぎて、どこまでも幸せな三人の時間をお届けします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ