↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ニセモノをホンモノにしたくて  作者: なるなるなるなる
第一章 孤高の監獄
8/13

第七話 「光と影」

 フィアに追い付くため、全力で走った。

 あまり速くなかった。


 フィアが男を切り刻んでいるのを見たが、やはり人が切られているところは胸糞悪い。

 どんな悪人であろうと中身は赤色なのだ。


「フィアさん……!」


 俺は男の遺体を見た。

 見てしまった。

 ハッキリ言うと気持ち悪い。


 自分が切られて出た血はまるで何も感じなかったが、他人がズタズタに裂かれている姿は見るに耐えない。

 喉元に迫り来る胃液。

 口元を押さえ、なんとかあるべき場所へ戻した。


「アビスくん。戻ろうか」


 藍色の剣を鞘に収め、涼しげな表情を作りながら男から背を向けるフィア。

 それに俺は下を向いたままコクンと首を動かした。


 フィアは足早に来た道を辿り、それに俺も付いて行くが、歩きでは追いつけないようなスピードだ。

 何が彼女をそうさせるのか。

 現実世界とは異なり、人を殺め、殺されるリスクがあるこの世界では、人を手にかけても何も思わないものだと思っていた。

 けれど命を奪っておいて何も思わない人はこっちの世界でもいないのかもしれない。


「アビスくん」

「はいっ!」


 急に動きを止めたフィアに驚き、見上げるといつの間にか騎士団に着いていたらしい。


「アイゼン団長に報告しに行くよ」


 唇を震わせ、細めかけるような双眸。

 嘔吐感を抑えるので必死だったが、フィアの口端を揃えるような表情は負い目を感じているように見えるし、アイゼン団長への報告に迷っているようにも見える。

 この表情には身に覚えがあった。


 俺が美月先輩を問い詰めた時、驚いたような表情で俺と蓮の会話を理解していなかったと述べた。

 一瞬苛立ったが、冷静に説明不足だったかもしれないと思ったような。

 そんな表情にフィアの顔は似ていた。


 自分で自分の顔を見たわけではない。

 けれど既視感があった。


 ごめん、フィア。

 あなたにかけられる言葉は一つも思い付かない。



---




 アイゼン団長は依然として起き上がれないらしく、えぐられた腹部は包帯で覆われている。

 団長だからと言って最強というわけではないらしい。

 もしくは、団長より男が強かったのか。


「あ、アイゼン団長、大丈夫ですか?」

「かなり痛むが、業務には問題ない」


 フィアもアイゼンとの対面には慣れないらしい。

 無様にも大怪我をして、弱々しいこの状態を見てもフィアの堅苦しさは消えない。


「何の用だ」

「エドガー・ヴィンクロースの死亡を確認しました。エドガーはボクが殺しました」

「そうか。なぜ殺した?」


 アイゼンは何か悟ったように目を瞑り、問い質す。

 フィアが気を狂わせて殺したとでも思っているのだろうか。


「彼は第三騎士団との内通者でした」

「第三騎士団か。そうか、そういうことか」

「表面上とは言え、騎士団の仲間を殺しました。ボクの独断で殺したんです」

「殺した……かぁ」

「そうです。ボクが殺しました」


 フィアの言葉を反芻するアイゼン。

 殺害報告を繰り返すフィアを怪訝そうに見つめるアイゼン団長は言葉を探すように黙り込んだ。


「ところでアイゼンさんは誰に傷を負わされたのですか?あの男ですか?エドガーって言う」


 あまり口を挟んでいい立場ではないだろうが、フィアの負い目の感じ方は異常だ。

 フィアの気持ちの整理を付ける時間を作るというのも理由だが、自分の中で曖昧になっている情報を整理したい。

 恐らく男がやったのだろうが、確定的な証拠も証言も存在しないが故、聞いて損はないだろう。


「俺のことはいい。それよりお前は本当に、ウサギではないのだろうな」


 アイゼンは「本当に」の部分を強調し改めて確認する。


「僕はウサギじゃないです。あなた達が探し求めるウサギのことについて知りたいのですが」

「それは無理だ。お前がウサギではないのなら情報を渡すことになるだろう」


 謎の極悪人エドガーを追いかけた先、街の噴水広場で人々が視線を寄せていたのはフィアの方だった。

 大量殺人をしたかもしれない白髪ではなくフィアだ。

 曖昧な情報しかなくさらには、一般人には情報が漏れないように徹底しているため、捜査も進まず、白髪差別が起きているのかもしれない。

 白髪の扱いは改善して欲しい。


「アビスと言ったか。アビスには酷いことをしてしまったようだな。フィアには白い頭を見つけたら殺してもいいと教えてある。すまない。俺の責任だ」

「それは違います!」


 アイゼンの謝罪に割って入ったのはフィアだった。


「アビスくんが苦しむことになったのはボクの責任だ。ごめんよアビスくん」


 フィアは頭を下げた。

 誠心誠意の謝罪だ。

 俺は怒ってないし、憎んでもいない。

 むしろ感謝していると言っていい程、フィアにはこの一件でお世話になっているし、フィアがいなければ詰んでいただろう。


「フィアさん。俺は大丈夫です」


 というかアイゼンが変なこと吹き込んだのかよ。


「アイゼンさん、これから僕はどうしたらいいのでしょうか」

「お前は……そうだな、しばらく第八騎士団に寝泊まりすればいい」

「いや、それは……」


 第八騎士団に泊まるということは、藍色髪の化け物と感じの悪いその兄弟とも会うということだ。

 それは避けたいところ。


「あの、でも騎士団はみんな僕のことを殺したいんですよね?」

「あぁそのことか。騎士団にはアビスを殺させないように指示してある。安心しろ」

「わ、分かりました」


 不安でしかないが、他に道はないだろう。


「フィア、お前はなんで騎士団に来たんだ?」


 フィアの表情を確認すると曇っていた。

 あの明るいフィアには似合わない表情で俯き、目に見えて後悔していた。


「えぇと、ウサギを殺すためです」

「人を殺すことを目標にしてるやつが一つ命を奪ったぐらいで狼狽えるな。なんだ騎士団辞めるか?」

「辞めません」


 フィアは即答し、アイゼンとようやく目を合わせる。


「人は一人では輝けない。出会いと別れと、自分の意思が重なった時、人は変化を得る。エドガーを殺されなければならなかったのは気の毒だが、我々騎士団は前を向かなければならない。お前はいくらでも後悔するといい。お前の人生はまだ長いからな」


 影は光がなければ生まれず、また逆も然り。

 一人暗闇でモニターの光だけが灯りだったあの部屋では、俺の体は影に飲まれていた。

 このゲームの意味を理解した気がする。

 俺には話せる人、見栄を張れるような相手、そして憧憬にできる存在が欠けていたのだろう。

 彼女の前だけは嘘を付きたくない。


 ニセモノをホンモノにするために努力しなければ──。


「まぁ、後悔(ケツ)は自分で拭いてもらうがな。遺体はどうしたんだ?」

「あ、えぇ〜と〜」

「まさかお前、街の真ん中に置いてきたのではないだろな?」

「は、はい?」


 フィアの失態にアイゼンは呆れ、長い溜め息とともに額に手を添え首を左右へ振る。


「どこに遺体がある?」

「噴水の近く……」

「……」


 アイゼンは呆れ果て言葉を失った。

 そこで俺はようやく事の重大さを理解した。

 街に遺体があれば、どれだけの人が警戒するのか計り知れない。

 それも平和を守る仕事をする騎士団が遺体を街のど真ん中に放置するなど言語道断。

 最悪である。


「フィアさん、さすがにヤバいっす」


 俺は目を細め冗談混じりに貶しておいた。


「あ、あとエドガーが最後にマスカルノグの群は東に向かったと言ってました」

「マスカルノグが東に?北から来てエテルナを支点に東へ方向転換したというのか。意味が分からん。マスカルノグは殲滅しているだろ」


 フィアの報告に生気を取り戻したアイゼンが追加で増えた情報に頭を悩ませた。


---


[ CHAPTER END ]


──ログアウトしますか?


[ 合意 ]  [ 拒否 ]


※「拒否」を選択した場合、ログアウト権は放棄されます。 次回のログアウトは次のチャプター終了時に可能となります。


---


「え?」

「どうしたんだいアビスくん」


 急に出現したログアウト画面に狼狽した。


「いや、なんでもないですよ」


 視線は眼の前を見ているのに、そこにはまるで何もない。

 その様子にフィアは怪訝そうな表情を隠せないらしい。


 そんなことよりメニュー画面にもなかったログアウト画面。

 文面を信じるのであればログアウトできるのは更にこの世界で何かを達成した時ということだろうが、さらに次のチャプターを達成するためには膨大な時間と労力が必要だろう。


 そもそもログアウトとは何なのか。

 この体から俺の魂が抜けることを意味するのか。

 もしくはこの体は一時的に消え、俺の意識は現実世界に還されるのか。

 やってみないと分からない。


「……」

「……」

「……アビスくん?」


 ログアウトボタンを押せない。

 もう二度と戻ってこられないかもしれない。

 だからと言って、現実のクソみたいな状況をそのままにしていいわけがない。


「アビスくん大丈夫かいっ!」


 フィアが俺の肩を掴み、大きく揺らす。

 画面の前で震えながら逡巡していた俺の指は揺れの勢いで合意ボタンを捉えた。


「え!?終わった……」

「終わった?!何がだい?!?!」


 体全体が白い光の粒に覆われ、段々と薄くなっていくのが分かった。


「え、えぇと。フィアさん!また戻ってきますから!!」

「えっ?!」


 ──俺は意識を失った。




---




「アビスくんはどうなったんですか?アイゼン団長」


 フィアは驚きふためき、アイゼンは呆気にとられ魂を抜かしたように一点を見つめた。

 フィアの声にアイゼンは正気を戻す。


「俺も分からないが……恐らく受肉体……いや、でも顕現できる時間が限られているとしたら精霊の方が近いのか」

「精霊?」

「契約精霊だろう。でも誰の契約精霊だ?」

「待ってください!魔力のない精霊てなんですか?」


 精霊とは人と契約することで代償を伴う。

 顕現できる時間が限られていたり、契約者が条件を満たすことでしか顕現できなかったり、あるいは実体を無くしたり。

 恐らくその類だと考えた。

 しかし、精霊は魔力体そのものであるため、あまりに不自然である。


「何なんだアビスという男は。“アイツ”ではないのか……どこに行ったんだ」


 フィアはたまに一人ごちるアイゼンのそれに首を傾げる。


「誰なんですか?」

「……」


 突然去り消息を絶った白髪の少年を探し始めて十年。

 もう二度と会えないかもしれない。




---




 ぼんやりと視界を取り戻す。

 ぼやけて見にくいが暁色の陽光が掃き出し窓から差し込んでいた。

 滅茶苦茶寒い。


 VR機器を頭部から取り外すと人影が見えた。

 その人影は俺の勉強用の椅子に足を上げて座り、スマホを片手にこちらを見ている。


「よっ」


 耳朶をくすぐる女声。

 久しぶりに聞くその声は姉のものだとすぐに分かった。


「……よぉ」

「勝手にお邪魔してるわ〜。鍵ぐらい閉めとけよ」

「おん」


 姉がいること自体に疑問はなかった。

 たまに家に来るし、鍵を閉め忘れていたらしいのでむしろありがたい。


「姉さんはなんでいるの?」

「ん?被検体αの観察をしに来た」

「あっそ」

「βは作る気ないんだけどね」

「いやだから知らねぇって!」


 姉は何をしに来たのだろうか。

 茶化しに来たのか。

 帰ってほしいな。


「僕がゲーム内で死にまくってるのを楽しんでるだろ」

「いやいや、痛覚だけを無くすの難しいんだわ。体を動かせるように神経張ると痛覚もセットで来るんよ。フルダイブできるだけ凄いと思え」

「凄いけどめっちゃ迷惑。死ぬ時痛いし、遺体は生々しいし、途中でログアウトできないし。ざけんなよ」

「まぁまぁいいやんいいやん」

「よくない!なんも面白くねえしあれ」


 姉はスマホを触りながら俺のクレームに対応する。

 たぶんどうでもいいと思ってる。


「まぁまぁ、たぶん海のタイプを入れておいてあげたから許して」

「いや……全然可愛くねぇし」

「誰とか言ってないけどね」

「だるっ」


 確かに綺麗な女性だった。

 ただ、


「全然制服だし、何が良いんだよ。もっとエロい格好させてほしいよね」

「いやいや、露出した服で戦わせるわけないでしょ?ならあんたをミニスカートでクマの群にぶち込んであげようか?」


 俺は全力で首を左右に振り、拒絶の意思を大きく表した。


「むり。てか今何時?」

「今は……朝の七時だね〜」

「ん?七時?」

「うん七時」


 夜中に始めて、十二時間ぐらい経った気がしたがそんなに経ってなかったらしい。


「てか、もう学校行くから」

「あ、学校行ってるんだ」

「う、うん行ってるよ?」


 嘘である。

 大嘘である。


「あ、めっちゃ大事なこと言い忘れてた」

「なに」

「仮想空間(あっち)で睡眠取ればこっちでも取れてることになるから。ご飯とトイレは別なんだけどね」

「おん」

「長時間向こうに行くなら言って?」

「おん分かった」


 俺は半年着なかった制服に袖を通した。

 少し埃っぽいし、ずっと保管していたせいか変な匂いもした。


 違和感だった。

 自分が制服を着ていることもそうだが、朝方のこの雰囲気が心地悪い。


「いってら」

「姉さんここにいるの?」

「うーん、三限からだしね」

「じゃあ鍵まかせた」


 俺は玄関の扉を優しく閉めた。


 どこかで時間を潰して帰ろうか迷った。

 死ぬ程行きたくない。

 教室に入る時、視線を浴びたらどうしよう。

 話しかけられたりいじられたりしたらどうしよう。

 考えれば考えるだけ行きたくなくなった。


 忘れ物はないだろうか。

 昼飯買うお金は持っているだろうか。

 ちょっと臭い制服で登校していいのだろうか。

 とにかく家に戻る口実が欲しかった。

 なんでもよかった。

 でも家には姉がいる。

 帰れない。

 嘘を付いたからだ。


 外は滅茶苦茶寒かった。

 俺が引きこもっている間にいつの間にか冬になっていた。

 一瞬のはずだったのに半年も経っていたらしい。


 学ランの耐寒では厳冬の寒さを防ぎ切れないらしく、体は震えていた。

 いや、恐怖と寒さに挟まれ、震えが止まらないようだ。


「くどいな俺。キモ」


 傍から見てかなりキモいと思うが、フィアに不登校だって知られたくない。

 そう思うと頑張れた。


 湿った地面を踏みしめる度に軋むような嫌な音。

 学校に近づくにつれ足取りが重くなっていくが、一歩また一歩と足は止まらなかった。


 重苦しく立ちはだかる巨大な城壁。

 反り立つ校門の鉄格子。

 チラチラと校門をくぐる生徒達。

 すべてが気に食わなかったし、不快だった。

 吐きそうだった。

 でも行ける気がした。

 なぜかは分からない。


 廊下で人とすれ違う度に涙が出そうになった。

 見られている気がして、愚痴を言われているような気がして、血の気が引いた。

 教室に入り、誰かに話しかけられたり誰かから変な目で見られたりした際の対応を妄想していたが、明確な解決策は浮かばなかった。

 殴ったり冤罪をチクったり、ザマァしか思い付かない。

 実際何かされてもたぶん俺は何もしないがね。


 自分の教室のドアにゆっくり手をかける。

 手がスライドドアの凹みに引っかかると案外簡単に開けられた。

 ここからやり直せるんだと安堵した。




---




 この日は寝坊をした。

 鳴り響く目覚まし時計を素早く止めて二度寝をする。

 何度目になるか分からない目覚ましのけたたましさに負け時間を確認すると、10時半を過ぎていた。

 2限がもうすぐ終わる。


「やっと起きてきた」


 階段を降りた俺の姿を見て呆れ気味に声をかける母。

 無言で椅子に座り、置かれていた朝ご飯を頬張る。


「遅刻や〜」

「そーやろうね。えーらい起きてこんと思ったもん。遅れてでもいいから絶対行きなさいよ」

「……うん」


 正直なところ、このままサボりたかった。


 例の彼等はクリスマス当日に別れたらしい。

 クリスマスツリーのイルミネーションを背景に別れ話をするアイツらを想像すると滑稽すぎて笑える。

 彼等が別れて二カ月後、美月さんは俺にDMを送ってきた……というかなんかわざとらしく電話をかけて間違えたと謝った。

 当然俺は無視をする。

 何がしたいか分からないからだ。

 別れたから俺の方に来たのであれば、ただ彼氏が欲しいだけじゃないか。

 何がしたいんだ。


 ただ恋人が欲しいは、俺の美学(エゴ)に反している。

 けれど甘さも出てしまう。

 一度浮気をして人を傷付けてしまったのであれば、もう二度と同じ過ちは犯さないのでは?と。


 俺は彼女のアプローチを受け入れてしまった。



 電車では通信料を削減するためにスマホは触らないようにしている。

 ボーッとしているこの時間が好きだ。

 通勤ラッシュから大きく逸れ、ガラリと空いた車内では激しい椅子取りゲームから開放され、窓からの景色がよく見える。

 電車が到着へ近づくとこの優雅な時間が惜しい。


 電車を降り、一歩踏み出すとふと思った。

 学校て行く意味あるのかな、と。

 面倒臭さから来る疑問なのだと理解はしているし、行く意味なら十分にあると知っている。

 けれど教室に入った際、まるで『うわ、来たのかよ。来るなよ』と言う眼差しの猛攻が容易が想像できた。

 噂が広まってるかもしれない。

 あれはただ扉の音に反応しただけであり、自分も見てしまうにも関わらず、俺だけがそう思われているんじゃないかとそう思う。


 俺は向かいの電車に乗り込み、折り返した。


 駅近くのカフェでくつろぎ、夜まで時間を稼ぐ。

 作ってもらったお弁当は家でこっそり食べればいい。


 今思うと『もう一度チャンスを上げたい』は、自分のチョロさを許すための言い訳が欲しかっただけのかもしれない。

 何がしたかったのだろうか。

 もう面倒くせぇな。


 ミルクコーヒーを飲みながら、ショート動画を嗜んでいると、スマホがバイブを鳴らす。

 その瞬間鋭い胸騒ぎと、脂汗に目眩がした。

 母からの電話である。

 授業という提で無視をした。

 その日帰宅すると母は俺のことを空気のように扱っていた。

 キレていたのだ。

 そしてようやく俺は学校をサボったのだと理解した。


 それから登校が面倒臭くなった。




---




 教室には人が少なかったので不登校になる直前のことを思い出してボーッとしていた。

 結局あの日に学校を行かないという選択をしなければ俺はもっと楽に生きていたかもしれない。

 不登校になって最初の一、二週間が一番辛い。

 行かなければならないのに体が動かない日々に頭を悩ませ、精神状態も不安定になってたと思う。


 生きること自体に理由を求める現実世界の方が生きにくいんじゃないかって。

 生きるために考えてる方がよっぽど楽な気がする。

これにて一章完結です

描写してませんが、姉は海が学校行ってないのを知ってて知らないフリをしていまして、登校中後ろを着いて行ってます笑

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。