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第147話 【ゴリツィンサイド】防戦と亀の魔人と讒言と。

魔王の城 謁見の間



ポネツ皇国とか言う奴らが攻めて来たとのことで、緊急の会議が開かれていたのだが。

「愚かな人間どもめ。我らには指一本触れられぬまい!!」

「だが、我らの属国リシアの王は、首都を捨てて逃亡したと聞くぞ?このまま放っておくわけにはゆくまい。」

「人間どもなど恐れるに足らず。何をそんなに怯えておる。」

集った魔人達の意見はてんでバラバラで、全くまとまりがない。

「皆の者、つまり今はどうなっておるのだ?状況がさっぱり分からぬではないか。」

あまりの混沌ぶりに、魔王が困惑している。



そんな中、巨大な亀の魔人が、魔王の前に進み出た。

「魔王様。魔人リスンより、戦況についてご報告いたします。現在ポネツ皇国軍はフサニアの街を落とした後、勢いに乗って北上を続け、王都を占領。そのまま大河を渡り、カイソンを落として現在は北の都ヘイヤンにおるとのことです。…要するに、リシア王国の兵と我が国の駐留軍だけでは手に負えず、放っておけばギタイア本国にまで災いをもたらすことは必定です。」


人間数人分の背丈と横幅。

魔王よりもはるかに大きい巨体が自慢らしいが、ワシはしり込みせずに反論する。

「魔王様。ポネツなど、やはりリシアとか言う連中に任せておけばよろしいではないですか。所詮奴らはただの人間。我らの領地にたどり着く頃には、リシアとの戦でへとへとになっておることでしょう。」

「それがなゴリツィンよ、リシアの軍勢はポネツ軍勢相手に大敗しただけではなく、ろくに矛を交えぬ内から我先にと逃げだしたらしい。我らの前に立ちはだかるのは、ほぼ疲れを知らぬ兵達になろうて。」

―何たる虚弱な連中だ。

魔王も呆れている様子。

「では、援軍を出す他あるまい。リスン将軍の水軍は…」

「いつでも出られます。」

「ゴリツィンも兵の準備が出来ておろう。ちょうど良いから行って参れ。」

「お言葉ですが魔王様。この人間はかつて、自らの領地にて幾度も戦に破れた末に、ついには賊に国を追われた身。そこまで信用に足りるとは到底思えません。」

―リスンとか言う奴め、魔王様に余計なことを言いおって。

リスンを睨み付けると、リスンもその視線に気づいたのかワシの方を向いた。

「ゴリツィン。貴様が来てからと言うもの、各地で魔人が次々と斃れ伏しているのは事実だ。トグルク将軍に続き、先日はポネツの近海を根城としていた蛸の魔人ラートシも帰らなかった。…もしや、ユーリとやらへ内通しておるのではあるまいな。」

「なっ…!!何をおっしゃいますリスン様!!」


―奴と内通するだと!?この上ない侮辱!!

―おのれリスンめ!!ただでは置かぬぞ!!


―…まあ、よいか。


「ワシはとうに、ギタイア帝国のため、魔王様のためにあると心を決めております。それに、奴は正当なるリューリク王であるワシを愚弄した輩!!次に会ったら最後、即刻叩き斬るまでのことにございます。」

激しい怒りを何とか隠して、あくまで平静に反論する。

「それなら良い。とにかく今は東の人間どもを撃ち払うのが先である。ゴリツィン、そちに与える魔物兵をニ十万に増やす。人間どもを追い払ってまいれ。」

「ははあっ…!!」


魔王城下 ゴリツィンの居室。


「おのれ亀野郎め!!ワシに対して最大限の侮辱!!必ずや!!必ずや亡き物にしてくれる!!」

怒りのあまり、机を叩く。

呼びつけたタマンスキーとモリノフがびくりと身体を反らしたが、こうしてもなお怒りは収まらない。

「けれど、不味いんじゃないですか?私達、魔王様から疑われてしまいますよ?」

「この場合、放っておくといずれ王様は讒言されてしまうのが目に見えています。何とかせねば。」

「ええい!!それ位わかっておる!!」

そうだ。

あの亀野郎を消さなければ、こちらの首が危ないのだ。

…とは言え。

どの道、亀野郎リスンは消える運命なのだが。


ヘイヤン城。


補給が行き詰まったらしく、ポネツ軍は守りを固めていた。

ワシはすかさず、そこへタマンスキーに指揮を取らせて魔物達を差し向けた

…のだが。


「駄目です!!向こうのアルケブスが強力すぎる!!」

「どんな仕掛けかわかりませんが、敵はアルケブスを目にも止まらぬ速さで次々と撃ちかけてきます!!」

情けないことを言って、すぐにタマンスキーが逃げ出してきた。

「ええい!!ただ兵を入れ替えておるだけだろうが!!何を怖じ気づく!!」

「しかし!!」

問答を続けていると。

「王様。魔王様よりの命令です。」

「チャナンフェイか。こんな時に何だ?」

こ奴は魔都へ戻るとして、一度姿を消していたのだが。

「各戦線、我が方に利あらず。戦線を整理するので、一旦ギタイアとの国境線である大河まで退けとの達しにございます。」

「うむ。」

「王様!?」

「よろしいのですか?」

あっさりすぎる承諾に、タマンスキーとモリノフが仰天したようだ。

「魔王が退けと言うのだから退けば良かろう。」

あくまでも命令に従うだけの事。ワシが自ら逃げ出すわけではない。

「やいタマンスキー、モリノフ。退く先々の村を略奪しろ。徹底的にだ。」

「リシア王国は味方ですが…よろしいのですか?」

「何を言っておる。我らはそのリシアとやらを防衛するために、ギタイアから遠路はるばる来たのだ。食料と金目の物位、徴収して当然であろう。」

「それもそうですね。」

「うむ。それに略奪をして食料を得るのはポネツ軍とて同じこと。物資が行き渡らなければ、すぐに飢えて進軍は止まるであろうて。」

「なるほど!!流石は王様。見直しましたぞ。」


言葉に棘があるが、寛大なワシは聞かなかったことにしてやろう。

「抜かりなく行え。愚民どもの財を徹底的に搾り取るのだ!!」


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