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第146話 ポネツ皇国の戦

ポネツ王国本島の西の果てから、数日。


俺たちは、大陸に渡る船に乗り。

甲板で潮風を浴びながら、近づく山影を眺めていた。

「まさか、こんな形で大陸に戻るとは思わなかったな。」

「わたし、潮風の気持ちよさもわかるようになってきたけど、まだ複雑です。」

「まあ、極論を言えばこれは俺達の戦じゃない。せっかく来たんだし、この東の果ての国がどんな戦をするのか、じっくり観察するとしよう。」

マリチカ大将軍は海を渡らず、ポネツの国内から指揮を執るようだし。

―せっかく東の国の魔法が見られると思ったのに。


大陸南東部 港町フサニア


上陸するなり、目の前に敵の軍隊が現れたのだが…

「あれは…やはり人間だ!!敵は魔物じゃなくて、人間だぞ!?」

「リシア王国軍ですな。」

答えたのは、大将軍に代わってポネツ皇国軍の指揮を執る、シギェチカ・ヨスダと言う男だ。

「リシア王国…あれが…」

「リシア王国の連中は、ただの人間の国でありながら、あろうことか魔王に忠誠を誓っているのです。…安心くだされユーリ殿。人類の裏切り者どもなど、わがポネツ皇国軍にかかれば一捻りです。」

そう言い残すと、ヨスダ将軍は「それっ!!」と馬に飛び乗り、勇んで前線へ駆けていった。


「あの人、この戦の大義名分をちゃんとわかっているのかなあ?」

「確か、『正統な魔物の支配者は俺様だー』って始まった戦でしたよね。」

あの将軍は、どうやら魔物を倒して恩賞をもらうことにしか目がないようだ。


ブォー!!

「きゃっ!!びっくりした!!」

「大きな貝を笛にしているようですね。」

驚いたサーシャと対照的に、ミーリャさんは冷静な分析をする。

「あれは法螺貝です。間もなく戦が始まる合図でございます。」

二コラも身構えたし、いよいよと言う訳か。


「鉄砲隊、前へ!!」

「アルケブスか。ってあんなに沢山!?」

リューリクにもアルケブスはあるけれど、リューリクのアルケブス兵のように、何十人程度と言う数ではない。

数百、いや数千人の火縄銃兵が、一糸乱れず整列したやいなや。

「構え!!放てぇ!!」

ズダアン…ズダアン…ズダアン!!

先陣を切って迫ってくる魔物達に向け、一斉に火蓋が切られ。

押し寄せて来た無数の魔物達が、バタバタと撃ち倒された。

「二の備え、前へ!!…構え!!放てぇ!!」

号令と共に、射撃を終えた火縄銃兵が後ろに下がり、入れ替わりに後ろにいた火縄銃兵が前へでて、すかさず弾を放つ。

「三の備え、前へ!!…構え!!放てぇ!!」

第三波の射撃が終わる頃には、第一陣の銃兵隊が再装填を終え。

無限に降り注ぐ銃弾の雨に、魔物はなすすべなく全滅した。

「これでは無駄死にだ!!退却!!退却!!」

魔物の後ろから進軍していたリシア王の兵は、戦意を失って点でバラバラに逃げ散り始める。

「敵を突き崩したぞ!!槍隊用意!!前へ!!」

オオオオオオ!!

雄叫びと共に、槍隊が穂先をそろえ突撃して行き。

敵はなす術なく総崩れになった。


その夜。野営地。



「…どうだった?」

焚火を囲みながら、俺はさっそく昼間の戦いの話題を切り出す。

「なんか…すごかったです。…あっ!!もちろんユーリ様にはかなわないと思いますよ。」

「…」

ミーリャさんは言葉を選んでいるのか、しばらく黙っていたが。

「率直に申し上げると、あれは…言いにくいですね…。」

「なら、その先は俺から言おう。…ありゃめちゃくちゃ強いな。」

おそらく、今のリューリクの軍よりも。

「ユーリ殿?」

「流石に、このまま魔物を滅ぼすことはないだろうけど…もし遠い未来、数百年後あたりに魔物の領域へ人間が進出して、リューリクとポネツが国境を本格的に接することになったら、大きな脅威になるかもしれない。」


「ユーリさん、そこまで考えていたんですね。」

「王様…それは…。」

「俺はやらないよ?けれど、境を接した国って言うのは、そのうち戦を起こしたくなるんだと思う。」

王になって数年。

近頃になって、解りたくはないけれど解ってきてしまった現実だ。

「ま、その時のことは…その時の王が考えるさ。」

「王様?」

「俺は王だけど、不老不死の神じゃない。いつかは年老いて迎えもくるさ。…だからこそ、今を懸命に生きて、しっかり王をやってなるべく良い国を作る!!」

「ユーリ様。」

「ふふふっ。ユーリ殿らしいですね。」

「それでこそ王様です。」

大将軍マリチカにはポネツ皇国があるように。

俺には、俺の率いる国がある。

皆の運命が、俺の手にかかっているのだから。



読みいただき、ありがとうございます。




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