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第145話 ≪両サイド≫ 再見の気配

≪ユーリサイド≫


「それで、リシア王国はなんと言ってきたのだ。」

「ははぁ。それが、畏れ多くも上様の要求には応じられぬと。」

「であろうな。元より、リシアに期待などしておらぬ。」



「一体何が起こっているのですか?」

何か嫌な予感がしたので、大将軍に問う。


(よしみ)の証に、教えてやろうではないか。余はこれから、魔物の国…ギタイアを征服することに決めたのだ。」

「ああなるほど。ギタイアを征服…ってええええええ!?」


唐突に飛び出したとんでもない言葉に、思わず大声を上げる。

「何も所以(ゆえん)がないわけではない。今を去ること数千年前、混沌としていた魔物の世界は、強力な王によって初めて統一され、初代の王は『始祖の魔王』として君臨した…のであるが。」

「それって…」

「うむ。大陸の歴史に刻まれている『始祖の魔王』。それこそまさに、わがスガメの先祖であるのだ。」

「は…はあ…」

「だが始祖の魔王亡き後、我が先祖は悪しき魔物に国を奪われ、流浪の末にこのポネツの地に流れ着いた。だが今や、我はポネツの地を統べる者。大陸に目を向け、我が先祖の古地に還らんとするは必然!!無論、余にも魔王の血が流れておる。我こそが、正当なる魔物の支配者なのである!!」

そう語る大将軍の顔は、本気だ。

この大将軍は、本気で魔物の国を征服しようとたくらんでいるのだ。


そりゃ『人間』と言う種族の魔王だって、多分居たっちゃ居たんだろうけれど…

―無謀だよなぁ。

―いくら攻めてこないとはいえ、魔物の国を征服しようなんて…

そんな俺の気を知ってか知らずか。

「リューリクの王よ。せっかく遠路より参られたのだ。戦見物をして行かれよ。」

まるで名所案内でもするかのように、大将軍はそう告げた。


その後。


「ユーリ様、止めないんですか?」

「ここはポネツ皇国であって。リューリクじゃない。他国の王を止める権利は無いよ。」

「内政干渉ですからね。」

「それにしても、何故私達まで…」

「要するに、『国境を接する』俺達に、この国の武力を見せつけたいのさ。角が立つのも良くないから、従っておこう。」

リューリク王として、この国の戦い方に興味があるのもまた事実だし。

「ニコラは、別に故郷に戻っても良かったんだぞ?都の近くなんだろ?」

「せっかくここまで連れてきて下さったのですから。リシア王国のことも多少はわかるので、ご案内さしあげます。それに、一戦くらいはありそうな気がいたしますので。」

「そうならないことを祈ってるんだけどな。」


「そう言えば、何なんだ?リシア王国って。」

「ポネツ皇国から、海を渡って北西、大陸の端にある国でございます。かの国は、昔から人間と魔物、両方と外交や貿易を行い、共存することで成り立ってきた国なのでございます。」

「魔物と共存…」

「そんなことが出来るんですか?我らがユーリさんですら、魔物とはひたすら戦いに明け暮れて来たのに。」

一応例外もあったけどな。

「大将軍の目的は、リシア王国の征服が目的ではありません。その先にある、魔物の国…ギタイア帝国への道案内をさせようとしているのです。」

「…呑むわけないだろう、それは事実上の服属要求だぞ。」

「ですから、大将軍は手始めにリシア王国を力でねじ伏せ、しかる後にギタイア帝国を攻めるおつもりなのです。」

状況も理屈も理解できた。

それに付き合わされるのは、ちょっと頭が痛いけど。

「とにかく、今回俺達は戦をする訳じゃ無い。旅の続きだと思って、気楽について行こうじゃないか。」

俺は内心苦笑いをしながらも、これから先の予定を色々考え始めた。


【ゴリツィンサイド】


「ユーリの奴が東に!?」

「はい。ポネツ皇国の様子を探らせている魔物の報によると、ポネツ皇国の役人と、リューリクから来たと称する宣教師の疑いのある女が諍いを起こし、その女が兵をあげた所…リューリク王ユーリと名乗る男が仲裁に入ったとか。」

報告してきたチャナンフェイも、半信半疑の表情だ。

「何故奴が東におるのだ!!一体どこから現れたのと言うのだ!?」

「それは…わかりません。」

「広大な魔物の世界をどうやって越えた!!何故奴が…ワシの地を飛び越して生きておれるのだ!!ううむ…」

「ゴリツィン殿。ユーリとやらが現れたより気になるのが、トグルク将軍の行方だ。」

話を聞いていた別の魔人が、首をかしげる。

「トグルク…様…?…そう言えば、近頃見かけませぬな。」

「うむ。数ヶ月前に領地へ戻ったきり、全く姿を現さぬのだ。」

「まさか謀反…ではあるまい。」


「そのユーリとやらが、どうしたというのだ。」

「「!!」」

声の主が誰であるか、皆が瞬時のうちに理解してひれ伏す。

「これはこれは魔王様。なあに、人間風情一人、我らにとってはどうと言うことはありませぬ。」


―待てよ?

それより、もっと重要な事に気が付いてしまった。

ユーリの奴が、取り巻きを従えてポネツ皇国にいると言うことは…

―今、肝心のリューリクはがら空きではないか!!

ワシはここぞとばかりに、魔王の前に進み出る。

「魔王様。ギタイア帝国の西にあるリューリクと言う国のお…王を名乗る盗賊の首領が、間抜けにも東の果てで油を売っております。ワシに軍をお預け下されば、そんな国の一つや二つ、簡単に平らげてご覧に入れますぞ!!」

「ほほう。たいそうな自信であるな。…面白い。20万の魔物を遣わそう。すぐに支度に入れ。」

「ははっ!!」

反対したとすれば、負担が重くなるであろう魔人トグルクあたりだが、当の魔人は行方知れず。

すんなりと受け入れられ、ワシは思わずほくそ笑む。

―ユーリの奴め、のこのこと国をがら空きにするとはなんと間抜けな!!

―よかろう。貴様はそのまま、東の最果てで野垂れ死ぬがよい!!


数週間後。魔物の都内 ゴリツィンの館。


20万の魔物共が、ワシの前に整列している。

ここからリューリクまで、人間が馬鹿正直に歩けばはるか彼方だが、大型モンスターやドラゴンに乗ればそこまで時間はかからないはずだ。

「すごいですね。見たことのない大軍だ!!」

「留守居の舞台が勝てるとは思えません。楽々マスクヴィアへ凱旋と行きましょう。」

将軍として率いることになったタマンスキーもモリノフも、勝利を確信しているようだ。

ワシはそんな者共の前に進み出て、高らかに命を下す。

「良いか者共!!今、貴様らを阻む者は誰もいない!!存分に暴れよ!!いざ、リューリクに向けて出」

「ゴリツィン様!!一大事にございます!!」

慌てふためいて現われたのは、またしてもチャナンフェイだ。

「何事だ?今ワシは出陣の号令をかけている所である。騒々しいぞチャナンフェイ!!」

「魔王様より、情勢が変化したのでリューリク遠征は取りやめよとのお達しです。」

「は!?何故だ!!ワシは魔王様直々に認可を…」

「東南の方角から、ポネツ皇国軍が攻めて来るのです!!ゴリツィン様もそちらへ出陣となるでしょうが、まずは大至急大広間に集まれとのお達しです。」」

「はあああああ!?」


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