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ガラスの靴を姉に渡す  作者: 桜 舞華
婚約と姉離れ
19/19

アレクシス・ミランダード

 アレクシス・ミランダード。本日婚約。


 ギラギラと、無駄に明るい広間の電飾に思わず目を細めた。そして、明かりから目を逸らすように隣へと視線を滑らせる。

 今夜、僕の婚約者として正式に披露した女性。リリアナ・シェスタは、まるで淑女の鏡のように控えめな笑顔を浮かべ、時折恥じらいをその顔に浮かべながら僕を見る。

 なるほど、立派な演技だと思った。

 だが、思わずその顔に釘付けになるのもまた事実なのだ。


 おかしい、と思う。


 僕は元々リリアナ、リリィの妹で伯爵家の次女に婚約を申し込むはずだった。彼女が幼き日に望んだ、幸せそうな絵本の中のあのお姫様のような求婚の仕方で。

 まさか、リリィとレティの靴のサイズが一緒だったのは大誤算だった。


 すぐに、取り消しを行うはずだった。だが、リリィの鈴のような美しい声で「レティに余計なことをすれば、不名誉な事実を作り上げて没落させてやる」という言葉によって辞めざるを得なかった。


 いや、そんなのは言い訳だ。元々、僕はそれほどレティを好きではなかったのだと思う。くるくると変わる表情に釘付けになり、手元に置いておきたいと思ったのも事実だし、恋愛に似た感情があるのも理解している。

 少し行き過ぎた独占欲もある。喜ぶ顔が見たくて宝石ばかりついた家具も揃えた。

 どれもこれも、レティのお気には召さなかったが。

 まぁとりあえず、そんなこんなでレティが好きなのも事実だった。けれど、それらはリリィとの婚約解消を促すほどの感情にはならなかった。諦めたというのもある。


 だが、打算的な結婚話はリリィで十分だと思った。

 リリィは妹に不自由させたくない。僕は、金はあるのだから爵位が欲しい。


 ある程度の地位ある貴族に生まれながら、その跡を継げないことを僕はかなり不満に思っていた。だから、シェスタを継げるのは好都合だった。

 爵位にこだわりを持って、鬱屈したような精神だったから、楽観的で、少しも打算を感じないレティに焦がれたのかもしれない。


 レティは僕に恋心も何も持っていなくて、僕は案外あっさりと彼女を手に入れるのを諦めた。習慣のように彼女に贈り物をするが、もはや習慣。



 リリィは僕がレティを想っているとまだ思っているが、残念。



 今の僕の興味はリリアナ・シェスタに限られる。



 妹の為に、今この場に立ち僕と婚約し、さも僕が好きかのように振る舞う彼女。


 リリィが僕を好きになったら。

 僕が、彼女を愛したら。


 まだまだ先かもしれないが、少し楽しみだな。




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