アレクシス・ミランダード
アレクシス・ミランダード。本日婚約。
ギラギラと、無駄に明るい広間の電飾に思わず目を細めた。そして、明かりから目を逸らすように隣へと視線を滑らせる。
今夜、僕の婚約者として正式に披露した女性。リリアナ・シェスタは、まるで淑女の鏡のように控えめな笑顔を浮かべ、時折恥じらいをその顔に浮かべながら僕を見る。
なるほど、立派な演技だと思った。
だが、思わずその顔に釘付けになるのもまた事実なのだ。
おかしい、と思う。
僕は元々リリアナ、リリィの妹で伯爵家の次女に婚約を申し込むはずだった。彼女が幼き日に望んだ、幸せそうな絵本の中のあのお姫様のような求婚の仕方で。
まさか、リリィとレティの靴のサイズが一緒だったのは大誤算だった。
すぐに、取り消しを行うはずだった。だが、リリィの鈴のような美しい声で「レティに余計なことをすれば、不名誉な事実を作り上げて没落させてやる」という言葉によって辞めざるを得なかった。
いや、そんなのは言い訳だ。元々、僕はそれほどレティを好きではなかったのだと思う。くるくると変わる表情に釘付けになり、手元に置いておきたいと思ったのも事実だし、恋愛に似た感情があるのも理解している。
少し行き過ぎた独占欲もある。喜ぶ顔が見たくて宝石ばかりついた家具も揃えた。
どれもこれも、レティのお気には召さなかったが。
まぁとりあえず、そんなこんなでレティが好きなのも事実だった。けれど、それらはリリィとの婚約解消を促すほどの感情にはならなかった。諦めたというのもある。
だが、打算的な結婚話はリリィで十分だと思った。
リリィは妹に不自由させたくない。僕は、金はあるのだから爵位が欲しい。
ある程度の地位ある貴族に生まれながら、その跡を継げないことを僕はかなり不満に思っていた。だから、シェスタを継げるのは好都合だった。
爵位にこだわりを持って、鬱屈したような精神だったから、楽観的で、少しも打算を感じないレティに焦がれたのかもしれない。
レティは僕に恋心も何も持っていなくて、僕は案外あっさりと彼女を手に入れるのを諦めた。習慣のように彼女に贈り物をするが、もはや習慣。
リリィは僕がレティを想っているとまだ思っているが、残念。
今の僕の興味はリリアナ・シェスタに限られる。
妹の為に、今この場に立ち僕と婚約し、さも僕が好きかのように振る舞う彼女。
リリィが僕を好きになったら。
僕が、彼女を愛したら。
まだまだ先かもしれないが、少し楽しみだな。




