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「なるほど……。妹を助けていただき、ありがとうございます、オルガスタン様」
姉様は姿勢を正してオルガスタン様に礼を言う。あたしも、姉様に続いてお礼を伝える。
「本当に、ありがとうございます。オルガスタン様。それから、すいませんでした。誤解してしまい、怪我をすることになってしまって……」
あたしがあそこに飛び込まなければ……。思い出す度、落ち込む。
「別にいい。実際、飛び込んでさえ来なかったものの、あれをみたほとんどの人が勘違いしているのは知っている」
あたし以外にもあの状況を見ていた人はいるらしい。
「そうなのですか……」
「あぁ。そう言えば、リリアナ嬢。婚約したそうだな」
オルガスタン様はあたしから目を離し、姉様に目を向けた。
「えぇ、まぁ」
「アレクの世話は大変だろうが、あれでいて意外と乙女みたいなやつだ」
「乙女……」
姉様が、気になる単語だけを繰り返す。あたしも気になる。乙女って……男なのに、乙女?
「ほら、乙女心と秋の空と言うだろう?」
「はぁ、まぁ言いますね」
「アレクの恋心はそんなもんだと思うぞ。実際、2人の間を行き来しているものだ」
兄様の恋心がそんなもの……?
2人の間を行き来?
「いや!例え話だ!」
あたしの視線が剣呑なものになって行くのに気がついたオルガスタン様は、慌てたように手を振って言った。
何の例え話をしたらそうなるのか。
「そうですわね。今はしっかりがっちり、アレク様の心を私が掴んでいますので、何の心配もありませんわ」
姉様はオルガスタン様に安心させるように笑いかける。
「そうか……まぁ、それならいいんだ。色々心配だがな。あぁ、そうそう。婚約の披露パーティーの案内状が来た。出席すると言うことを、アレクに伝えておいてくれ」
「はい、わかりましたわ」
「明後日、だな」
「えぇ」
姉様とオルガスタン様の会話で思い出す。婚約披露パーティーがあるのだと言うことを。
すっかり忘れていた。特にあたしが動くことは何もないから、忘れてもいいわ〜と高を括っていた部分もなきにしもあらず……。
「じゃあ、またな」
オルガスタン様はそう言って、屋敷を出た。入れ替わりのように、兄様が帰ってくる。
「オルガじゃないか」
「あぁ、アレク。久しぶりだな。やっと、婚約すると聞いたが?」
「……まぁな。もうそろそろ、独身貴族もやめなければね。そういうお前はどうなんだ?」
親しそうに……いや、友人と言うぐらいなのだから親しいのだろう。親しげに話す兄様とオルガスタン様。
「ねぇ、姉様。姉様はどうしてオルガスタン様をご存知だったの?」
あたしは主に姉様と過ごしていたのに、どうしてオルガスタン様を知っているのだろう。
「たまたま、貴女が風邪を引いて私1人でアレク様の屋敷を訪ねた時に、お会いしたのよ」
「そうなのですか」
「えぇ。まったく、親しくなんてないのだけどね。2、3言話しただけですもの」
名前を知っている知人程度の関係らしい。
「俺か?俺は……まだ、遠そうだな。婚約も妻も」
「ははっ、そうか。まぁ、頑張れ」
姉様と話している間にオルガスタン様と兄様は会話を終えたようだった。
「じゃあな」
片手を持ち上げて、それから屋敷を出て行った。




