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ガラスの靴を姉に渡す  作者: 桜 舞華
お世話になります
16/19

15

「おかえりなさい、遅かったわ……ね……?オルガスタン様⁉︎」


 シェシーとメイリを後ろに従えた姉様が出迎えてくれた。出迎えて!くれた!

 わざわざ玄関まで足を運んでくださった。

 それだけで、今日1日が素晴らしい日だ。


 と、そんな場合じゃなかった。


「姉様!知っているの?」


 あ、そう言えば名前聞いてない。


「え?えぇ。知っているわよ。アレク様のご友人、オルガスタン・スメイリ様。次期子爵様よ」


 そっと真後ろの男……改め、オルガスタン様を見上げる。くすんだ灰色の髪に、紅い瞳。色だけで言うと、なんだか狼みたい。実際の狼はみたことがないけど、絵本に描かれる狼はこんなんだった。

 それから、背がすごく高い。


 オルガスタン様はあたしに気づくと、オルガスタンだ、と名乗った。


「……あ!あたしも名乗らないと!レティシア・シェスタです」


 本当に今更感を出しながらも、メイド服では格好のつかない挨拶をする。

 オルガスタンは、軽く目を見開いた。


「シェスタ?……シェスタ伯爵家の令嬢か?」

「そうですわ、オルガスタン様。レティ……レティシアは、私の妹です」

「メイド服だが」

「……服装で判断なさるのはいかがなものかと」

「そうだな。レティシア嬢。色々とすまない」

「いえ、こちらこそ」

「色々と……?」


 姉様が、不機嫌極まりない声を出して顔を顰めた。


「レティ、後で教えてちょうだいね」


 にっこりと笑って告げる。あれ?今聞かないの?と思ったら、姉様はまぁ大変!と言ってオルガスタン様の怪我に気がついた。


 姉様はやはり優しい。気になることがあっても、自分のことより他人のことを優先する。今、色々の内容を聞かなかったのは、オルガスタン様の怪我の治療をするためだったもの。


「オルガスタン様、こちらへ。メイリ、救急箱を持って来て頂戴。それから、シェシー。お茶を。レティはこちらへおいで」


 優しく手招きされて、あたしはオルガスタン様の背を押しながら姉様の元へ行った。


 姉様は客間へとオルガスタン様を案内すると、すぐに救急箱を持って現れたメイリから受け取って、手当てを始める。

 あたしがやるわ、と言ったのに、姉様はいいえ!私がやるわ!と言って意外にも手際良く手当てを終わらせた。


「終わったわ。……それにしても、どうしてこんな怪我を?」


 お茶が運ばれ、ひと段落つくと姉様はオルガスタン様ではなく、あたしの方を向いて聞いてくる。

 姉様は素晴らしい。旦那様になる兄様に浮気を疑われたりしないよう、極力男性との接触を避けているのだろう。


 あたしは姉様のその心遣いを素晴らしく思いながら、先ほどあったことを説明した。


 途中、オルガスタン様が補足説明をしてくれた。



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