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気付いた時には、視界が覆われて何も見えなかった。
「ぐ……っ……」
思わず漏れた、と言うような低い呻き声がすぐ近くから聞こえた。男に抱え込まれたのだと今更ながらに気づく。
「すまん」
男は短く言ってあたしを解放する。
解放されたあたしは、一瞬状況が理解出来なかった。
何故か男の手からは血が流れていて、その手の中に包み込まれているのは紛れもなく刃物。そして、その刃物の柄の部分を握っていたのは、さっきまで怯えているように見えた女性。
「はなしてっ!」
女性は悲鳴混じりに訴える。だが、男は放さない。
男があたしを抱え込んだ理由がようやくわかった。あの女性が刃物を向けたからだ。なんでそんなことになったのかはわからないけど、そうなった。
つまりあたしは、庇われた。あたしが庇おうとした女性に刺されそうになったから。
さっきの呻き声は、刃が手を傷つけたからなんだろう。
男は刃物を握った手をそのまま捻るようにして持ち上げた。女性の手が、そのまま捻りあげられる。
女性は抵抗したが、力の差は歴然。
男は女性の腕をねじって、苦もなく拘束した。
「ふぅ。説明は後だ。近くに騎士が巡回しているだろうから、呼んできてくれないか」
指示されたあたしは、頷いて騎士を探した。幸いにも、すぐに騎士を見つけることができた。
この国には、王に仕える騎士と国に仕える騎士がいる。あたしが呼んだのは後者で、主に治安維持に務める騎士。前者は、王の護衛を担ったりする。
男が女性について騎士に説明する。
はしたないかと思いつつ、盗み聞きしてしまった。
女性は、とある店で商品を盗んだらしい。そこを見つけた男が、人目を気にする女性を思って路地裏に連れて行き、話を聞こうとしたところ、まるで強姦でもされるかのように悲鳴を上げ始めたそうだ。
そして、それを見たあたしが飛び込んでしまった。で、女性は既にパニック状態だったから、急に飛び込んできたあたしを敵と判断しては物を振り回した____。
ざっと、そう言うことだった。
「そうですか。ありがとうございます」
騎士はそう言って、男に頭を下げると女性を連行して行った。
「怖い思いをさせてすまない」
男は騎士を見送ると、あたしの方を向いた。
「いえ……あたしこそ、早とちりしてしまってすいません」
あたしが入っていかなければ、男が怪我をすることも……怪我!
「そうだ!あなた、怪我を!」
「……え?」
手を見ようとしたのだが、男は怪我をした方の手、右手を後ろに回してとぼけた。
「見せてください!」
「……」
あたしがじっと睨み付けると、観念したように右手を差し出した。
やはりそこには血が着いていて、とても痛そうだった。
「手当するので、着いてきてください!」
残念なことに、今のあたしの手元には治療する道具がない。だから、屋敷に連れて行くことに決めた。
あたしが助けてもらった人だから、姉様も屋敷に入れてくれるだろうし。
「手当なんていらん」
気難しそうに眉を寄せ、唸るように言う。
あたしは一つ息を吐いて、引っ張ってでも連れて行くことにした。




