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あたしは、一緒に行きますというシェシーの申し出を丁重に断り、屋敷を抜けた。
あたしが向かったのは、市場だ。色々売っている。
着いてから、メイド服姿な自分に気づいてしまった、と思った。けど、周りを見れば名のある貴族の使用人達が買い出しに出ていたので、あまり目立たないかと開き直った。
……まぁ、あたしみたいに貴族の娘が使用人に扮している人なんていないんだけど。
適当にぶらぶら散歩しながら、姉様に何か買って帰ろうかと考える。
「わ、あれかわいい」
あたしが目を留めたのは、髪留め。
金髪に似合いそうだった。ようするに、姉様に似合いそうだ。
「……あ。お金持ってきてない」
ポケットに手を入れて、所持金が足りるようだったら買っちゃおうかな〜なんて思っていたのに、ポケットの中は空っぽ。
がっくしと肩を落としながら言ったら、目の前のこの店のおっちゃんが、ギョッとした目で見てきた。
そういえばここ、治安は良いはずなのに店から品物が盗まれるのは結構多いんだっけ……?
いや盗むつもりないですから、という顔をしながら、不自然にならないよう後ろに下がった。
「今日は買い物は諦めよう……」
うん、別に買い物しようと思ってきたわけじゃないしね……。
店から離れて、歩き出す。
あれ?何の声……?
あたしの、後ろの方。いや、後ろと言うより斜め後ろ?
甲高いような、女性の声。
いや!やめてください!
うん、そんな感じの声。
厄介なことには首を突っ込まないでおこう、とは思いつつ。好奇心が首出してしまう。
あたしは来た道を少しだけ戻った。そしたら、声がどんどん近くなる。
声の聞こえる場所は、細い路地のところだった。大柄な男が、小柄な女性の前にどっしりと立って、厳めしい顔をしながら女性を睨みつけている。
パッと見た印象は、カツアゲか、行き過ぎたナンパ。どちらにしろ、あまりよろしい雰囲気ではない。
女性の方は、姉様ほどではないにしろ綺麗な金髪をしていた。
だから、だと思う。
あたしは素早く駆け出して、男と女性の間に体を割り込ませた。
「何してるの!」
男を睨みつけ、女性をかばうようにする。
「いや、そこの女性が……」
男は口を開くと、焦ったように言う。
男に気を取られたのがいけなかった。
いや、元はと言えば早とちりしたのがいけなかった。
ちゃんと、後ろを確認していれば。そもそも、男が女性の前に立っていて、でも女性を責め立てているわけではないことに気づくべきだった。




