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第八話 全世界一斉火山大噴火事件

〜9/15(月) 事件当日〜


 完全にやった…

 今の時間は午前九時半。心呂の言っていた十時二十四分まで、後一時間もないのだ。

 何をやったか?言わずもがな、寝坊だ。

「おい、サメ、起きろ。もう九時半だぞ」

 ヨダレを垂らして清々しいほどの安眠をしているサメを揺らす。

「うーん?ホントだ!やべやべ」

 そしてノックが鳴る。

「おーい幸友ー?起きてんのか?」

 シグ姉と幼だ。起きてんなら起こしてくれよ。

 俺は慌ててベッドから身を起こして、着替えを始める。


「ちょっと、お父さん、寝坊しちゃダメでしょ?もう一時間も無いんだから」

 小声で怒る心呂。

「起こしてくれても良かったんだぞ?」

「はぁ、昔も今も変わらないね」

 俺が変える気がないんだと思うがな。

 今は原宿にいる。サメがどうしても来たいって言うものだから、来てやった。

 そして俺と心呂以外はトイレ休憩をしている。

「心呂、どうしたら良いんだ?火山噴火から数年後の世界の人間なんだろ?」

「うーん、お父さんが言うには、火山噴火は止めたって言ってたけど」

 え?火山噴火を止めるにはもっと精度を上げなきゃなんじゃ?

百十一個ひゃくじゅういっこならギリ行けたって言ってたよ」

 全世界の活火山ってそんなもんか?千五百せんごひゃくくらいありそうだが…

「おまたせー、じゃあ行こう!表参道おもてさんどー!表参道!」


〜9/15(月) 10時00分 残り約25分〜


 残り大体二十五分か。

 世界の火山の数を調べてみたんだが、

「百十一個って、日本だけかよ。なるほどな、それなら出来るのかもしれないか。

 …いや無理だろ」

「幸友、どうかしたか?腹でも痛いのか?」

「…シグ姉、もし俺が助けてって言ったら助けてくれる?」

 シグ姉は意表を突かれた顔を刹那せつな見せ、先程までの顔に戻ると、

「なんだ?水臭いな。当たり前だろ。弟の助けを無視する姉なんていてたまるか。」

 すぐ手を出すこの脳筋、実は滅茶苦茶スジの通った人間なんだよな。だから嫌いになれない。

「幸友。」

「なに?」

「なにか、私に話しておきたいことはないか?」

「…無いよ」

「そうか。」


〜10時20分 残り約5分〜


 俺と心呂は上空に居る。

 なぜか?それは国内の火山噴火を止めるためだ。

 シグ姉には「やっぱ腹痛いからトイレ」といって待ってもらっている。

「お父さん、雨友おばさん大丈夫かなぁ?」

「お前の生きている時代に居たんだ。大丈夫だろ。それにシグ姉と一緒に居る。心配ないさ。」

 そういえば…

「お前、味方の能力が使えるんだよな?」

「え?まぁそうだけど。」

「逆手に取ったら、味方の能力が分かるってことか。」

「うん。そうだけど?」

「例えば、サメの能力ってなんだ?使ってたろ」

「サメおばちゃんの能力は、『物体を操る能力』だよ。」

 だからこいつの呪文で誘拐犯は止まったのか。

「なら…幼は?」

「えーっと、『何でも作れる能力』だね。」

「チートやんけ」

「でもね、作るにはそれ相応の時間と霊力はかかるよ。」

 頭を使って能力を使わなきゃなんだな。なるほどなるほど。

「じゃあ、シグ姉は?」

「無いよ。」

「能力が無いこともあるのか。」

「いや?能力は潜在的に人類の中にあるって言うけど。」

 じゃあなんでシグ姉の能力は無いんだ。

「無いっていうのはね、『無い』んだよ」

 何を言ってるの?この子は

 能力が無い事は無いのに、シグ姉の能力は『無い』?ん?頭が痛くなってきた。

「お父さん、能力ってなにか知ってる?」

「さあな。そいつにしか無い個性的なものか?」

「ま、そんなとこ。それが時雨おばさんには無いの。」

「じゃあ、シグ姉は凡庸ぼんようってことか。」

「いや、凡庸ってのもちょっと違うんだけど」

 じゃあなんだよ。

「普通、能力は誰でも持ってるでしょ?でもそれを時雨おばさんは持ってない。それが時雨おばさんにしか無い個性だよ。」

 なるほど、わかってきたが…そんなのこじつけだろ

「能力がないってことは極端な話、シグ姉のフィジカル一つで戦うってことか?」

「そうだよ。だから能力がない人は鍛えれば鍛えるほど、伸びていく。リミッターがないんだよ」

「俗に言う、『フィジカルギフテッド』ってやつか。」

 そんな時だった。

 ゴゴゴゴゴゴゴゴ…

「来た!お父さん、準備して!」

「よし来た!」

 今地球に向かってチョップをしたならそのまま地球が真っ二つになるんじゃないかと言うほどの轟音が響き渡り、上空なのにもかかわらず、空間が揺れている感覚に襲われる。というより実際揺れている。

 作戦としてはこうだ。俺がフォッサマグナを境として西日本。心呂が東日本を担当。

「うぐ、これキツイぞ…」

「嘘、霊力足りなくなったんですけど!」

 すかさず俺が心呂に霊力を分け与える。

「お父さん、なんで三十秒使っただけで二万も持ってかれなきゃいけないの?!」

「え?普通じゃないのか?」

「普通なもんか!普通は三十秒使いっぱなしにしても百も使わないよ!」

 どうやら能力や可能力の強さに合わせて消費する霊力も変わるらしい。

 俺は心呂に浮いていられるだけの霊力を分け与えて、噴火阻止に専念する。

「うおおお!可能力発動!日本の活火山の噴火よ、終了しろ!」

 俺がジェットコースターに乗ったときより大きい声で叫んで五秒ほど経ったろうか。轟いていた音はたちまち止まり、上空から見る分には噴出物も見られなかった。

「成功したのか…。」

 そんな感じで安堵あんどした瞬間だった。

「お父さん、あれ!」

 心呂が指を指す方向には、宇宙のような穴が広がっていた。なんかちらちらあの穴から出てきている気がする。

 もちろん、心呂が指したのは空ではない。形容するなら…富士山の方だ。

「世界にバグが起きたのか…!」

「ねえ!お父さん!なんかヤバいんじゃない!?あれヤバいんじゃないの!?」

「落ち着け!とりあえず下に降りよう!」

 そうして俺達はシグ姉たちのもとへと急降下を始めたのであった。


 上空から見るのとは違い、地上は荒れに荒れていた。

「こりゃひでぇな…テレビで見たやつみたいだ。」

 ほとんどの建物は倒壊しかけ、道路は隆起し、人々はパニック状態になっていた。

「お父さん!あれ!」

 こいつが指を指す方は何かしら大事件があるとしか思えない。いや、大事件があるから指を指すのか?

 まあ、なんとそこには、シグ姉にしがみついて建物の欠片が落ちてくるのをただ待っている幼一行(いっこう)が。

「くっそ!間に合え!」

 もう事件のうりょくじけんは起こり始めているんだ!バレたって良いだろう!

 俺は奴らを庇うようにテレポし、落ちてくる瓦礫をエネルギーバリア的なもので受け止める。

「幸友!?な、なにだよそれ!」

「シグ姉、日本語おかしいよ

 とにかくっ!二人を連れて心呂について行って!」

「わ、分かった!後で絶対ワケ聞くからな!」

 降りてくる心呂。

みんな、スクランブル交差点に!

 ここに居る皆さんも!渋谷スクランブル交差点に避難してください!」

 スクランブル交差点は俺が定めた避難場所だ。あそこなら広いから、多分大丈夫!

 そう思い、俺は宇宙的な穴を見つめるのだった。

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