第五話 未来人
未来人。
それは、かの猫型ロボットのような存在。しかし、自分の子供がそれであるのはかなりの事件だ。俺が生きている間に一般人が囲え入り浸りができるようになってしまうからだ。
そんな未来人はやはりと言うか、なんというか、俺の娘だったわけだ。
「お前、誰だよ。」
俺は俺の娘を自称する女に質問を投げつける。
「あぁ、そうだった。今は過去だよね、
私は心呂。【友少心呂】。未来から、来ました~よろしくね」
もう疲れたんだけど…
だが、これはかなり使えるぞ。未来人ともなれば、どう動けば良いか分かるかもしれない。
「お前、未来人と言ったな。ならこれから起こること分かんのか?」
俺のその問いかけに応答する心呂。
「当たり前じゃないの!私は歴史だけなら誰にも負けないわよ!」
だけ?それ以外はダメってことか?…まぁいい。歴史ならいいんだ。
「心呂。俺はこれから起こるある事件を知りたいんだ。」
「ふーん、そういえば、今っていつ?」
「二〇二五年の九月十二日」
その日付の告白に、心呂は目をまん丸くして、
「えっ!能力事件の四日前ってホント!?」
「そうだ。東京に避難したいんだが、その後の最適行動ってなんだ?」
「お父さんが「ピンクのやつの提案を訊いていたら助かった」って言ってたのは聞いたことあるけどねー、分かんないや」
ピンクか…ん?俺は目の前のやつの髪を凝視する。
「何でもそのピンクのやつってのは未来人らしくてね、私もあんま知らないんだよ。会ったこと無いし。」
うん、こいつじゃね?
しかし心呂自身は気づいていないのか?
「そうか。やっぱり起こっちまうんだな。」
そんな折、玄関から物音がした。
「ただいまー!お兄ちゃん居るのー!?」
サメが帰ってきた。くそ、この未来人がバレたらめんどくさい、どうしたものか…
「おい、心呂、なんか透明化とか無いのか?」
「無いわよ。ていうか、待って、今の雨友おばさん?」
「黙ってろ!可能力、透明化!」
そう言って俺は咄嗟に心呂に透明化をかける。
「お兄ちゃん?誰か居るの?」
「心呂、お前黙ってろよ!」
口を抑えているのか、こもった声で「ウンウン」と言っている声が聞こえる。
ガチャ…
俺はいつもこのドアの音に絶望を感じているような気がするな。
「なんでこんな早いの?」
「いやな、学校で職員がなんだからしくてな?早帰りだったんだよ。」
「ふーん。」
「おいサメ、この三連休どこか行きたくないか?」
「え?行きたい行きたい!どこ行くの!?」
「東京」
「わーい!!」「はー?」
…ん?今なんか声が二重になってなかったか?
するとサメの後ろからシグ姉が出てきた。
「幸友、東京なんて嫌だぞ。静岡のおまちで遊べばいいじゃねぇか。」
「いや、東京じゃなきゃダメだ!」
「いやだ!」
「どうして!」
俺とシグ姉の口論はヒートアップしてきたが、それを止めるように、
「待って、お兄ちゃんお姉ちゃん!」
「だが…サメ、東京に…」
「お姉ちゃんの言い分も訊いたら?」
中学生のちびっ子に叱られてしまうとは。
「た、確かに…」
「そうだぞ、幸友。」
シグ姉はにっやにやして俺をバカにするような顔をしている。
こいつぅ〜、調子に乗りやがって!ブッ殺すぞ!
「わーったよ。なんで東京は嫌なんだ?」
「私のカフェがあるからだ!」
そういえばそうだったな…
「だとしたら、カフェのあるところに行かなければいいじゃないか。」
「あ、そっか。」
はい?
「お前頭良くなったな〜!」
こいつそれに気づいてなかったのか?
「ほんとに頭の悪い姉を持つとひどいな。困ったものだぜ。」
「おいその頭の悪い姉って誰のことだ」
「お前以外居ねえよこの鳥頭」
「おー、決めた、お前殺す。玉付いてんだろ?逃げんじゃねぇぞ」
「ケッ!もうついてねぇよ!」
こんなかわいい少女は流石に殴れないだろ。
「あー、お前、自分が可愛いから殴られないと思ってるだろ。
悪いが私は完全男女平等主義者だ。お前を殴れるぞ」
「は?おかしいんじゃないのこの脳筋バカ!」
俺とシグ姉の二つの意味のプロレスを横目にサメは部屋から出ていった。
その晩。シグ姉のと口論もほとぼりが冷め、カフェの方に行かないという条件で東京旅が決行される運びとなり、俺は言い出しっぺということで東京行きの新幹線の切符をネットで購入している。
プルルル…
その時俺のケータイが唸り始めた。
「こんな時間に、誰だ?」
見るとそこには、『照島 幼』とあった。
そういえばあいつも誘ってたな。
「もしもし、幸友です」
「あ、幸友?私だよ〜
東京行ってもいいってことになったから、私も行くよー」
「分かった。チケットは取っておくから、明日の朝八時半に静岡駅集合で」
「りょ〜」
ツーツーツー…
「それよりさあ、あんたはなんで来たの?」
俺は心呂に問う。
「え、私?
私はねー」
心呂は少し考える仕草をすると、
「時空間移動の免停食らっちゃってさー、復活までここに居ようって思ったの。」
「時空間移動にも免許は必要なのか、面白いな」
「試験に受かれば小学生から取れるんだけど、滅茶苦茶難しくてさ、ま、私は歴史項目は満点だったけど。」
「すごいな、俺でも取れるかな?」
「作ったのお父さんだけどね」
未来の俺よ、簡単にしちゃダメだ。こいつみたいなバカが取ってしまう。
「で?いつ帰るの?」
「来週くらいには」
「免停の期間って短いんだな」
そんな話をしながら俺は寝ようとベッドに入ろうとするが、
「なんでお前が入ってんだよ」
「あったか~いんだもん」
「ここで寝ろ」
そう言って俺は床のフローリングを指差す。しかし心呂は、
「あ、ベッドで寝ていいのぉ?やっさしー!」
こいつ…
「ざけんな!俺のベッドだ、一緒に寝てやる!」
「きゃー!夜這い!娘に夜這い!」
「やっかましいわぁ!」
そんな感じで寝ることになったのであった。
森、線路。あの世界だ。
「ようバミ。」
バミは俺の目の前で、優雅に水菜さんとのティーパーティを楽しんでいるようだった。
「幸友か、まぁ座りなよ」
そう言い放ったバミが手を叩くと、どこからともなく椅子が現れていた。
まったく、不思議な世界だ。
「友希くん、昼間の能力すごかったよ。天界でも友希くんを一瞬見失ってしまったんだ。」
「あ、そうだ、今日めっちゃ疲れたんだが、能力って関係あるのか?」
「今日はその座学にしようか。」
バミは一つ笑みを浮かべ、指を鳴らす。すると、上からホログラムのようなものが降りてきた。
「キミは、どうやって生きていると思う?」
「きゅ、急だな。まぁ敢えて科学的に言うなら心臓などによって酸素が全身に送られているから…とか?」
「ま、正解でいいかもね。でも、真相はそこじゃない。
霊力によって人間は生きることができている。霊力によって心臓は拍動するんだ。」
霊力…能力、可能力を使う際に使用する力…だったか?
「だがそんな話聞いたこと無いぞ?」
「いいかい、霊力は僕ら、君たちの体を動かす動力源なんだよ。
だから、能力で使いすぎると、動けなくなる。」
「使いすぎると死ぬってことか!?」
「安心して、生きるための霊力を使い切ってしまうことはない。だから使いすぎで死ぬことはない。大体そうだね、一日千五百あれば生きれるかな、寝たきりだけど。」
「そりゃ何だ、生存本能か?」
「ある意味そうかもね。」
俺はステータスを出して消費した霊力を調べる。
初期から四百ほど減っている。一回使うと百使うのか。俺の最初の霊力が大体二十八億程だったから…二千七百万回くらい使ったら倒れちまうのか。
「そういえばだが、魔力と何が違うんだ?」
「魔力はその名の通り魔法専用の力さ。
魔法は霊力魔法と魔力魔法の二種類あってね。
威力は断然魔力魔法。霊力魔法はあまり使われないから、意表をつけるってメリットがあるけど、使いこなすのには時間が必要。魔力魔法は魔力のコスパもいいし、強い。霊力魔法を使う意味がないんだよ。
ま、魔法の効かないやつには霊力魔法は有効だけどね。呪文が一緒なだけで全くの別物だから。」
「なら霊力魔法にはあるが魔力魔法にはないのってあるのか?」
「あったかなぁ…一、二個あんじゃない?
逆ならたくさんあるけどね。魔力にあって霊力にないものは。
爆裂魔法とかがそうだったような…」
「いろんな魔法があんのね。」
「友希くん、君は可能力の使い方に慣れてきたようだね。」
「あぁ!なんか簡単でした!言葉にして、なった時の風景を想像する…みたいな」
「はは、センスの塊だな。私も負けないようにせねば。
時に友希くん。禁忌を知っているか?」
「いや?知りませんな。」
「能力、可能力で、人間が人の命を扱うことは許されていないんだよ。」
「だが法律があるわけじゃないんだろ?なんでそんなことを忠告するんだ?」
「『縛り』があるからだよ。」
縛り?
続ける水菜さん。
「能力の縛りを破った者には、死が待っているんだ。
三日以内の確実な死がね。」
なにそれ怖い。
「その縛りってなんだよ、まさか俺破ってないよね?」
「安心しろ、縛りはたった一つ。『直接』他人の生命を扱ってはならない。
つまり、能力で『蘇生』、『殺害』はできないんだ。
言霊で「死ね」とかやって殺すのはダメ。」
「へー、そうなんだ」
――私が蘇生させたんだよ。久しぶりにあんな霊力使ったよ。全く。
なんだ、この違和感。
霊力使った?能力じゃないのか?蘇生?水菜さんは、三日以内に死ぬのか?
「…水菜さん、あなた、俺を生き返らせませんでしたか?」
「ああ、したが?」
「じゃあ…後三日以内に…!」
「ん?…あぁ!はっははは!」
急に笑い声を上げる水菜さん。
ついに狂ってしまいましたか?
「友希くん、私は神だ。命に触れてはいけないのは人間だけだよ。
何より、私達は一回死んでるようなものだしね。」
「…心配して損しました。」
なんだ、そのオチは、よわいなぁ…
そんなことを思いつつ、実際、面白かったり良かったりしたオチの時に今のような反応ができるかと聞かれたらできないであろうし、こんな反応ができているうちは平和なのかもしれないな。




