第三話 夢幻の世界には?
俺は、今、とても感動している。
風呂に入った俺は、湯船に浸かりつつ、ため息をつく。
「かぁ~、なんだか今日はやけに疲れたな。」
情報量が多かったというのもあるが、身体的にも疲労した気がする。
ザバァン…
湯船から上がり、体を洗おうと鏡の前に座る。
「うぉ、でっけぇ…初めて見るしっかりしたマジモンがまさか自分の体とはな。」
ここで、最初の感想に戻るわけだ。
「…ん?」
視線…?いや、気のせいか。
風呂から上がり、自分の部屋でくつろいでいるんだが、 あの後…妹から…その、パ、パンツを貰った。もちろん未使用だ!
なんか、まぁ、色々デリケート、らしい。
その、なんていうか、男って楽なんだな。色々。
じゃ、夜も遅いし、寝るか。
「うーん、今何時?」
俺は起きた…のか?
しかし、何かが違う。
「ん?わっ!!なにここ!」
ここ、見たことがある。木々に囲まれ、永遠の線路…現代語の時の夢の世界!
俺はベッドから身を下ろしたところでもう一つの異変に気がついた。
「てか、俺男の体じゃん!」
そう、体が男に戻っていたのである。
「とりあえず、未開の地でのイロハ。まずは散策だ。」
俺はこの夢の世界、いや。この夢幻の世界の探索を始めた。
歩き始めて三〇分ほどたっただろうか。いくら線路を歩き続けてもいつの間にか俺のベッドのところに戻っている。まるでゲームみたいに。
そんな中、俺は昼にも聞いた声を再び聞くことになった。
「やぁ、幸友。今回は、ボクの思い通りだね。」
「…?」
背後から聞こえた声に振り向くと。そこに立っていたのは…
ネコ耳が生え、モッフモッフの二股の尻尾のある獣人と、背の高い寡黙そうな美人の女性。
獣人の方は「ボク」と言っていたが、見た目的に女、いや雌?どっちでもいいけど。
「あんたら、名前は?」
「ボクは【チシュ・バテミト】。「バミ」って皆からは呼ばれているよ。
ボクはキミの守護神。一応神ってやつ。」
「私は【初ヶ谷水菜】。普通の神だ。なんとでも呼ぶがいいさ。」
「あぁ…そう。」
「ここはボクの個神世界」
「こしん?」
「簡単に言うとボクの世界。
水菜は友達。」
なるほど、わからん。
「幸友の願いは聞こえた。キミを女の子に変えたのはボクだよっ」
真っ白な歯を見せつけるように「ニッ」と親指を立てるバミ。
「余計なお世話だ。」
「でも良かったでしょ?女の子になれて
だって男の頃のキミはブサイクだし…」
「やかましぃわ!」
するとバミは、パチンと指を鳴らした。
その途端に、俺の体はまるでどっかの魔法戦士のように光に包まれた。
「んぁ?うおっ!女になってる!」
バミのスナップによって俺の体は女に変わっていた。
「うんうん。やはりこちらのほうが良いな。」
首を縦に振る水菜さん。
「さて、話は変わるけど、キミをここに呼んだのはボク。」
「あっそう。それはいいけど、なんで?」
なんなんだ、こんなストーリー性のある夢。
俺の質問に答えるようにバミはニヤリとほくそ笑み
「それはね、《《ある事件》》が関係しているんだよ。」
ある事件?
俺のそんな心の疑問に答えるようにバミは続ける。
「ある事件ってのはね、[能力事件]さ。」
「それで、なんで俺を呼んだんだよ。そんな事件に関係ないだろ」
能力事件か…何だそれ?
「いやいや、大アリだよ、大アリ」
「?」
「幸友、キミ、今日の学校でなにか不思議なこと起こらなかった?」
「いや特に…あ!体育のとき!」
「ご名答。それね、能力が解放したからだよ。」
「なるほどなるほど…つまり俺は選ばれしものってことかぁ!」
「いやいや、キミ死んだんだよ。」
はぁ?
バミは話を続ける。
「能力ってのはねぇ、[解放条件]が必要でね、キミの解放条件は『一回死ぬ』だったんだよ。」
「いや、でも今生きてるけど。」
すると水菜さんが横から入ってくる。
「私が蘇生させたんだよ。久しぶりにあんな霊力使ったよ。全く。」
「あ、あの話についていけないんだけど…」
「安心して、こっからが本題だよ。」
バミは水菜さんに同調するように言う。
安心って知ってる?
「[能力事件]。それは通称の呼び名だ。
本当の名前は、[全世界一斉火山大噴火事件]。」
何だその物騒すぎる名前。
水菜さんは、俺の心を見透かしているように続ける。
「物騒な名前だけど、実際に起きることを見たらそんなこと言えないと思うよ?」
「どういうことだ?」
水菜さんは続けて
「これは私の予知夢なんだけどね…今年の九月十五日に、それは起こるんだ。
それによる被害は甚大。この日本の被害は世界トップレベル。友希くんの今いる静岡は一番。ちなみに九州地方は地獄絵図。」
「九月十五って…後四日じゃないですか!」
俺が寝たのが九月十一日の木曜日。十五日は三連休のラストだ。
しかし、まぁなるほど、全部わかったぞ。
「つまり、俺の授かった超すご能力で世界を救って、ってことだな!?」
「半分正解、半分間違いってとこかな」
水菜さんは俺にそう告げて、その理由を話し始めた。
「胸の中心を押してみろ。能力を得た友希くんならば自分のステータスが見えるだろう」
そう言われて俺は胸の付け根のあたりを軽く叩く。
「うわ!なんだコレ、まじでゲームみたいだな!」
出てきたステータスには、能力、可能力、霊力、魔力、フィジカル、体力、の六つが示されていた。
…可能力って何だ?
「友希くんの能力、はっきり言ってあまり強くないんだよ。」
そう。水菜さんの言う通りだ。俺の能力は『身体能力を上げる能力』。能力と聞くと強いが、たしかに火山の噴火を止めるには少し物足りない。てか死んで手にした能力がこんなちゃっちい能力とかどうなってんだ。
「なるほど、今のが間違いなんですね。」
「その通り。でも世界を救ってほしいってのは本当だ。」
「こんな能力で救えって無茶にも程があるんだが。」
するとバミが水菜さんの隣から話してくる。
「だから呼んだんだよ。」
「予知の話だけじゃないのか?」
「あぁ、幸友、ボクと契約しないかい?」
け、契約?
バミ…こいつは一体何を考えているんだ。
「ボクら天界人は下界に降りるには相当なパワーを消費するんだ。だから下界の人間、大体は自分の守護下にいる人間とだけど、その人間と契約するんだよ。」
おい、それって…
「めっちゃカッコイイやんけ!
よし、契約だ!契約しよう!」
「いいねぇ、じゃあ、代償を決めるんだ。」
「代償…」
な、何だ、代償って…俺の体か?
「契約だからね、取引のようなものだから。
大丈夫だよ。そんな高価なものは代価にしないから。」
代償なのか代価なのか、統一してくれ。
「そうだねぇ、じゃあこのラインナップから選んでね」
そう言い、バミは俺に『MENU』と書かれたリーフレットをよこした。
そこに書かれているのは
「えーと?なになに…
『血液、精子、卵子、眼、体の所有権』…?」
うおぉぉ!ザ・契約っぽくてかっけぇ!
「何にする?」
ニッコニコしながらバミは見てくるし、絶妙な笑みを浮かべて水菜さんは隣に立っている。
眼ってのはヤダなぁ、見えなくなるんだろ?体の所有権もなんだか…子種も気味悪い…ならばここは!
「決めたぜ…、『血液』だ!」
すると水菜さんとバミが
「友希くん、賢明な判断だな。」
水菜さんは俺を褒めている。
ありがとうございますっ!
「血液か、いいね、悪くない!上等!」
バミは急に俺の太ももに飛びつき、
――ガブッ!
「いっだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁい!!!!!!!!」




