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恋も幸せも彼女しだい  作者: テイク
第一章 出会いは初夏のあの日から
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第五話  復活

 5月19日、水曜日。昨日の風邪も完璧に治り完全復活だ。それを祝福するかのように空は晴天だ。すがすがしい。この季節は本当にいい季節だ。本当にいい季節だ。この時期から夏にかけては僕の好きな時期だ。とりあえず弁当を作り学校に行く準備をする。病み上がりなので少し軽めの弁当だ。それとお返しのクッキー潰れないように鞄にいれる。さてシュレディンガーにえさをやるとしようかな。


「シュレディンガー!」


 呼んでみたがこない。もう一度呼ぶがやって来る気配はない。


「シュレディンガー?」


 どうやらシュレディンガーはまたどこかに放浪に出てしまったらしい。まったくいい性格してるよ。この放浪癖はなんとかならないものかと思うが、まあ、無理だろうな。治るようならとっくに治してるし。まあ、それがシュレディンガーのシュレディンガーたる所以なのだが。


「さてと今度はどの位で帰ってくるかな」


 今度は一ヶ月以上帰ってこない気がする。シュレディンガーの放浪癖は放浪するたびに酷くなっていってるからな。まあ、いつもどおりひょっこり帰ってくるだろう。心配せずに待つとしよう。


「いってきます」


 家を出る。


「おはよう」

「ああ、おはよう」


 いつもどおりの表情の佐藤がそこにいた。


「もういいの?」

「ああ。心配かけたな」

「別に心配なんかしてないわよ」

「そうか。おっと先に渡しておくほら」


 クッキーの包みを差し出す。


「なにこれ?」

「クッキー僕の手作りだ。お見舞いの礼」

「そ、もらっておくわ」


 佐藤は受け取ってくれた。


「なあ、佐藤」

「何」

「いや、さ、何でお前そんなに人と付き合うのが嫌なんだ?」

「別に。どうしてそんなこと聞くの」

「なんとなくなんだがさ。お前が怖がってるように見えたからな」

「…………」

「いや、なんとなくだって。なんとなくな。もう少し人と付き合ってもいいんじゃないか? 三上とか栗原とか僕とかなら何があってもお前から離れてはいかなと思うぞ。特に三上は」

「…………」


 佐藤に届いたのだろうか。そんな風に思っていると。


「おっす悠」

「おはよう悠」


 三上たちが来た。


「ああ、おはよう三上栗原。ほれ」


 三上と栗原にもクッキーを投げる。


「なんだ?」

「クッキーだよ」

「手作りか?」

「ああ」

「ヤフー、お前のクッキー無駄にうまいからな」

「無駄は余計だ無駄は」

「でもありがたくもらうよ」

「ああ、昼にでも食ってくれ」

「そうするよ」


 そうだシュレディンガーがまた居なくなった事を二人に言っとかないとな。


「そうそうシュレディンガーの奴またどっか行ったみたいだ」

「またかよ」

「今回は結構長く居たんじゃない?」

「一週間くらいかな」

「まあ、今度は1ヶ月くらいすれば帰って来るだろ。な、栗原」

「そうだね。最長記録遂に更新だね」


 こいつらもシュレディンガーの習性はわかっている。


「おはよですよ~」


 珍しいなこんなとこで木山に会うなんて。


「おはよう木山」

「おはよっす木山さん!!」

「おはよう木山さん」

「珍しいな木山とこんなとこで会うなんて」


 いつも木山は人より早く学校に行くから会わない。


「いろいろあるんですよ。いろいろと。それにしても――」


 木山が僕達を見回す。


「――面白い面子ですね」

「おもしろい?」

「ええ、これはまったく面白い面子です」

「お人好しにツンデレにバカに天然とこれだけ違う属性が揃ってるのは珍しいですよ」


 それは誰が誰なんだよ。


「誰がツンデレだ!!」

「それに三上が反応するのか!?」


 なんでだよ。お前はバカだろ。


「何で私がバカなのよ!!」

「それに何で佐藤が反応するんだよ!!」


 お前はおそらくツンデレだろ。僕にはわからないけど。

 

「僕は天然だね」

「なんで……いや、合ってるか」


 栗原はボケなかった。


「さて、じゃあ、行きましょう。ここで突っ立っていても何も変わりませんし」

「ああ」


 歩き出す。本当に珍しい光景になっている。


「ああ、そうです。昨日のテレビ見ました?」


 木山が僕に話しかけてきた。


「いや、何かあったのか」

「ええ、面白いのがあってましたよ。なんと地球一不思議」

「あと六個は!?」

「なぜ、我々は人なのかを三時間延々と議論するテレビでした」

「まったく面白くない!!」

「いえいえ、途中でだんだん議論者が減っていくんですよ。そして最後には誰もいなくなって終わりです」

「斬新!!」

「一体消えた人たちはどこに行ったんでしょうね」

「それが一番の謎だよ」


 それを解明してくれよ。てか、ただ自宅に帰っただけなんじゃ。


「ああ、それなら僕は録画したよ」


 なぜ録画した栗原。


「面白かったよね。あの爆発」

「爆発!?」


 一体そのテレビで何があった。


「俺も見たぜ」


 三上まで見たのかよ。


「すごかったよなあのサッカー」

「お前のは絶対番組が違う!!」


 ひとつの番組で内容が一致してないぞ。本当になにがあった。


「まあ、そろそろ学校ですので話はこれくらいに」

「せめて番組名を言えー!!」


 結局番組名はわからないまま教室に行ってしまった。気になる。そのまま一時間の授業に突入。

・

・

・

 はあ。まったく集中できなかった。なんだよ昨日のテレビ。昨日寝てたよ。完璧に病み上がりだったのもあってな。


「さて、昼休みだ。行って来い悠」

「またか」


 半ば習慣化しつつあるこの佐藤への誘いだが。


「いやよ」


 予想通りというかいつも通りというかでやっぱり断られ。


「まあ、アンタならいいわよ」


 僕だけ許可されるといういつもどおりの展開へと――。


「ちょっといいです?」


 ――行かなかった。木山が登場した。


「何?」

「私もご一緒してもよろしいです?」

「別に」

「どうもです」


 本当に珍しい光景だ。あの佐藤が他の人間(僕以外)とご飯を食べる光景が見れるなんて。どういうことだ。てか、佐藤それなら三上たちも許可してやれよ、三上が泣いてるぞ。


「では、いただくですよ」


 木山の合図で食べ始めた。


「それで何でアンタ来たの」


 それが人にものを聞く態度かよ佐藤。


「ん~別に何も取材対象があなただからとかそんなのでもないです」

「そうなのかよ!!」

「冗談です」

「冗談かよ!!」


 まったく冗談に聞こえないぞ。


「まあ、たまにはあなたたち二人と食べてみたいと思ったまでです。それに私としては佐藤さんと仲良くなりたいですからね」

「勝手にすればいいじゃない」

「はい、勝手にします」


 佐藤は変わったような気がする。少しだけ丸くなったそう思う。それが僕の功績とはそんなたいそうなことは思わないけど。それはよかったなと素直に思う。これで佐藤にも友達が増えてくれればいいのだが。って僕なにを考えてるんだよ。


「これで佐藤さんの友達二号ですね」

「僕は一号かよ」

「目指せ友達百人」

「小学生かよ!!」


 実際友達百人いるやつっているのだろうかいたらいたで怖いな。


「そうですね。まあ、五人くらいで妥協しましょう」

「妥協しちゃった!!」


 まあ、それくらいが妥当と言えば妥当なんだろうが。佐藤の意思無視してんじゃないか。いいのかこれで。


「じゃあ、さっさと終わらせちまいましょう。そこのバカ二人来るですよ」


 三上がはちきれそうな笑顔でやって来た。栗原はいつもどおり来た。


「やったぜ!!! ついに呼ばれた」

「あ~はいはい、それならさらに朗報です。現在佐藤さんの友達募集中です」

「俺がなります!!」

「はい三号。そっちの栗原もどうです?」

「そうだね」

「はい、四号」


 いいのかよこれで。佐藤は黙々とコンビニ弁当食ってるし。


「じゃあ、みんなで食べよう、佐藤さんもそれでいいです?」

「勝手にすれば」


 もう諦めたのか。それとも何か思うところでもあるのか。それとも、僕の言葉が届いたのか。佐藤は許可した。はじめて佐藤がこんなに大勢で弁当を食べるのを見た。


 少しだけど、少しだけ、佐藤が楽しそうに見えた。いつも仏頂面だが少しだけ楽しそうに見えたんだ。

・

・

・

 午後の授業も終わり放課後。


「そこのお二人さ~ん」


 木山がやって来た。


「なんだ?」

「新聞部に入りませんか~?」

「新聞部っていま廃部中だろ」

「ええ、これから復活させますので。それであなたたちもどうかと思いましてね」

「僕は別にいいけど」


 佐藤はどうかわからない。


「佐藤さんはどうです?」

「…………別に、別に入ってもいい」

「よかったです」

「俺も入れてくれ」


 三上が土下座して行った。


「それなら僕もいいかい?」

「いいですよ、これなら部活申請できるです。生徒会長に言えるですよ」

「そうかよかったな」

「とりあえず正式な部になってから活動開始なので先にかえってもいいですよ」

「これから生徒会に行くのか?」

「そうです」

「なら僕も行こうか?」

「おお、それは助かるですよ」

「私帰る」


 佐藤は帰っていった。まだ、まだ、時間は必要か。


「さあさあ、善は急げ、急がば回れ!!」


 そんなわけで木山と供に生徒会室に。そういえば生徒会室に来るのは初めてだ。


 コンコン


 四階の一番端の教室に生徒会室はひっそりとあった。扉をノックする木山。


『入れ』

「失礼するですよ~!!」


 中に入る。そこには黒髪の気の強そうな女生徒会長がいた。他の役員は帰ったのかいない。


「木山かなんのようだ?」

「新聞部を設立するですよ」

「ほう、ということは部員がそろったのか」

「ええ、おかげさまで」

「まさか、一日でそろえるとはな、まあいい承認してやる。ただし会議していろいろ決めないといけないからな最低でも一週間は待ってもらう」

「了解ですよ~」

「さて、その後ろの狩野悠が部員というわけか」


 な!? 何で僕の名を。


「ほかにもいるですよ」

「おそらく、佐藤美鈴と三上喜助と栗原直哉だろう」


 なんでそんなことがわかる。


「ふっ、私を誰だと思っている。私は生徒会長の中宮風里(なかみやふうり)だぞ。この高校の生徒くらい全員把握している」


 なんて人だよこの先輩は。


「どの生徒が何をしているのか考えているのか。その生徒の情報もすべて持っている」


 プライベートの欠片もねえな。


「安心しろ誰にも話すことはないし。悪用する気もない。生徒たちの為にしか使わない。私は人の役に立つために生まれてきたのだからな」


 そこまで言い切れる人初めて見たぞ。だが、こういう先輩だからこそ生徒会長なのだろうと思った。


「それじゃあ失礼しましたですよ~」


 木山と供に生徒会室をでる。


「相変わらずすごい人ですよ」

「そうだな」


 ここまでくれば異常だが。


「でも、苦労もあるそうです」

「そうだな。ああいう人だからこその苦労とかがありそうだな」

「まあ、でも、これで新聞部が出来るのでよかったです」

「ああ、そうだな」

「じゃあ、かえるですよ」


 珍しく木山と二人で帰ることになった。


「なあ、ずっと気になってたんだが」

「はい?」

「昨日あったテレビってなんだ?」


 ずっと気になってて授業に集中できなかったんだよな。


「ああ、それはですね。世界にひとつだけの謎です」

「おい!!」

「まあまあ、昨日の新聞のテレビ欄をみるです。三時間スペシャルであってたのでわかるですよ」

「わかった見てみる」

「はいです。じゃあ、私はこっちですのでさいなら~」

「ああ」


 十字路を右に曲がる木山。僕はそのまままっすぐだ。


 帰宅。


「ただいま~」

「あ~、おっかえり~」


 帰ってくるはずのない声が聞こえた。女の声だ。


「………………なんでお前がここにいる」

「あはは逃げてきた」


 リビングには黒髪ポニーテールの女がいた。若々しい健康美に溢れているってそうじゃない。


「逃げてきたってお前」

「だってあの学校毎日毎日聖書読ませるんだよありえなくない」

「知らん」


 僕の家でこんなにくつろいでいる女は幼馴染の黒江莉子(くろえりこ)。中学までは一緒だったのだが、莉子の性格を直そうとした莉子の両親により全寮制の女子高へ。なんか宗教系の学校とか言っていた。そして現在その学校は休みでもなんでもないということだ。つまりコイツは逃亡者ということだ。


「さて、文子さんに電話しよう」

「母さんにだけは電話するのやめて!」


 土下座してくる莉子。


「お前にプライドはないのか」

「プライドなんかあったらこんなことしないよ」

「おい」

「お願い、匿って」

「そうは言うが…………」


 プルルルルル


 電話だ。


「絶対母さんだ~」


 そそくさと莉子が二階へと逃げていく。


「もしもし」

『ああ、悠君?』

「はい。そうですけど何かあったんですか?」

『うちの莉子がそっちに行ってない? あの子ったらまた高校から逃げたのよ』

「あはは、また莉子も無茶しますね」


 莉子が無言で頭を下げまくっている。はあ~、仕方ない。ここで幼馴染を見捨てたら後味悪いし。


『それで頼れるのはあなたしかいないと思ってね。だから莉子来てない?』

「いえ、来てませんけど」

『そう?』

「そうですよ。あの莉子が僕のとこにそう簡単に来ますかね?」

『それもそうね。ああ、でも来たら教えてね、怒ってないから』

「はい、教えます」

『まったくあの子は無理矢理あの学校に入れたのが間違いだったのかしら』

「さあ、それは本人しだいです」

『そうね、じゃあね悠君。今度遊びに来てね』

「はい、今度」


 ガチャッ


「ありがとう悠!!」

「いいから引っ付くな暑苦しい」


 莉子を引き剥がしてソファーに座る。


「で?」

「で?」

「どうするんだよ?」

「どうって、ここにしばらくいるに決まってるじゃん」

「出てけ」

「え~!!」


 何で幼馴染と同棲せなあなんのや。


「関西弁になってるよ」

「うるさい」

「もう、いいじゃん。ここに居ても居るだけだし」

「じゃあ、掃除、洗濯、料理、全部お前がやるんだな」

「………………」


 莉子が顔を背ける。


「顔を背けるな。こっちを見ろ」

「…………私が家事できないこと知ってるでしょ」


 そうコイツは昔から家事的スキルが何もない皆無に等しいてか皆無。なので一人で留守番するときなどいつも僕のとこに来ていた。


「はあ~、わかったよ。好きなだけいろ」

「やた、ありがと」

「ただし…………」

「ただし?」

「ただし、自分のことは自分でやれよ」

「え~!!」


 これで莉子も帰るだろう。


「わかった」

「え?」

「わかった、がんばる」


 う、涙目で言われても………………あ~。


「わかったよ。もう、わかった。僕の負けだ。やってやるよ」

「ありがと~」

「こら抱きつくな!!」


 はあ~、どうなることやら。


 シュレディンガーが出て行った日。家にもっと厄介な猫が舞い込んできた。


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