第四話 風邪
翌日、5月18日、火曜日。昨日の天気が嘘のように晴れている。そんなすがすがしい日に僕は案の定風邪をひいていた。原因は明白昨日雨にうたれたままよく乾かさずに学校の授業を受けたことだ。佐藤を濡らさないためとはいえ完璧な自業自得だ。熱が上がり頭が朦朧とする。一応体温計で図ってみたら39度強。学校は休んだほうがいいな。皆勤賞を狙っていたのだが仕方ない。それにあの佐藤の笑顔を見れて相々傘が出来たんだ。お釣りが来るくらいだ。
「仕方ない素直に寝てよう」
学校にはさっき電話した。寝ようとしたときチャイムがなった。
ピーンポーン
まだ六時だ。誰か来るにしても早すぎる。
「いったい誰だ?」
玄関を開けると佐藤が立っていた。
「やっぱり風邪ひいたわね」
僕の姿を見て佐藤は言った。ん? やっぱり。僕は昨日そんなに具合悪そうだったのか? てかこれも予想済みなのかよ。
「すまん」
「何で謝んのよ。元はといえば私のせいでもあるんだから」
「いや、こっちの自業自得だろ」
「まあ、いいの、ほら傘返しに来たのよ。それと朝ごはん食べてないと思ったからつくりに来てあげたわ」
「いいってそんなことただの風邪だし。それにお前にうつすかもしれないし」
「反論はなし。原因の一端は私にあるんだからこれくらいさせなさい」
正直言って佐藤のこの申し出はうれしかった。以外に律儀な奴だ。
「食材自由に使うわよ」
キッチンでエプロンを着けながら言う佐藤。普段の僕なら幾分か反応するが朦朧とする頭では十分な反応が返せない。てか、それ聞く前から使ってんじゃん。料理を進めていく佐藤。てかこの光景を三上が見たら卒倒しそうだ。
三十分後、料理が出来たようだ。僕はその間少し眠っていた。だが、気分は一向に良くならず逆に悪くなっていくようだ。さっきよりも頭が朦朧としてきた。食欲もなくなったし。でも、せっかく佐藤が作ってくれたのだ。食べないと失礼だろう。
「はい、食べやすいお粥にしといたから」
「ああ、ありがと」
「…………」
「何してるんだ?」
佐藤がスプーンを持って隣に座った。
「食べさせてあげる」
「いや、自分で食えるって」
正直なところ微妙だが。食えないことはないだろう。
「駄目、アンタ今めっちゃきついでしょ」
「う」
「図星みたいね。だから、食べさせてあげるわ」
「何で」
「原因の一端が私にもあるからよ。あと借りは返す主義なの」
「そうか」
それを肯定と受け取ったのか佐藤がスプーンでお粥を掬う。
「ふ~、ふ~。はい、あ~ん」
「………………」
さて、これはどういうイベントなのだろうか。ものすごいことが今起こっているのではないか? と普段の僕なら思っただろう。しかし、生憎この時僕は病人だった。
「あ、あ~ん」
パク。
「…………よくわからん」
風邪のせいか味がまったくわからなかった。
「そう、まあいいわ。はい、もう一口」
「ああ」
こうして佐藤は全部食べさせてくれた。あとで思い出したとき物凄く後悔するのだが病気でテンションがおかしかったのだろう。まったく気にならなかった。気になったのは。
「なあ、佐藤、その手の絆創膏なんだ?」
佐藤の手にはいくつもの絆創膏が貼られていた。
「なんでもないわ」
「そうか?」
朦朧とした頭では深く考えることが出来なかった。
「じゃあ、もう寝なさい。ただの風邪なら寝てれば治るだろうし」
「ああ、そうさせてもらう」
安直だが確実だ。
「私は学校行くわ」
「ああ、助かったよ」
「帰りに様子見に来て上げるからきちんと水分とって寝てなさいよ」
「わかったよ」
「じゃあ、またね」
「ああ」
佐藤が出て行った。
「さて、寝よう」
二階に行き布団にもぐる。中にシュレディンガーがいて心地よい暖かさだ。
「おやすみ」
僕の意識はすぐにやみに沈んでいった。
****
登校して自分の席に座る。まだHRまで時間がある。
「大丈夫よね」
あ~。私なに考えてんだろ。あんなバカのこと考えるなんて。
「それにしても最悪」
自分の手を見る。絆創膏だらけ。なれないことするもんじゃないわね。気づかれないようにするの大変だったじゃない。あのバカ。
「はあ~退屈」
「おい。佐藤」
「アンタだれ」
何かよくわからないちゃらけた奴が話しかけてきた。そういえばアイツとよく一緒にいる奴ね。うしろのおとなしそうな奴も。
「俺は三上喜助」
「僕は栗原直哉だよ」
「で、何か用」
「そうツンツンすんなよ。悠が休みってことを教えに来たんだよ。感謝しろよ」
「知ってるわよそんなこと。だから感謝しない」
「なんで知ってんだよ!!」
「昨日のアイツを見てたら嫌でも想像出来るわよ」
「へ~よく見てるね」
栗原って奴が何か意味深な顔をする。
「なにその顔」
「いや、悠は辛くても余り顔に出さないからね。よく見ないとわからないんだよ」
「何がいいたいの」
「佐藤さんよく悠のこと見てるんだなって思ってね。悠のことが気になるの?」
「なにそれそんなわけないでしょ」
何言ってんのかしらコイツ。そんなわけないじゃない。ただ、ちょっと気になるというかなんというか。
「そっか」
何その納得したような顔。何か全部見透かされてるみたいでムカツク。
「で、用はそれだけ? 用が済んだのならさっさと消えてくれる」
「なんて無愛想な女だ」
「はいはい、三上行くよ」
「チッ」
二人は自分の席に戻っていった。
「フンッ」
しばらくして冴えない担任が入ってきてHRが始まった。アイツ大丈夫かしら。
****
「ケホッ」
あ~暇だ。あれから寝続けて十二時、お昼だ。熱も下がり、具合もだいぶ良くなってきてきちんと考えられるようになってきた。
「もう、昼か。とりあえずなんか簡単なものでも作って食べておこう」
ベッドから起き上がりキッチンヘ。シュレディンガーは僕が寝ている間にどこかに行ってしまった。薄情な奴め。
「さて、何を作ろうか――ん?」
キッチンへ入るとラップをかけられた皿があった。見るとメモがある。
『お粥作りすぎたから置いておくわ。昼にでも食べなさい』
確かに中身はお粥だった。
「なら食べさせてもらうか」
温めなおしお粥を食べる。
「…………う~ん、まあまあかな」
お世辞でもうまいとは言えないがそれでもうまいと感じることが出来た。味はまったくおいしくないなのにうまいと感じられた。それはなぜだろうか。
「ああ、そっか。そういえば人にご飯作ってもらったのって何年振りだっけ」
そうか、だからか。少しだけ嬉しくなった。
****
昼休み。私はいつものように教室の端で一人コンビニ弁当を食べていると。
「あれ、今日はお一人なんですか~?」
メガネをかけた女子が私に話しかけてきた。
「誰?」
「私ですか? 私は木山秋子ですよ」
ああ、確か新聞部をやってる子か。
「何か用」
「いえいえ~。用というほどではありませんがこのところ一緒にお昼ご飯を食べている狩野悠さんがいないこの心境を聞きたくて来たんですよ」
「別にどうもない」
「なるほど狩野君がいなくて寂しいと」
「何でそうなるのよ!!」
「冗談ですよ」
「冗談に聞こえないわよ」
「まあまあっとさてと聞きたいことも聞けたのでおいとましますね」
木山さんが離れようとしたとき。
「おっと言い忘れてました。狩野君が狙いならさっさと告るですよ。狩野君を狙っている女子は意外に多いですからね~」
小声でそう言った。
「な、何バカなこと言ってんの! そんなわけないじゃない!!」
「まあ、あなたがそう言うならいいんですけどね。それじゃ」
木山さんが去っていった。
「バッカみたい」
何で私があんな奴に告白しなきゃいけないのよ。
「わけわかんない」
弁当を片付けて窓の外を見る。
「…………」
今日はいつもよりつまらないな。
****
昼のあと再び寝るという極楽を行い起きたときには既に夕方。熱も完全に下がり気分もいい。
「ふう、とりあえず完治だな」
ピーンポーン。
「ん、誰だ?」
ドアを開ける。
「よう、悠来てやったぜ」
「違うでしょ三上。お見舞いだよ」
「三上に栗原か。なんだってお見舞いか」
「そうだよ。その様子だと大丈夫みたいだね」
「ああ」
「じゃあ、見舞いはいらなかったな」
「でも、三上が行こうっていったじゃないか」
「ちょ栗原それは言うなよ!! あ~ほらこれ見舞いだ」
コンビニのプリンとかゼリーとかがごろごろ入った袋を渡してきた。
「ありがとうよ」
「ああ、ありがたく食え」
「じゃあ、あまり長居するのも良くないから帰るよ。明日はこれる?」
「ああ、明日は行くよ」
「じゃあ、また明日」
「ああ」
「さあ、三上帰るよ」
「ああ。じゃな」
「じゃあな」
三上と栗原が帰っていった。リビングに戻ると。
コンコン
窓がノックされた。カーテンを開けると。
「なんでそんなとこから入って来るんだよ」
佐藤が窓の前にいた。
「そんなの私の勝手でしょ!」
「…………」
どうせ三上と栗原がいるから入ってこれなかったんだろ。
「それよりあげてもらえないかしら」
「あ、ああ」
「ありがと」
靴を抜いでリビングに上がってきた。玄関に靴を置く。
「で、熱は下がったみたいね」
「ああ、ただの風邪だったからな」
「そう、はいこれ」
佐藤がビニール袋を突き出してきた。
「なんだ?」
「いいから受け取りなさい」
言われたとおり受け取る。
「じゃ!!」
「あ、おい!」
佐藤はそそくさと帰っていった。
「…………」
なんだったんだ? 袋の中を見るとこれまたコンビニのプリンとゼリー。
「お見舞い……なのか?」
それならそうといってくれればいいのに。
「まったく」
まあ、ありがたいな。
「さてと食べるかな」
さっそくお見舞いの品を食べることにした。
「うん、うまいな」
誰かにこんなものをもらったのは久々だな。
プルルルルルル。
「誰だ?」
電話を取る。
「もしもし」
「おお悠か」
「父さん。なに?」
「いやな、まだ帰れそうにないんだ」
「そんなに忙しいの?」
「ああ、かなりな、まったく南雲財閥は人使いが荒い」
「あはは」
「てなわけでもう少し寂しい思いをさせるが我慢してくれ」
「大丈夫だよ。僕ももう17だよ」
「そうだったな」
「そうだよ」
「それなら心配はないな。ああ、大丈夫だな。なんとか夏休みまでには帰れるのはずだ」
「うん、わかったよ」
ガチャ
電話は切れた。
「ふう、忙しそうだな父さん」
『ニャ~?』
「お前じゃないよ」
『ニャ』
さてとあいつらにお返しも考えないとな。
「まあ、クッキーでも作るかな」
とりあえずたくさんのクッキーを作ることにしよう。
・
・
・
「こんなもんかな」
ふう。けっこう作ったな。なんとなく感謝の気持ちを表そうとがんばった結果。
「食べきれないほど作っちまった」
ピンポーン
「またか」
玄関のドアを開けると。
「はいはいお見舞いですよ~」
「もう、結構遅い時間だな。部活でもやってたのか」
「ええ。少しやってたですよ~」
「はいお見舞いです」
「ありがとう」
「いえいえお返しが楽しみなだけですから」
「それが目的かよ!!」
「冗談です」
「冗談に聞こえないってまあいいやちょっと待っててくれ」
「はい? まあいいですけど」
キッチンに戻りクッキーを包む。よし。
「ほら」
「おっと、お、手作りクッキーですか」
「ああ」
「ありがたく頂くですよ。はむ」
「もう食べるのかよ!!」
「はむはむはむ、ごくっ。はわ~、おいしいです!、最高です!!、ミステリーです!!!」
「なんだよミステリーって」
「ノリです」
「ノリかよ!!」
「もう一袋くださいです」
「意外に遠慮がないな。ほら」
もう一袋渡してやる。
「ありがとです。じゃあ、また明日」
「ああ、また明日」
木山が帰っていった。ちなみに木山がくれたのは羊羹。
「さって一日休んだからな。明日からがんばるか」
決意し眠りについた。今回眠ってばっかだな。
こんなのでいいのかわかりません。
佐藤が思い通りに動かせない。このままじゃ変なところで性格変わってるかも。…………マジでどうしよう。
ので感想よろしくお願いします。ですがあまりきついこと書かれるとメンタル最弱の作者が死にます。




