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恋も幸せも彼女しだい  作者: テイク
第一章 出会いは初夏のあの日から
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第三話 小さな優しさ

 学生にとって至福の土日の休みが終わり5月17日。週はじめの月曜日。嫌でもテンションは下がってしまう。しかも生憎の雨。さっき降りだした。雨はあまり好きでない僕にとっては下がらないほうがおかしい。いやまあ、休みの日に部屋の中ですごしていても何も言われないことに関しては雨の日は好きだ。だが、こういう学校がある日に雨が降るというのは憂鬱だ。靴下はぬれるし制服は濡れるし。湿気で気持ち悪いし。雨の日は嫌いだ。さすがのシュレディンガーも僕と同じ気持ちで外に出ようとせずにテーブルの下でしきりに顔を洗っている。


「さてと行くかな」


 雨が出るので早めに家を出ることにする。玄関にでる。そこにはいるはずのない人間が立っていた。


「は!?」


 外に出た途端驚く。


「何でお前がここにいるんだ?」


 なんとあの佐藤が玄関の屋根の中にいた。雨に降られたのか少し濡れている。


「急に雨が降ってきたから雨宿りしてるの」

「傘持ってなかったのかよ」

「…………」


 持ってなかったんだな。確かにさっきまではかなり晴れていたからな。


「ほれ」


 佐藤に傘を渡す。


「なに?」

「いや、傘ないんだろ」

「アンタに傘借りなくても何とかなるわ」


 何とかなりそうもない天気だ。


「ほら遠慮せずに借りろよ」

「仕方ないわね。そういうなら借りてあげないこともないわ」


 そう言って傘を受け取った佐藤。


「じゃあ、先行ってくれ僕はもう一本取ってくるから」

「そう、じゃあ行くわ」


 遠慮なく傘を広げて佐藤は出て行った。


「さて、どうしようかな」


 正直言って傘なんてもう一本あるわけない。この家には父さんの分と僕の分二本しかない。僕の分は佐藤に貸した父さんの分は父さんが持っていっている。


『ニャ~』


 シュレディンガーがこのお人好しめというように鳴いた。はいはいお人好しですよ。


「ん~、走っていけばなんとかなるか?」


 何とかなりそうもない。本当にお人よしだな僕。もう少し待ってみるか。

・

・

・

 少しだけ弱くなってきたとはいえまったくやみそうな気配はない。


「ええいままよ!!」


 僕は雨の降りしきる中駆け出した。


****


「ふは~」


 鞄を盾にし全速力で走った。そして当たり前ながら物凄い被害を受けたがまあ、何とか遅刻せずに登校できた。


「おうおう、今日はぬれねずみか悠~」

「三上か頼むからどこか行っててくれ疲れてるんだ」

「珍しいね悠が傘を忘れるなんて」


 栗原よこれには深い事情があるんだ。言わないがな。それにアンタバカという佐藤に視線がいたい。ええ、バカですよ。悪かったですね。


「いろいろあるんだよいろいろな」

「ふ~ん、そっか」


 栗原はそれで納得したのか自分の席に戻っていった。おそらく感づかれたな。あいつ予想外に鋭いから。


「ほらタオル貸してやるそれで拭け」

「ああ、助かる三上」

「いいってことよ」


 タオルを受け取り髪を拭く。


「洗って返せよ」

「わかってる」


 これで少しはマシになった。まだ湿っているが時間と供に乾くだろう。


「遅れてすみませんHRをはじめます」


 HRでは特に連絡もなく終わった。


「さてと一時間目は現代文か。確か漢字の小テストがあるんだったな」


 現代文は毎時間毎時間漢字の小テストがあるから覚えないとな。


「悠見せてくれ」


 漢字帳を忘れた三上が僕のところにやって来た。


「自業自得だ」

「この薄情者!! 親友なら俺のためと思って見せてくれよ!!」

「心を鬼にして忘れたことを後悔させ再発を防ぐのも親友のためだ」

「クソ、それなら栗原ー!」


 今度は栗原の所に行った。あ、泣き崩れた。断られたみたいだな。


「頼む!!」


 戻って来た三上が土下座してきた。この男にプライドはないのか。


「はあ~。わかったよ。今回だけだぞ」

「あろがとう悠様」

「様をつけるな。次は貸さないからな」

「わかってるって」


 そういって毎回毎回忘れているのはどこのどいつだよまったく。

・

・

・

 昼休み。なにやら妙な寒気がしている気がする。気のせいだな。放っておけばなおるかな。それにしてもまだ雨は降り続けていた。


「本当に良く振るな」

「さあ悠!! 佐藤を誘ってこ~い!!」

「またかよ」

「三上もがんばるね」

「当たり前だ!! 美少女を前にして諦めれるかー!!!」


 暑苦しいやつめ。


「わかったよ。だが、あまり期待するな」

「はいはい、さっさと行け」


 そんなわけで


「佐藤一緒に弁当食わないか」

「いや」

「ああ、そう」

「アンタに話があるからアンタとならいいわよ」

「いや、僕は…………」

「いいからそこに座りなさい」

「……はい」


 有無を言わせぬ迫力に僕は了承してしまった。はあ~仕方なく座る。


「アンタさ」

「ん、なんだ?」

「アンタさ、もしかしてマゾ?」

「はあ!? 何でだよ!! 何でそうなる!!」

「だってアンタ一本しかない傘を人に貸すなんてバカか、マゾか、極度のお人好ししかないでしょ。他人なんだから放っておけばいいじゃない」

「他人たって確かにそうだが、女の子を――佐藤を雨に濡らすわけはいかないだろ」

「…………プッ、あはははははは」


 あの佐藤が笑っていた。


「笑うなよ!」

「ごめんごめん。ふふっ、本当にバカね」


 佐藤が笑ったのをはじめてみた気がした。思わずその笑顔に見蕩れてしまった。やっぱり佐藤も女の子だと実感した。


「悪かったなバカで」

「いいじゃなにバカで、私バカの方が好きよ」

「お前そんなことを恥ずかしげもなく言うなよな!!」

「いいじゃない」

「…………」


 コイツに何を言っても無駄か。


「まあ、それはいいとして本題はお礼」


 今までのが本題じゃなかったのかよ。


「お礼?」

「そっ、一応かさ貸してくれたからねその…………ありがと」


 ………………不覚にも……不覚にも頬を赤く染めてそう言った佐藤を可愛いと思ってしまった。てかその前のこともそんな感じで言えよ。


 昼休みが終わり自分の席に戻ると手紙が置いてあった。明らかにラブレターではない。ただのメモの切り抜きだ。ご丁寧に定規で筆跡を消していた。


『放課後体育館裏で待つ。 三上』


 バカだ。バカとした言いようがない。定規で筆跡まで消すなら名前書くなよ。てか、名前書くならこんな手の込んだことするなよ。この場合無視をするのだが。相手は三上だ。行かなければ面倒なことになるのは目に見えている。仕方ないいくしかないな。


「はあ~」


 溜息をつくと幸せが逃げるというのなら僕の幸せは絶賛逃亡中だろう。


「五時間目はなんだっけ」


 ……英語。本当に幸せは逃げているようだ。しかも今日は小テストだ。まったくもって最悪のタイミングだな。早く帰ってきて欲しいね幸せ。

・

・

・

 放課後。掃除とHRは既に終わっている。外では雨がいまだに降り続けている。そんな状況で体育館裏に呼び出すのがバカであることを主張している。さて、さっさと行ってさっさと帰ってこよう。なんか気分悪いし。


「栗原、ちょっと手伝ってくれ」

「また三上?」

「ああ、そうだ」

「わかった」


 物分りのよい栗原と供に体育館裏へ。


「フッフッフッフ。よく来たな!!!」


 三上が飛び出してきた。


「驚いたかその手紙の送り主は俺だ!!」


 いや、わかってるよ。名前書いてあったからな。てか、まだ雨が降ってる中に飛び出すなよ。僕と栗原はまだ屋根があるところにいるからいいが、三上はずぶ濡れだ。


「てか、何の用だ? 雨も降ってるから早く帰りたいんだ」

「用件だと。それくらいわかりきってるだろう。貴様が美少女とラブコメしてるからだよ!!」


 完璧な嫉妬じゃねえか。


「だから、貴様はここで粛清する」


 ぞろぞろとずぶ濡れの男子集団が現れた。こんな雨の日にご苦労なことだ。


「やってしまえ!!!」

「悠ここは僕がやるからさき帰っていいよ」

「いいのか?」

「うん、まかせといて」

「わかった。頼んだ」


 僕は栗原に任せて帰ることにした。栗原? 大丈夫だ。あいつなら不良の集団と喧嘩することになっても無傷で生還する奴だからな。


「さて、また走るか」


 昇降口にいくと柱に体を預けて立っている佐藤が立っていた。佐藤は僕を見つけると言った。


「遅い!!」

「何してんだよ」

「アンタを待ってたのよ」

「僕を?」

「そう、アンタ傘持ってないででしょ。帰りも濡れて帰られたらたまんないからね。入れてあげようと思ってね」

「は!?」


 ………………それってまさかアレですか。アレなんですか!?


「ほら、早くしなさい!!」

「は、はい」

「あと、勘違いすんじゃないわよ。アンタが濡れて帰ったら私が悪いみたいだから入れてやるだけなんだから!!」


 そんなわけで僕と佐藤は相々傘で帰ることになった。


「ちょっともう少しそっち行ってよ。濡れる」

「こうか?」

「そうよ」

「…………」

「………………」


 …………うわ~。何この状況。やばい、めっちゃ意識する。佐藤も黙っていれば美少女なのだ意識しない方がおかしい。それに何か佐藤いいにおいするし。何これ!! 何でこうなったんだ!? 僕の混乱なんてつゆ知らぬ佐藤はいつもと同じだ。少しは意識したりしないのか? でも、どことなく佐藤の顔が赤い気がする。何か気分悪くてよくわからないな。


「…………今日は悪かったわね」


 今まで黙っていた佐藤が言った。やけに素直だな。


「あ? ああ。別に、僕がやりたくてやったことだからな。気にしなくていい」

「そう……優しいのね」

「普通だろ」

「そっか」


 そろそろ家に着くな。正直に言えばこの状況が終わることは少しだけ残念だ。少しだけだがな。そして家に着いた。


「ふう、正直助かった。サンキュー佐藤」

「別にもともとアンタの傘だし」

「その傘借りて行っていいぞ」

「当たり前でしょ」


 佐藤はそう言って帰っていった。


「ふう、ハクション!! うう、風邪ひいたか?」


 今日は暖かくして早く寝よう。


『ニャ~?』


 シュレディンガーが僕を気遣うように鳴いた。


「お前は優しい奴だな」

『ニャ』


 それほどでもと言っている気がした。


「さて、とりあえず夕食作って風呂入って寝よう。風邪ひいたら駄目だろうしな」


 とりあえず冷蔵庫を開ける。土日に買い物に行ったので食材は豊富だ。


「今日は中華でもつくるかな」


 作ったのはかに玉。家庭で作れる簡単レシピだ。久しぶりの中華だったがうまく出来た。


「いただきます」

『ニャ~』


 夕食を食べ風呂に入る。風呂から上がり。


「ふう、シュレディンガー悪いけど僕はもう寝るよ」

『ニャ』

「じゃあ、おやすみ」


 そう言って自分の部屋に行き布団に入った。すると静かにシュレディンガーがもぐりこんで来た。それは今の僕にとってはうれしかった。そのまま僕は眠りについた。


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