第四十四話 中宮戦う
さて、私たち三人がやって来たのは彩皇町の中心街から少し外れた山の近くにある小さな道場である。そう、私と音葉がする勝負、その内容は剣道。まあ、それ以外でもよかったのだがな。この道場は全ての武術を習えるからな。数ある武術の中で私たちが剣道を選んだのは、これが私たちの勝負の始まりであるからだ。
始まりは12年ほど前だったかな。私はここに優秀な師範がいると聞き、この道場に来たんだった。噂どおりだったから中々にあの頃は楽しめたな。まあ、そんな時に会ったんだ。なぜかは知らないが、いきなり突っかかってきた。まあ、それ以来勝負しっぱなしだ。ふふ、楽しいからいいんだがな。
「たのもー!!」
音葉がそんなことを言いながら道場に入っていく。やれやれ、道場破りでもする気か? しかし、どうやら心配だったここの主の不在はなかったようだ。タイミングもよく今日は門下生もいないようだった。中々に良いタイミングだ。これがわかってたんじゃないだろうな。
「おい、風音それじゃ道場破りだろ」
秋月がツッコミを入れる。
「いいの!」
「いや、良くないだろ。はあ」
そんな二人の掛け合いを横目に見ながら私は道場の中に入った。そこでここの師範が出てきた。
「おや? 君たちか、ははっ久しぶりだね」
メガネをかけたやさしそうな雰囲気の男。彼がここの師範代の柳谷竜治さんだ。私が剣道などを習ったのも彼だ。三十路だというが未だに独身。良い人なのだが、ここで師範代をしているためか出会いがないとか。ふむ、まあ本人もまったく気にしていないようなので結婚できるのはまだ咲だろうな。
「お久しぶりです竜治さん」
「おひさー竜治!」
「おい、風音失礼すぎだろ。風里を見習えよ」
「ははは、みんな勢ぞろいかい? それで今日も勝負なのかい?」
竜治さんに一連の出来事を説明する。まあ、説明することも何もないんだが。毎度のごとく勝負をすることになり、道場を使わせてくれということを伝える。
「いいよ。君たちなら大丈夫だろうし」
「ありがとうございます」
「はは、お礼を言われるのも久しぶりだね。あ、そうだ道場には一人先客がいるけど気にしなくていいよ。じゃあ、僕は少し用事があるからあとは勝手にしてくれて良いよ」
竜治さんはそう言って出かけていった。それまでに音葉と秋月の言いあいも終わったようで、三人で道場に向かう。ここの空気を吸うのは久しぶりだ。本当に久しぶりだ。懐かしい。っと、こんなことを感じている場合ではないな。
道場に入るとそこには見知った顔があった。
「沢村か」
「あ、中宮会長どうでもです。あれ、そこの二人は会長の友達ですか?」
「まあ、そんなところだ。秋月に音葉だ」
「どうも」
「よっろしっくー!」
「ボクは沢村真希よろしく」
そういえばこいつは強くなりたいと言っていたな。理由は復讐だったか。あまり復讐は感心しないが己の納得が行くようにさせるのが一番良い。狩野も付いているんだ大丈夫だろう。悪いほうの道には入らないはずだ。もし、そうなったら私が起してやるさ。
「さてと、準備をするぞ。沢村悪いが少し剣道で勝負をするから場所を借りるぞ」
「はい、どうぞ」
「おっしゃー!! やったるぜい!」
「じゃあ、二人とも俺は審判やってやるから、さっさと着替えて来い」
うむ、では秋月の言葉に甘えるとしよう。道場にある更衣室へと向かう。もちろん防具とかなど持ってきているわけはないからな借りる。竜治さんの手入れが良いからかかびなどもなく綺麗だ。音葉も来たな。サイズがある剣道着を探し着替えることにする。
少女二人着替え中。
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さてと、着替えも終わり道場で面をつけ私と音葉は向き合っている。既に試合も始まっている。だが、私たちはいまだに一歩も動いていない。互いに懐の探りあいをしている。この前の勝負の時よりも確実に音葉は腕を上げている。気を抜けばやられてしまうかも知れないほどに。ふふ、やはり勝負とはいいものだな。この緊張感確かに良い。
しばらくの手の読みあい後、音葉が動いた。
「やあああああ!!!」
音葉が振り上げた竹刀を振り下ろす。迷いのない素直な剣筋。しかし、鋭い。反射的に持っている竹刀で受ける。そのまま音葉は竹刀を袈裟懸けに振る。同じく竹刀で受ける。
重い。なるほど、やはりきちんと修練を欠かさなかったのだな。だが、それは私も同じだ。
「せい!!」
両手に握った竹刀を面に振り下ろす。それを音葉は反射的に首を竹刀から逸らし有効打を防ぐ。しかし、それで休ませるわけがない。続けて胴に竹刀を振るう。それを音葉は竹刀で受け止める。
フッ、楽しいな。楽しいぞ音葉。
「楽しいな」
「そうね。でも、私が勝つ!!」
音葉が竹刀を振り下ろす。それを受ける。
「私も負けるつもりはないさ」
それを弾き竹刀を薙ぐ。それを後ろに下がり音葉がかわす。すかさず追撃。息をつかせぬ真剣勝負。さあ、もっとだ。もっと私はもっと早く動ける。
「やあっ!!」
「遅い!」
音葉が振り下ろしてきた竹刀を弾き、そして……。
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「うわああ、負けたー!!」
「風音うるさい」
「むう~ケン、負けた~!」
「知ってるよ。審判やってたんだからね」
「何、そう落ち込むな音葉。お前は腕をあげていたよ」
落ち込む音葉に声をかける。勝者の私が言ってもあまり効果はないだろうがな。
「それに有意義な時間だった」
「むう、今度は勝つ!! 行こうケン!!」
「はいはいっと、はあ~、じゃな風里」
「ああ」
二人は帰って行った。さてと、私も帰るとしようか。
「ではな、沢村」
「はい」
竜治さんに挨拶をしてから帰路に着く。また来てくれとか誘いを受けたが時間があればと答えた。今年は受験だからな。さて、帰ったら今日のノルマでも果たすとしようか。
残念な剣道の描写すみません。
なにぶん剣道なんてやったことのないので、某剣道マンガを参考にして書きました。
次回はもろもろの事情により更新はお休みです。再来週にまた会いましょう。




