第四十三話 中宮、会う
私は中宮風里だ。埜宮高校の生徒会長を勤めている。ふむ、何? 今度は私が主役なのか? いや、私視点と言ったところか。ふむ、前回や、前々回、それ以前は木山や黒江が好き勝手やっていたな。さて、私はどすればいいんだ? うん? そうか私の何気ない日常を語ればよいのか? ふむ、私の日常など平凡でつまらないものだぞ? なんだ、それでもいいのか。そうか、酔狂だな。わかった、語ろう。では、8月4日にあったことでも話そうか。
生徒会の仕事もないので、私は散歩に出ていた。晴れた日の散歩は気持ちが良い。特に夏は青空がよりい一層綺麗だ。なに? 受験生だろう? 心配しなくてもいい、きちんと勉強はしている。今日は休みの日だ。そもそも、私にとってはそれくらいどうでもない。それに詰め込んでばかりでは体に悪い。きちんと休みは取るべきだ。でないと倒れてしまうぞ。さて、説明もこれくらいにして、散歩を続けよう。
しかし、私の憩いの時間はそう長くは続かなかった。目の前に一人の女が現れた。
「ここであったが百年目よ!!」
その女は往来のど真ん中でそんなことを大声で叫んだ。周囲の人間が一斉にこちらに視線を向ける。注目される。やれやれ、散歩中だというのに。私の目の前に男女の二人が立っていた。男の方は茶髪で割と顔は整っているが平凡そうな印象を受ける。名前は秋月健一。女の方は、黒髪をポニーテールにした行動力のありそうな印象の女だ。名前は音葉風音。ああ、音葉の方は黒江に似ているな。まあ、あちらの方がまだ可愛いものだが。そのための秋月のブレーキ役なのだが、こういった時にはまったく機能しないから困りものだ。
「ああ、君たちか」
「さあ、私と勝負しなさい!」
まったく話が要領を得ないないつものごとく。そんな音葉に秋月が言う。一応いさめる言葉だ。まあ、それでも音葉は止まらないだろうけどな。やれやれ、いつものことながら困ったものだ。
「会っていきなりそれはないだろ風音」
おっと、そうだなこの二人について説明をしておこうかな。この二人は私の知り合いだ。ふむ、世に言う幼馴染という存在か。高校に入ってからはあまり会っていないな。同じ高校に通っているのだから、会いにくればいいのだが、まったく会いにこないからな。休みの日は町では会うのだが、どういうわけかいつもこんな感じだ。私は普通に付き合いたいのだが。音葉はそうは行かないらしい。昔はよく一緒に遊んだものんだがなあ。どうしてこんなことになったのだろうな。
「いいのよ! 今度こそ勝ってやるんだから!!」
そう宣言する音葉。まったく私などに勝ってどうするというのだろうかな音葉は。私みたいな平凡な人間に勝っても面白くないだろうに。そういえば、昔から音葉は私に勝負を挑んできたな。生徒会選挙のときもそうだった。私が立候補したら、音葉も立候補してきたんだったな。あれも勝負だと言っていた。ああ、去年の体育祭の時も、文化祭の時もそうだったか。いつもいつも会うたびにこれだ。私としてはこれも中々楽しいからいいのだが、場所は考えてほしいものだ。ここは町中だ。少しは自重してほしい。
「こんな町中でそんなことを言うな」
「じゃあ、どこで言えってんのよ!!」
どこって、人のいないところだな。勝負をするのも私たちの個人的なことなのだから、誰にも被害がなく誰も巻き込まない場所だ。山奥や私の家なんかでも良いし、海でもどこでも、人が少ないかいない場所だ。さてと、じゃあ、受けるとしよう。受けなければ音葉は帰らないだろうからな。
「まったく、良いだろう。勝負なら受けよう。それで何をするんだ?」
何をしても良いが、なるべく時間がかからないものにしてほしいな。貴重な休みだ。散歩は遅くまで楽しみたい。が、まあ、今までの経験から察するに音葉は何も考えていないだろうな。
「え? う~ん」
やはりな。やれやれ、勝負を吹っかけてくるのなら最初から考えておけと何回言えばわかるのだろうか。秋月も何度も言っているはずなのだが、まったく成長していないな。
「何も考えてなかったのかよ! おい、それじゃ何で風里に勝負を挑みに来てんだよ」
「いや、ほら、暇だったし」
「おい!」
二人はそのまま言い争うを始めてしまった。やれやれ、人と話しているときに自分たちで言い争いを始めるとは。まったく、仕方ない、私が勝負を用意してやるか。まあ、あまり無理のないのにしようか。そうだな……ああ、ここならあの場所が近い。そこでならあの勝負が出来る。今だ50勝50敗、引き分けだ。決着もつく。しかし、己の実力を過信するわけではないが、私もよく負けているものだな。いや、音葉がよくやっていると言った方がいいか。
「まあまあ、二人ともそこまでにしておけ、通行人も見ている。それで提案なのだが。ここからならあの場所も近い。どうだ? 久しぶりにあの決着をつけないか?」
「そうね、ちょうど50勝50敗、決着が着くわね。それでいいわ」
「ちょっと待てよ二人とも、今から行くってことだろ? いきなり言ってやらせてくれるのか?」
ああ、それは考えていなかったな。あそこはそれなりに有名だから特にこの休みの時期は人が多い。それか合宿に行っているかだな。記憶ではこの時期に合宿はないはずだが、あそこに行かなくなってから久しい、今もあの頃のままということはないだろう。最悪誰もいないということになりかねない。まあ、大丈夫だろう。私の予感では十中八九あの人はいる。
「まあ、行って見てからだ行くぞ」
「レッツゴー!!」
「はあ、お前らなあ」
うん? なぜか秋月が呆れているがどうしたのだろうか。まあ、いつものことだな。さて、では、行くとしよう。我々の勝負の舞台へ。




