第四十話 木山案内す
今回も木山視点です。
うるさい目覚まし時計が私の眠りを妨げました。うう、何でこんな時間にセットされてるです。うるせえです。夏のため毛布ではなく、被っていたタオルケットから、手を出して目覚まし時計を捜索する。あ、ありやがりました。私の睡眠を邪魔するとは良い度胸です。死ね。
ぶん投げました。しかし、それでも目覚まし時計は壊れず健気にも私を起こそうと鳴り続けています。きっとしゃべれたら、これしかできないからとか言いそうです。健気です。しかし、うるさいのはうるさいのでさっさと黙ってもらうです。
ノソノソと動いていって、目覚ましを止める。時間は七時。早い、休みは昼間まで寝るです。何で、こうして早くセットしたんだっけ? あ~、まだ、起動してなくて頭が働きません。フラフラします。とりあえず顔でも洗ってくる。
フラフラと洗面所まで歩いて行って顔を洗う。冷たい水のおかげで私の眠気は少し吹き飛び、脳も正常に起動はしました。しかし、まだ、完全ではないです。
次に伸びをする。
「ふあ~」
ん~、伸びは気持ち良いですね~。その際おへそとか見えてますが、ほかに見ている人は洗面所にいる幽霊(24)独身男さんしかいないので、気にしません。とか、思っていたのですが、駄目だったようです。
「お~っはよーアキちゃん!!」
母が抱きついてきました。暑苦しいです。夏なので抱きつかないでほしいです。
「あ~ん、寝起きのアキちゃんも可愛いわ~。スリスリ、ほれほれ~」
「頬を摺り寄せてこないでください。あと、体を弄らないでください」
小説じゃ描写できないような場所までいじらないでくださいです。まったく、毎朝これなんですから。これが寝ぼけているなら、まだ救いがあるのですが、まったくこれが素なので、どうしようもありません。お手上げです。ちなみに、弄られるのは子供の頃からで、さすがに耐性がつきました。これくらいでは感じることはないです。まあ、そのせいで、色々と弊害がありますけど、それもここでは言えませんね。
とりあえず、邪魔な母を引き剥がしシャワーを浴びます。描写はなしです。自分のシャワーシーンを描写するほど私は変態ではないのです。見たい人は妄想でもしやがっててくださいです。
・
・
・
シャワーを浴びたらもう、バッチリ目覚めました。さてと、そうでした、アラームを早くかけたのは食事当番もあるからでした。なので、ちゃっちゃか作ってしまうです。あ、そうですね、今日は志雄原さんを案内しないといけませんから、弁当でも作って行きましょう。そっちの方が安上がりですし、面倒でもありません。弁当は志雄原さんに持っていてもらえば大丈夫ですね。よしそうしましょう。
少女調理中…………。
ふう、出来ました。うん、中々の出来ですね。料理の才能を受け継いでいるので当たり前ですね。さてと、では、あの母と父を呼んで、あ、父は出張中でしたね。そうでした。忘れてました。親不孝者ですね、まったく。
「アキちゃんできた~?」
ナイスタイミングで入ってきますね相変わらず。どこかで見てるんじゃないでしょうね。そして、タイミングでも合わせてるんじゃとか、疑ってしまいそうですよ。この母なら、やりかねないんですよね。いつもタイミングよく現れやがりますし。
「出来てますよ。さっさと食うです」
「お~、さすが我が自慢の娘」
「頭を撫でるなです。鬱陶しいです」
「もう、ナツく~ん。アキちゃんがいじめるよ~」
はあ、まったく父にまで電話し始めましたよ。まあ、いつものことなので、ほっときましょう。それよりもさっさと朝食を食べたほうがいいですからね。
宣言どおり私は朝食を食べて、着替えのために部屋に行きました。なんか着替えは母が勝手に用意していた。というかこれ以外は着させないという臨戦態勢で、もう面倒なので、それを着ることにしました。
水色で、水玉模様のロングスカートに、白のブラウスに薄手のカーディガン、それに麦藁帽子。なんという夏ファッション。というか、これ、母が用意したですよね。何で、こんなに気合がはいってんですか。はあ、仕方ありません。用意したからには着ますよ。
さてと、あと待ち合わせまで十分ですね。バック良し、弁当も問題ないですね。さあ、行くですよ。
「行ってくるですよ~」
「行ってらっさ~い」
エレベーターを使ってさっさと一階まで降りて、外に出る。既にそこで志雄原さんは待っていた。あや、早いですね。まだ十分前だというのに。律儀ですね。どこか、寝不足のような気がしますが、気のせいですね。
「早いですね」
「ええ、まあ」
「ん? どうかしましたですか? 大丈夫ですか?」
「大丈夫です」
「そうですか」
むむ、どうも大丈夫ではなさそうですが、まあ、本人が大丈夫と言っているので、大丈夫なのでしょう。さてと、では行きましょうかね。さっさと行った方が良いですし、この町を回りつくすなら時間はいくらあっても足りないです。ふふふ、覚悟するですよ志雄原さん。
「じゃあ、行くですよ」
「はい、あ、荷物私が持ちますよ。それと服似合っていますよ」
「おお、ありがとうです」
計画通りです。中々の紳士ですし、高ポイントですよこれは。ふふふ、さあ、案内を始めましょうかね。
まず、私達が来たのは、このマンションと駅の間にある商店街です。今では珍しい商店街。かなり巨大で、駅前どおりはこれです。ここだけで、殆どのものと、情報が揃います。さすが主婦ですね。ちなみに、裏路地には猫の溜まり場になっています。
「ここが商店街ですね。食材とかはここで買うといいです。お得意様になれば、値引きとかおまけしてくれますよ」
「大きいですね。最近はスーパーとか多いですけど」
「まあ、スーパーもありますけどね。なんというか、スーパーと商店街で売り上げ対決みたいなのをやってるみたいですよ」
不況なのに本当に物好きですよね。まあ、私はスーパーよりも商店街の方が好きです。情報も集まりますし、雰囲気的にこういったほうが好きですよ。良い意味と悪い意味の両方で有名な私の母のおかげで私は割りとここでは有名です。だから、おまけとかしてくれるんですよね。本当に良いところです。
「そうなんですか。面白いですね」
「そうですね、さあ、次行くですよ」
「お、秋子ちゃんじゃねえか。野菜買ってくか!」
っと、商店街を出ようとしたら八百屋のおっちゃんに見つかってしまったです。まあ、良いです。野菜は買わないので。
「今日はこの引っ越してきた志雄原さんの案内なので遠慮しとくです。五割安くしてくれたら買うです」
「はは、なら売らんわ、ハハハハ!」
「ハハハハ」
「ハハハハ」
っと、八百屋のおっちゃんと一緒になって笑ってる場合じゃないですよ。さっさと行かないと時間が足りないですよ。追求されるのも面倒なので。追及するのは好きですけど。さあ、さっさと行くです。
そんなわけで、次に来たのは駅ですね。ここはまあ、普通に駅です。彩皇町の交通の心臓部ですよ。ここにくれば町の殆どの場所に公共交通機関で行くことが出来ます。外にも出れます。この辺りも取材によく来ますね。時々テレビの方とかが来ることがあるですよ。何かとこの町は注目されることがあるようです。学業区画とか、特化区画計画とか言われるものが進行してるらしいですよ。まあ、概要は面倒なので説明しませんけど。
「まあ、昨日も来たからわかっている通り、駅ですよ。彩皇中央駅、この町の交通の心臓です」
「ええ、予想外に大きいし、綺麗だったから印象に残ってますよ」
「まあ、基本は使いませんね。そんなに遠出とかはすることはないと思いますし」
「そうですね。高校に行ってる間はあまり使わないですね」
ああ、あと、ここの駅前広場は夏祭りとかの会場ですね。商店街の人総出で盛り上がりますよ。あの人たちは本当にお祭り好きですからね。だから、高校の体育祭とか、文化祭に飛び入り参加してくるんですけどね。まあ、面白いので、いいんですけど♪
「まあ、突発的な旅行とかに使うかもですから、覚えとくです。そして、駅前のパン屋はガーリックパンがオススメです」
「そうなんですか、今度買いに行きたいと思います」
「そうしてくださいです」
よし、パン屋さんに頼まれてた宣伝はこれくらいで良いですね。まったく、主婦ってどこから情報を仕入れてくるんでしょうね。昨日のうちにメールがいっぱい来てましたよ。殆どを無視しましたが、パン屋だけ、値下げしてくれるとか書いてあったので、宣伝しました。ほかのところ? 知りませんです~。
さてさて、次に向かったのは、ちょっと、中心街から離れた丘ですね。星望みの丘と呼ばれる場所ですね。ここは夜に来ると本当によく星が見えます。夏は特にですね。花火大会を見るのにも使います。それと、ここからなら中心街を一望することが出来ます。まあ、その代わり来るのは一苦労、上るのも一苦労、はあ、疲れました。
「星望みの丘、良い場所ですね。カメラ、持ってくればよかったかな」
「はあ、はあ、まあ、それは別の機会にですねすると、はあ、いいですよ。ふう、久しぶりすぎて疲れました」
「大丈夫ですか?」
「大丈夫ですよ。ちょうど、ここでお昼にでもしようかと思っていたので、私の荷物の中にシートでもあるので、座って食べるですよ」
「はい!」
いそいそと準備する志雄原さん。そんなに食べたかったんですかね。まあ、ここまで来るのは疲れましたからね。お腹もすきますね。私もそれなりにすいてきましたし。今のところは予定通り、案内は半分といったところでしょうかね。主要な場所だけですし。高校は場所は知ってるみたいですし、ほかには、まあ、適当ですね。
木陰が良い感じに出来ている場所にシートを引き終わり、準備は出来たようですね。
「じゃあ、食べましょうか」
「そうですね」
「「いただきます」」
というわけで、食事です。
「あ、この玉子焼きおいしいですね」
「そりゃ、私が作りましたからね」
「なるほど、おいしいのも当然ですか」
「光栄なことを言ってくれますね。ほら、どんどん食べるですよ」
「はい!」
はい、そんなわけで、食べ終わりました。うん、満足です。どうやら、志雄原さんも満足したようです。よかったですね。
「ふう~、しかし、気持ちいなここは」
志雄原さんがシートに寝転がる。今日は天気もいいですし、この場所は中々過ごしやすいですからね。昼寝すれば気持ち良いですね。でも、それは出来ませんね。今日はあくまで、案内が目的なので。
「さあ、志雄原さん行き――あらら」
寝ちゃってますよ。寝不足だったんですねそういえば。そりゃ寝転がれば寝れますね。気持ち良いですし。やれやれ、まったく、寝不足なら寝不足と言えばいいのに。そうしたら、少しは配慮したですけどね。少しお仕置きですかね?
「まあ、いいです。今はおやすみなさいですよ」
・
・
・
side志雄原
「うう?」
どうやら私は眠っていたらしい。既に日が傾きかけている。失敗してしまったな。寝不足だったけど、無理するんじゃなかった。まあ、そのおかげで、昨日の葛藤を今日に持ち込める余裕がなかっただけよかったと思えるんだけど。
「ああ、起きたですか」
起き上がると、木山さんが声をかけてきた。今まで待っててくれたのか、迷惑かけたな。謝らないと。
「すみません、寝てしまって」
「いいですよ。まあ、寝不足なら寝不足と早く言ってほしかったです」
「……すみません」
迷惑かけまいとか、思って言わなかったんだけど、それがあだになってしまった。
「いいですって、さて、早く帰りましょう。夏とは言え、暗くなると危ないですから」
「そうですね」
シートをテキパキとたたんで私達は帰路に着いた。
今日は良い日だったと言えるのだろうか。まあ、いいか。あの葛藤の理由も、これからわかっていけばいい。時間はいくらでもあるのだから。
次回は黒江莉子視点の小話です。
それではまた次回。




