第三十四話 いざ行かん
どうも皆さん、中宮風里だ。今回は大将をさせてもらっている。ん? 大将が前線に出るなって? なに、大将が先を歩かなければ部下はついてこないぞ。
現在は、敵本陣に続く一本道の谷を進んでいる。相手の本陣は高所にあり、この道を通らない限り攻めることは出来ない。
「しかし、妙だな」
向こうの指揮を取っているのは、おそらく狩野だ。どれも、こちらの手を読んだいい指示を出している。だが、まあ、こちらはそれも同じ。だから、拮抗していたのだが…………。今、このタイミングでの撤退、定石なら伏兵だろうが、いや、それなら、撤退した敵を追撃に出た今、この瞬間を狙うのがベスト、しかも、こんな両方を崖にはさまれた谷、一本道しかないこの場所がベスト。高所から狙えばこちらに甚大な被害が与えられるはずだ。
「だが、狩野はそれをしなかった。何か、他の考えがあるのか?」
なら、それは何だ? そもそも、この地形だ。爆破でもするつもりか? 生き埋めに出来る。だが、それならもう爆破してもおかしくないし、それに、周りの兵士はダメだが、私や沢村、黒江ならば乗り切ることが出来る。得策ではない。あと、考えられるのはなんだ?
「何をする気だ?」
その時、何か音が聞こえた。何かが爆発したような音だ。それを証明するかのように前方で黒煙が上がっている。なんだ、勝てないから自分の本陣を爆破もしたのか。愚かな。まさか、自決とは見損なったぞ。
だが、その時水の流れるような音が響き渡った。そして、私は気がついた。
「しまった!!」
その瞬間、大量の水が谷に流れ込んできた。巻き込まれる瞬間、まるで波乗りのように波を走る、船が見えた。そこに乗っている狩野も。
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「水攻め成功だな、悠」
「ああ」
うまくいった。気づかれないかとひやひやした。まあ、僕もこれに気が付いた時はかなり驚いたけどね。この谷と、窪地の高原という地形で使う機会のないと思われた船というオブジェクト。調べてみたら過去に潰れた水脈があったが、まさかそれが、まさかこんなことに使えるとは。
そして、全ての要素はこちらに有利に進んだ。このまま水の流れに乗り一気に敵陣地へ攻め入る。敵が復活したら、大変だと思うが。このゲームは窒息死というものがないのだ。つまり、水の中では死ねない。マニュアルをよく読んで確かめたからな。まだ、そこまで再現できないらしい。
だから、中宮会長たちは死んで戻ることが出来ない。だから、敵に今の僕達を防ぐ手段はない。さあ、勝つぞこの戦い。
「さあ、行くぞ」
『おおーー!!』
船が進む。窪地に溜まった水の上を敵陣に向かって進む。水の流れがなくなり、敵の本陣へと到着した。
「進め!!」
兵士たちが敵陣へ飛び降りていく。残っていた守備兵を次々と倒し、目標に近づいていく。さすがの中宮会長もここには罠を仕掛けていないみたいだな。本陣まで罠をしかける司令官はいないか。
その時、こちらの本陣で爆発が起きた。どうやら、水の中を進んだ中宮会長達が本陣にたどり着いたみたいだな。だけど、僕が仕掛けた罠にかかったようだ。さっき本陣に罠を仕掛ける司令官はいないといったけど、訂正、僕がいる。たぶん、正規の軍とかじゃ使えないし。本陣に罠仕掛けるのは大抵負けてるときだしな。
「さ~てと、これで勝ちだな」
「ようやく出てきてくれたな」
「な!?」
そこには、中宮会長が立っていた。バカな!! どうして、こんなところにいる!! 今は、水の中で流されているか、三上と戦っているはず。
そこで気がついた。
「まさか!?」
「そういうことだ。わざと倒されて、ここまで戻らせてもらった。私はここをリトライに選んでいるからな」
「くっ!」
くそ、これは予想外だ。こんなところで中宮会長と出くわすなんて。どうする! どうすればいい。逃げるか。いや、ダメだ。ここで逃げたらもう、勝てるチャンスはない。なら、攻めるか。可能性はあるが、ダメだったら同じことだ。僕が足止め? 出来たとしても、厳しい。運しだいだ。
「策は決まったか?」
「はっ!」
どうやら、考え事に没頭していたようだ。気がつくと周りの兵士はほとんどが動けなくなっていた。くそ、やるしかないようだな。
銃を捨て、ナイフを持つ。
「さて、私は今、すごい機嫌がいい。まさか、君がここまでやるとは思わなかった」
「そうは思えませんね」
お互い皮肉を言いながら相手との距離を探る。そして――。
「行くぞ!」
「はい!」
――一対一の闘争が始まった。




