第三十二話 暇暇な佐藤
佐藤視点です。
「暇ね」
私ってこういうのあまり好きじゃないから、ここにいるって言ったら。あの三人それでいいよって言って、嬉々として、行っちゃうし。
「はあ~暇」
前は、これくらいのことどうにでもなったのに。二年になってから、暇な時間を持て余すようになった。理由はわかってる。あいつだ。あのお人好し。あいつが関わってきてから、暇な時間なんて、どうしてかなくなったのよね。
「つまり、あいつが悪いわけね。あ~何か、むしゃくしゃしてきた」
どうして、あいつのこと考えるとこう、むしゃくしゃするのかしら。どこかに良いストレス発散になるものないかしら。とりあえず、どこかに行ってみようかしら。まだ、あまり歩いてないし。バーチャルリアリティなんて、そうそう、体験できるとは思えないし。
「思ったら早速行動よね」
立ち上がりキャンプを出る。戦場の方には向かわずに逆方向にある森へと入っていく。本当にここがゲームの世界とは思えない。それほどリアル。
「本当にリアルよねここ」
でも、ここってゲームなのよね。現実じゃない。ということは、あの昔あった映画みたいなことが出来ないのかしら。壁走ったりとか。どうなのかしら?
「まあ、試す気ないけど」
そんなことして、無駄に怪我してもどうにもならないし。
てきとうに歩いていると、湖に出た。なんで、こんな戦場にあるのかしら。
「でも、綺麗ね」
湖に近づいて、靴を脱いで、足を水につける。
「冷たっ!!」
思わず足を引っ込める。まさか、ゲームの水がこんなに冷たいとは思わなかった。この水も本物みたい。
今度は、ゆっくりつけてみよう。そっと、最初に少し、足をつけて水の冷たさに慣らしながらゆっくりと全て足をつける。水の冷たさが心地よい。
「ははっ!」
自然と笑みがこぼれる。なんだろう、こんなに穏やかな気分は久しぶりな気がする。
「はあ~」
伸びをする。なんだか、そうすることで、現実のしがらみとかが落ちそうだった。うん、良い気分。
「このまま泳ごうかしら」
ダメダメ、どこで、誰が見てるかわからないし。足だけで我慢しよう。それに、頼めばあの狭間って人はいつでも用意してくれそうだし。その時に頼もう。
「ふう、それにしてもいいところ」
こうしてても誰にも何も言われないっていいわね。あいつがいればまた、何か言って来るんだろうけど。って、なんで、また、私あいつのこと考えてんのよ。こんなときくらいあいつのことなんて忘れないと。いっつも関わってくるんだから。こっちはたまったもんじゃないわよ。
え? それなら、嫌だとはっきり言えって? それじゃ、私が一方的に悪者になりそうじゃない。これ以上評判は落としたくないわよ。まあ、評判がいいほうじゃないけどさ。だからよ。あいつと関わってるのはそれだけの理由よ。勘違いしないでよね!!
「って、私は誰に説明してんのかしら。あ~やだやだ、変なのがうつったのかしら」
でも、不思議と嫌な感じはしなかった。むしろその逆で、心地がいいくらいだった。これも、あいつのおかげ? ううん、きっと、この湖のおかげね。そうよ、きっと……。




