第二十七話 台風は突然に
目を覚ますと莉子はいなかった。いつの間にか服も着ている。体の感覚も正常だった。そして違和感もない。
「夢だったのか?」
しかし、あんなリアルな夢があるのだろうか。いや、夢ならそれで良い。あんなことが現実であったら困る。
「夢で助かった」
「何が助かったのかしら」
「うお!?」
部屋の扉のところに佐藤が立っていた。
「急に入ってくるなよ」
「いいじゃない。それで何が助かったの?」
「なんでもない」
言えるはずもないし。
「?」
佐藤が不思議そうな顔をする。まあ、当たり前だけど。これだけは言えないしな本当に。夢なら夢で済ませたいし。
「まあ、いいわ。台風が接近してるみたいだから窓とか閉めといたほうがいいわよ」
「そうなのか」
確かに曇り空で今にも雨が降り出しそうだ。風も強いみたいだし。
「わかった。わざわざすまん」
「別にいいわよ」
佐藤が部屋を出て行った。さて、じゃあ、言われたとおり窓を閉めるとしようかな。
「よしっと。本当に雨振り出したな」
窓を閉めている間に雨が降り出していた。風もありまさに台風といった感じだ。
「今日は別荘から出ないほうが良いな」
まあ、この別荘色々あるみたいだから外に出ないでも遊べるらしいからいいんだけど。とにかく下に行くか。
「あ、悠おっはよ~」
「あ、ああ、おはよう莉子」
いきなりエンカウント。しかし、莉子におかしな様子はない。うん、夢だったようだな。
「ん? どうしたの? 何かあったの?」
「いや、なんでもない。夢だったようだ」
「ふ~ん。あ、そうだ私も夢見たよ」
さて、小説とかではお約束な気がする。
「ど、どんな夢なんだ?」
「う~ん、忘れた」
おい。まあ、いいか。
「ふ~、昨日は疲れたです」
木山が疲れたように出てきた。
「どうしたんだ?」
「いや、昨日は――ってうひゃああ!?」
「うわ!?」
ビックリした。いきなり木山が大声出すとは。
「なんだよ」
「い、いや、なんでもないですよ」
「そうか?」
それにしては疲れてるように見えるんだが。
「やあ、おはよう」
「ああ、おはよう栗原」
なにやらやけにニコニコしている栗原が朝食を作っている。
「なんか機嫌よさそうだな」
「ん~、まあ、色々あってねえ~。あ、そうそう、台風は明日までには遠ざかるみたいだからきちんと変えれるから」
「そうかそれはよかった」
まあ、ここの設備ならいくらでも滞在は出来るんだろうけどな。まあ、あんな夢が現実になるかもしれないからあまり長くいたくないんだが。
「よう、三上」
「よう悠」
三上はテレビの天気予報のアナウンサーを食い入るように見つめながら言った。
「何見てんだよ」
「見てわからないか。桃子さんだ」
「誰だそりゃ」
ってああ、今写ってる天気予報のアナウンサーね。馬鹿らしい。
「お前、今、馬鹿らしいと思ったな」
こいつ読心術でも使えるのかよ。なんでわかるんだよ。
「思ったが」
「貴様は今全国の桃子さんファンを敵に回した!!」
いきなり立ち上がり指差してくる三上。
「なんだよいきなり」
「いいか、貴様はやっちゃいけないことをやっちまったんだよ」
そこまで大げさなことなねまったく。
「いいか、桃子さんはなとにかく素晴らしいんだよ!!!」
「いや、説明されなくちゃわからないし」
素晴らしいだけじゃどこが素晴らしいのかわからんだろうが。
「貴様みたいな奴に説明する必要はない。無駄だからだ!!」
あっそう。じゃあ、もう、いいよまったく。相変わらず三上は良くわからない。
「まあ、どうしても知りたいのならこれをやろう」
意味不明なパンフレットを渡された。速攻でゴミ箱行きだな。すぐにそれをゴミ箱に持って行った。面倒な三上に見つからないようにだ。見つかったら何されるかわからない。
「あ、おはようございます中宮会長」
中宮会長がリビングに入ってきた。
「ああ、おはよう。昨日は大変だったな」
「まあ、そうですけど生きてるんですから良いですよ」
「それもそうか。さて、栗原君。私も手伝おう」
「ありがとうございます生徒会長。あ、そうだ悠、沢村さん呼んできて外走ってると思うから」
「外って、おいおい。わかった呼んでくる」
栗原と中宮会長が朝食の用意をする。てきぱきと料理が完成していく。その間に僕は沢村を呼びに行くことに。その途中で佐藤に会った。
「何してんだこんなところで?」
「沢村さんを呼びに行くのよ。確か走ってたでしょ。あんたは?」
「お前もか。僕も呼びに行くところだよ」
「そう。そういえばあんた沢村さんに師匠って呼ばれてたわよね。もしかしてこんな雨の中は走るようにいったのかしら」
はっきりと佐藤の視線にははっきりと軽蔑が含まれていた。
「そんなわけないだろ。沢村が勝手にやってるんだよ。走ってること自体さっき栗原に聞いたんだからな」
「そう、てっきりあんたが走らせてるのかと思ったわ」
そうでしょうね。思いっきり軽蔑の視線が混じってましたし。
「人聞きの悪いこと言うなよ。ったく」
外に出る。雨と風が酷い。浜の方を見ると沢村が走っていた。
「お~い沢村~!!」
僕達に気がついたのか走ってきた。
「おはようございます師匠」
「おはよう沢村」
「佐藤さんもおはようございます」
「ええ、おはよう」
沢村はずぶ濡れだった。
「なんでこんな中で走ってるんだよ」
「日課ですから!!」
日課でも雨の日はやめようよ。
「日課でも雨の日はやめてくれ」
「でも…………」
「でもじゃないわよ。それで倒れられたらこっちが迷惑なのよ」
佐藤それは言いすぎじゃないか?
「は。はい」
さすがの沢村も佐藤には逆らえないのかね。とりあえずこれで雨の日は走らないでくれるだろうな。まあ、走っててもいいんだけど僕が知らないところだならだけど。
「さて、じゃあ、朝食にしますか」
そろそろできてるだろうし。
「そうね」
「そうだ~!!」
「っと、沢村お前はとりあえずシャワーでも浴びて来い」
風邪ひくからな。沢村を風呂場に押し込んだあと僕と佐藤はリビングにもどった。




