第十七話 夏休み無人島へ
夏、よく晴れる季節、太陽が笑う季節、世界が笑う季節。6月に泣いて泣きつくした世界の笑いの季節。カラッと晴れたこの夏にはたくさんのことがある。それはまさに夏だからこそだろう。歩んできた道を振り返ることもこれからのことを考えるのにもちょうど良い季節だ。この休みのうちに将来を決めることも出来るのだから。夏は何かを変えるのにはちょうどいい季節だ…………。
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7月28日、水曜日。俗に言う夏休みに僕達は突入していた。6月14日から始まった試験も佐藤のおかげかいつもよりいい点数で乗り切ったその後夏休みまでの期間をいつものようにゆったりとすごした。そして校長先生のありがたくも長く睡眠促進効果もあるという物凄くありがたい話を聞いたのは一週間前のこと。今、僕達は栗原が所有している無人島に向かっていた。無人島に行くまでの敬意は今から三日前にさかのぼる。
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一週間みっちりあった補習も終わったその日の放課後、栗原が言った。
「ねえ、みんな、28日から四日くらい予定何かある?」
「僕はないな」
別になにかあるわけでもないし。しかし、何で栗原はいきなりこんな事聞いてきたんだ?
「私もないよ~」
莉子が言う。莉子はあってもなくしそうだけどな。
「俺もだな」
「私も別にないです」
「私も」
三上と木山と佐藤が言った。みんな予定はないようだな。
「それでそれがどうしたんだ?」
「うん、その日からね僕の持ってる無人島に建てた別荘に行くんだけどみんなもどうかなと思ってね?」
「行くぜ(よ)!!」
三上と莉子が同時に言った。
「悠も行くでしょ?」
その明らかに行くしか言わせないみたいな顔をしていうな莉子。
「…………はあ、行くよ。たぶん断っても行くことになりそうだからな」
主に莉子とか莉子とか莉子とかに。莉子だけとかツッコムな。ソイツしかいないんだから。
「木山さんと佐藤さんは?」
続けて栗原が聞く。
「ん~そうですね。確かその頃には何も予定もありませんし。私も行くですよ」
「佐藤さんは?」
「そうね、行ってあげるわ」
「そう、それはよかった」
というわけで28日に栗原が所有する無人島の別荘に向かうことになったのだ。
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回想終了。
まあ、そんなわけで今現在栗原所有の船で無人島に向かっているというわけだ。ちなみに沢村はいない。赤点ばっかで鬼も逃げ出す補修中だ。
「それにしてもあの栗原ってなんなわけ」
佐藤が聞いてくる。
「ああ、佐藤は知らなかったな。栗原は結構金持ちなんだよ。栗原財閥って知ってるか?」
「あの、南雲財閥の次に大きな財閥でしょ?」
「そうだ。で、栗原はそれの後継者だ」
「マジ?」
「ああ」
「ただの同姓同名だと思ってたわ」
まあ、僕も聞いたときはビックリしたよ。まったくそんな感じしないからな。
「それでもそれが栗原だからな」
「ふ~ん、そう」
それだけ言って佐藤は船室に戻った。
「自分から聞いといてお礼もなしか」
まあ、いいんだけど。
「さてとあいつら大丈夫かな」
あいつらとは三上と莉子のことだ。
「う~、気持ち悪い~」
「駄目だ、俺吐きそう」
と二人は船酔いで完全にダウンしていた。
「う~あ~」
「うぅ~」
二人ともうなっている。少し可哀想だが、静かだからそのままにしている。
「あの二人がダウンするとこんなにも静かなんだな」
「それには同感です」
「木山か。木山は大丈夫そうだな」
「はいですよ。これくらいでダウンするようなやわな鍛え方はしてませんです」
「ああ、そう」
しかし、いつも騒がしいのはあの二人のせいというこが明確になったな。
「それにてもまだ着かないんでしょうか?」
「栗原はなにか言ってたのか?」
「何もです」
「そうか。だが、もうすぐと思うぞ」
そろそろ昼近くになってきたし。
「見えてきたよ~!」
ちょうどいいタイミングで栗原が言った。確かに前方には島が見える。
「さあ、ついたよ」
島へと上陸する。小さくもなく大きくもない中間の島で、ほぼ円形だ。
「さてと、栗原、三上達を下ろすの手伝ってくれ」
「わかった」
三上を栗原に任せ、僕は莉子を運ぶ。
ドボン!
後ろで何かが海に落ちた音がした。三上だった。
「あちゃ、落としちゃったよ」
笑顔で言う栗原。わざとだ。絶対わざとだ。とりあえず莉子を海岸に下ろす。その瞬間――。
「ふっかーつ!!」
――一瞬で復活した。
「うおおおおおおおおお!!!」
三上が海から上がってきた。
「ふっか~つ!!」
三上も同じようだ。
「「やっぱり人間は陸地だな(よね)!!」」
そう宣言する莉子or三上。
「これが今までダウンして奴らのテンションかよ」
「フッ船では遅れを取ったけどこれから盛り返すぞー!!」
「俺の本当の実力を見せてやるぜ」
聞いちゃいない。
「これは面白いことになってきたですよ」
「こっちに被害がなければな」
「私にはないのでノープログラムです」
「パソコンが動かない!?」
「おっと間違えたです」
「いや、故意だろ」
「あなたが好きです!!」
「それこそ間違いだよ!! そっちの恋じゃねえよ故意だよ!!」
おお、何か楽しい。不思議と楽しいな。あの某物語のカタツムリのツインテールと主人公が話しているときと同じ楽しさだ。いや、体験したことはないのだが。そんな感じがする。
「それはそうと狩野君私には気になることがあるのですよ」
「なんだ?」
「ギャルゲとかでメインとされるヒロインは優遇されますが、一体メインヒロインとはどういったものなのでしょうか?」
「知らないよ」
何の話だよ。
「第一メインとついていながら世間にはまったくメイン扱いされないヒロインも多いですし。ヒドインとか」
「それはまた別の話のような」
「それに比べメインではないヒロインって結構いい思いしますですからお得です」
「そういうもんかね?」
「そうですよ。第一メインと名のつくヒロインって結構酷い目にあってますよ。そこに主人公が引かれたりするわけですが」
「ああ、そう」
それを言ってどうする気だよ。
「まあ、そういうのを抜きにしても最終的にはメインヒロインは幸せになるですよ。もう、
運命とかなんとかを超越してですね」
「…………」
一瞬だが木山の顔に闇が浮かんだ気がした。すぐに消えたので気のせいなのだろう。
「まあ、それよりも~」
ニヤリと木山が笑みを浮かべる。嫌な予感がする。
「狩野君は誰がメインヒロインなんです?」
「なんでそんな話になるんだよ!」
予想通りいいものじゃなかった。
「なにを言いますか。こっちが本題です」
「長い前振りだな、おい!!」
本当に長い前振りだった。
「さあっさあ、さっさとゲロしちまいなですよ~!! ちなみに私の見立てでは今のところ最有力候補は佐藤さんといったところですかね~。キャラ的にはツンデレですがそこがまたいじらしいというかなんと言うかです。それに二年の最初には孤立してましたり。まあ、今は狩野君の助力もありマシになりましたが、そのときの縁もあってとかありますよね~♪」
「知らん」
「あれあれ~? 違うんですか~?」
「違う」
そんなことあるわけない。絶対にない。
「第二候補というかこっちのほうが本命ですかね。九条カリン。典型的お嬢様タイプ。高飛車な性格。ハーフで美少女ですね」
「な、何のことだ」
「あれあれ~♪」
ヤバイ、こればれるか?
「まあでも、九条さんの性格は狩野君の苦手なタイプですから私的に第二候補です」
「そうなのか」
「はい、まあ、彼女も色々あるみたいですけど。そのあたりの事情をあなたは知らないはずなので違いますね」
言えない実は知っているなんて言えない。木山に言った瞬間どうなるか。たぶん来世まで色々からかわれる。ばれないようにしよう。
「ん~、第三候補といっては黒江さんが妥当ですね。典型的な幼馴染キャラですし。六月にはいろいろあったみたいですしね。それに今回のもあわせて過去二回に及ぶ事件もあります。それに昔は姫様と騎士の関係だったとも聞いていますし」
「勝手に話を進めるな」
それが実は莉子が騎士だったとは口が裂けても言えないな。というより何でそのことを知っているんだよ。莉子が話すとは思えないし口止めもしたし。一体誰から聞いたんだ。
「その次はまあ、私といったところですね。佐藤さんとかと会う前から知り合いでしたし。新聞部のときもいろいろ手伝ってもらいましたから」
「何を言ってるんだよ」
それに自分のことだろう。いいのかそれは。自分で言っちゃたら世話ないだろう。そんなことを気にせず木山の話は続いていく。少しは僕の話を聞けよ。
「あとは真希ちゃんですかね~真希ちゃんはまだ後輩ですし、あまりないと思いますが師匠と弟子の関係ですから何があるかわかりません」
何もない何もない。会ったらいけないだろ。後輩だぞ。確かに可愛い子だけどね。意外に胸とか大きいしってなに考えてるんだ僕は。
「大穴で生徒会長というのもありですね。ふ~ん、会ったのは少ないですがそれなりに濃い出会いだったと思いますし」
「おい」
「他には小雪ちゃんもいますよね~」
だからどうして木山はそんなことまで知ってるんだよ。おかしいだろ。僕は話したこともないぞ。
「まあ、まだ見ぬヒロインもいそうなのでがんばれです。私の予感ではこの島には野生児のロリっ子がいそうです。金髪碧眼で海難事故でこの島で過ごしていたという設定の」
「おい」
「いや~楽しみですね~。じゃあ、私はさっさと別荘に行くです」
話も聞かず木山は別荘に言ってしまった。
「言うだけ言って行きやがったよ」
本当になんだったんだろう。てか、そんなロリっ子とかいても困るだけだろう。
「ほら、そんなところに突っ立ってないでいくわよ」
佐藤が言った。
「ああ、そうだな」
「はい」
佐藤が荷物を差し出してくる。
「なんだ?」
「持ってくれる」
「自分で持ってくれ」
「いいから持ちなさい。こういうときに男の手を借りなくてなんなのよ」
「…………」
おいおい、はじめて会ったときと性格変わりすぎじゃないか?
「早くしなさいよ」
「はいはい、わかりましたよ。お姫様」
「じゃあ、運んどきなさいよ」
それだけ言って佐藤は栗原別荘に向かった。
「はあ~。まあ、佐藤からしたらいいことなのかな? 納得は出来ないが」
仕方なく荷物を持って別荘へと向かった。
夏休み編突入




