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恋も幸せも彼女しだい  作者: テイク
第一章 出会いは初夏のあの日から
16/50

第十六話 食堂バトル後師弟

 九条姉妹が保健室に行くのを見送って僕は再び食堂へと向かっていた。


「さてと、さっさと食堂に行こう」

・

・

・

 大食堂に着いた。中は今だ食事中の中学生がいなかった。いや、正確には中学生はいた。だが何かに注目しているようで一ヶ所に固まっていた。


「何だ?」


 人垣を避けながら何とか前へ。中学生達が注目していたのは中宮会長とセミロングの茶髪にピンクのリボンをつけた癖っ毛の小柄な女の子だった。さらに女の子はピンクのグローブをつけていた。あのゲームの格闘家がつけてる指のでたやつね。そして白の半袖ブラウスにスカート姿。何なんだ?


「なんだよこの状況」

「それは私も聞きたいわ」


 腕を組んだ佐藤が言った。確か中学生の案内だったか仕事は。


「見てたんじゃないのか?」

「いきなりだからわからないのよ」

「そうか」


 なら見ているしかないな。それにしても中学生は昼食食べなくていいのか? とか思っているうちに事態は進行していく。


「もう一度言うぞ。このボクと勝負しろ!!」


 小柄な女の子が言う。えらくボーイッシュな子だな。中学生ではないようだが。てか勝負って……。


「それは良いが何で私と戦うんだ?」


 中宮会長が小柄な子に聞く。もっとな疑問だ。


「アンタが強いからだ!!」


 どういう理由だよ。てか、いいのかこれこのままにしてて。


「駄目でしょ」


 佐藤が言う。ですよね~、


「まあ、中宮会長だし大丈夫じゃないか?」

「だといいけど」


 佐藤は大丈夫とは思っていないようだ。いかぶしげに中宮会長を見ている。


「そうか…………なら、いいぞ。かかって来い!!」


 中宮会長が言い放ち決戦の火蓋は切って落とされた。佐藤のやっぱりって顔が何か悔しい。


「行くぞ。埜宮高校一年生沢村真希(さわむらまき)行くぞ!!」


 沢村と名乗った女の子は拳を握りしめ駆け出す。てか、コイツうちの生徒か。なにやってんだよ。てか一年生にこんな奴いたか? 制服も違うし転校生なのか?


「ああっとそうだった忘れていた。まだ仕事が残ってたな。ふむ」


 なぜか周りを見渡す中宮会長。そして僕と目が合った。嫌な予感がする。


「よし」


 案の定というか予想通りというか、いきなり腕を掴まれて向かってくる沢村って子の前に出された。


「なんだそいつ!!」


 沢村が言う。うん、当然の疑問だ。僕でもそう思うよ。当事者じゃなければ。


「こいつは私が選んだ男だ。ああ、言ったが気が変わった。コイツに勝たない限り私は勝負はしない」


 僕の意思は完全に無視されて話は進む。かかってこいっていったのは中宮会長自身なのに。


「なら、一撃で沈めてやる!!」

「では、頼んだぞ。勝手だとは思うがまあ、あとでなにかお返しはする。だから頼んだ」


 ポンッと僕の方を叩いて中宮会長は去っていった。はあ~仕方ない何とかしよう。このままじゃオープンスクールにも支障がでる。


「死ねやー!!」

「おっと!」


 沢村が拳を構えはなってくる。


 パシッ!


 その拳を片手で受け止める。


「!?」

「ったく、危ないだろ」

「フンッ!!」


 すかさず沢村はあいている左手でもう一撃を放とうとする。


 パシッ!!


 それも受け止めた。


「なろ~!!」


 今度は右足で蹴りを放つ沢村。かなり無茶な体勢だ。さすがというべきなのか沢村は体はやわらかかったらしくその蹴りは僕の顔に向かっていた。無茶な体勢ではなったはずだが中々威力がありそうな感じ。てか、スカートなのに大丈夫か。…………スパッツを穿いていた。いや、別に残念とか思ってはない。


「もらった~!!」


 勝利を確信したであろう沢村が言う。何せ僕は今両手はふさがっているのだから。


 ガッ!!


「な!?」


 だけど僕はそれを沢村の腕を掴んだまま右腕を動かして防いだ。予想通り痛いが予想していた分心構えは出来ていた。顔に喰らうよりはマシだし。


「この!! 離せよ!!」

「お前話したらまた殴りかかってくるだろ!!」

「当たり前だ!!」

「なら駄目だ」

「このー!!」


 沢村は僕の手から逃れようと色々してるがそんなことでは離す分けない。予想外なことさえなければ。


「この!!」


 ゴーン!!


「ガッ!!」


 この予想外な頭突きさえなければ。沢村の額が僕の額にクリーンヒット。あまりに予想外だったのでモロに喰らってしまい沢村を離してしまった。


「痛!」

「いった~!!」


 だが、まあ、沢村本人もダメージを喰らったようで額を押さえ涙目でもだえている。少し可哀想だなとか思ったり少し保護欲をかきたてられたりしかけた。実際はしてないよ断じて言うけど。


「よ、よくもやったな~!!」


 復活した沢村が言う。自業自得と思う。僕に責任の一端はあるのだけれど頭突きをして来たのはあっちだ。


「それ完全に逆恨みだよな!? 僕も痛かったんだけど!?」

「うるさ~い!!」

「こいつまったく人の話を聞く気ねえ!!」


 問答無用で殴りかかってくる沢村。女の子を殴るわけにはいかないな。さてどうするか。となったら受け止め受け流すしかない。


「てりゃ! そりゃ! てっ! やっ!!」


 拳を連続で放って来るが僕はそれを時には避け、時には受け止め、時には受け流してしのいでいた。しばらく続けていると――。


「はあ、はあ、てりゃ! はあ、はっ!」


 ――沢村は息があがってきた。さすがにこれだけ連続で殴りかかってきたらこうなる。対して僕は受け止めたり受け流してるだけなのでほとんど消耗してない。


「はあはあこの!」

「もう、やめろよ」

「嫌だ!!」


 そう言って拳を放とうとするがそこで沢村は足をもつれさせてよろめき転けた。僕は咄嗟に受け止めた。


「まだ、やるか?」

「うぅ」


 僕の腕の中でスタミナ切れでぐったり沢村。とりあえずどこかに運ぶことにしよう。沢村を抱きかかえる。俗に言うお姫様抱っこだ。沢村は何か言いたげだが何も言わなかった。


「佐藤、後頼んだ」

「はいはい、わかったからあんたはその子を何とかしてあげなさい」

「ああ」


 あとを中学生を佐藤に任せてとりあえず保健室に沢村を連れて行く。時間が経っていたせいか九条姉妹はいなかった。さっきの食堂にいた気がする。


「よっと」


 ベッドに沢村を寝かせる。ここに来るまでに寝てしまった。


「ふむ、何とかなったようだな」

「うわっ!!」


 隣に中宮会長がいた。気配も何も感じなかった。いきなり現れたのだ。


「とりあえず君は沢村真希についていてくれ。目覚めた時に誰もいなかったら不安だろうしな」

「…………わかりました」

「じゃあ、頼んだぞ」


 中宮会長は保健室を出て行った。


「はあ、なぜこんなことに」


 呟いても沢村に起きる気配はない。


「もう食べられないよ~ムニャムニャ」

「殴りたくなってきた」


 まったく。気持ちよさそうに眠りやがって。

・

・

・

「はっ!!」


 沢村が勢いよく跳ね起きた。


「起きたか」


 寝過ぎだろコイツ。もう夕方だぞ。既にオープンスクールは終わっている。あいつらには悪いことをしたとしか言えないな。原因はコイツと中宮会長なのだが。


「あれ? ボクは?」

「お前疲れて寝てたんだよ」

「え!? じゃ、じゃあ勝負は?」

「お前の負けだろうな」

「そんな~」


 うなだれる沢村。可哀想なんだが巻き込まれた僕としては素直に同情はできない。


「まあ、あの調子なら中宮会長には勝てないと思うけど」


 これで諦めてくれるといいんだけど。まあ、それで諦めたら楽なんだが諦めないだろうな。


「うぅ……」


  あれ、何か泣きそうな感じ。ってちょっとまて! どうする、この前莉子が泣いてたときはわかる状況だったからよかったが女の子と関わることがあまりなかった僕にとって女の子しかも年下が泣きそうになったときの対処法など知らない。


「うわああ!!」

「うわ!!」


 急に叫びだした沢村。


「うっし!!」


 頬を二回叩いた沢村。ってか泣きかけてたわけじゃないのね。ああ、そう……。


「よし、決めた!!」

「何をだよ」

「弟子にしてくれ!!」

「は!?」


 ちょっと待てわけがわからない。沢村はなんと言った。弟子にしてくれ、何でだ。


「ボクは悟ったんだ。もっと強い奴に勝つには師匠が必要だと!!」

「なんでそれで僕になる」

「意外に強そうだし。それに男だし」

「なんでそうなるんだよ」


 本当に意味がわからない。


「それになんでそう強い奴と戦いたいんだよ」

「…………」


 沢村の雰囲気が少し暗くなる。


「ボクには兄がいたんだ。ボクの家は武術家の家系で兄もボクもそれを習ってたんだけど。兄は本当に強かったんだ。四歳で免許皆伝。ボクの自慢の兄だったんだよ。だけど…………」

「だけど?」

「だけど、あの女が全部壊して行ったんだ。五年前、兄とある女が戦ったんだ。ボクもそのときはいなかったからわからないけど、それで兄は負けたんだ。父も母もそのときに殺された。兄はそのあとに自殺した。ボクはその時の女が許せないんだ。ボクは顔を見てないけどそいつはすごい強いんだ。だから…………」

「…………」


 それは復讐だった。強い女という条件だけでその相手を探すのはどんなに大変だろう。どれだけの覚悟なのだろう。僕にはわからないしこれから一生わかることはないだろう。だけどひとつだけいえるのは何があっても復讐はしてはいけないということ。


「だから……頼む師匠になってくれ!! ボクはアンタ以上に強そうな男は知らない! 師匠になってくれるのならどんなことでもする!!」


 額を床につけて土下座してくる沢村。


「顔を上げろ」

「じゃあ!」

「条件次第ではなってやる」

「条件は?」


 おそらく沢村はどんな条件でも了承するだろう。それに復讐をやめろといってもやめる気はないだろう。なら、そんな気を起こせないくらい楽しく過ごさせて僕がコイツを納得させればいいと思う。正直言って僕にそんな大役が勤まるとは思えないけど、僕にしか出来ないのならやってあげよう。たぶん、他の奴らでもそう言うと思うから。


「自分を大切にしてそんな態度はもうとらないこと」

「そんなとは?」

「何でもするって言うところ。お前可愛いんだからさそんなこと、僕以外、特に三上って言う僕の知り合いに言ったら何されるかわかったもんじゃないぞ」

「か! かかかかか、可愛い!? ボ、ボクが!?」


 真っ赤になって言う沢村。どうしたんだ? それにしゃべれてないし。


「大丈夫か?」

「だ、だだ大丈夫だ、うん…………」


 それでも顔は真っ赤だけどまあ、本人が大丈夫って言ってるから大丈夫なんだろう。さて、条件はもう一つあるからなそれも言っておかないと。


「それともうひとつ」

「なんだ?」

「復讐をやめろとは言わないけどそれが自分の幸せか考えろ。そして自分の幸せを生きろ。その二つでいい」

「え、でも…………」


 沢村はもっときついのが来ると思ってたようで拍子抜けしている。だけど、それでいいんだと思う。


「さてと、じゃあ、帰るかな。お前も遅くならないうちに帰れよ」

「………は、はい師匠!!」


 少しむずがゆくなりながらも僕はとりあえず帰路についた。

・

・

・

 さて、あまり弊害がないと思って師匠になったわけだが、弊害があった。


「師匠!! ご飯かってきましたよ!!」

「余計なことしなくていい」

「でも~!」


 昼休みには勝手に購買でパンを買ってきたり。


「師匠!! 書類ですか持ちますよ!!」

「あ、おい」


 中宮会長に押し付けられた仕事を勝手に手伝ったり。


 聞く分にはいい子かと思えるんだが、実際にやられるとうっとしい。三上に相談したところ。


「死ねカス」


 と物凄いドスの利いた声言われた。あのときの迫力は忘れられないな。


「師匠~!」


 まあ、善意で慕ってくれてるので無碍にも出来ないし。…………まあ、いいか。そのうちなんとかなるだろう。ならなくてもするさ。


何か師弟誕生。勢いでやっちゃたよ。一体この小説はどこに向かうのだろうか。それは作者のみ知る。


まあ、真希ちゃんは結構書きやすいキャラなのでたびたび登場させる予定です。

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