第十五話 九条妹
中宮会長の予想外の“ご褒美”によるフリーズが解けた僕はとりあえず食堂へ行くことにした。時間も丁度いいからだ。気づけば結構長く説明していたことがわかる。丁度中学生も食堂だろうがそれくらいで満員になるほど食堂は狭くない。逆に余る。
「さてと、みんなも食堂にいるかな?」
今の時間ならその確立は高いだろう。中学生の驚いている顔が目に浮かぶ。それほどまでにうちの高校の食堂はでかいし広い。
「あら?」
「げ」
「なんですの会って早々。失礼じゃなくて?」
ここにはいないはずの九条が居た。何でだ。予想外過ぎてあんなこと言っちゃったよ。どうするってもうどうしようもねえよ。
「知らん」
「……まったく失礼な男ですわね。それであなたは何をやっていますの?」
「お前こそなんだよ。今学校に来る用事とかないだろ」
「妹の付き添いですわ」
「………………」
コイツに妹とかいたのか。意外だ。九条のキャラなら妹の付き添いとか来ないと思うんだけど。逆に一人で行きなさいって突き放しそうなタイプだし。
「何ですのその目は?」
「いや、意外だと思ってな」
「はあ~、アナタ私をなんだと思ってるんですの?」
「九条」
「…………」
ジト目で睨まれた。その顔もいいな…………ゲフンゲフン。いやいや、僕は当たり前のことを言っただけだうん。そうだうん。
「冗談だよ」
「……まあ、いいですわ。私だって妹が来てくれといわれたら行きますわよ」
「優しいんだな」
「あら、こんなの当たり前のことじゃなくて」
「そうだな」
僕にはわからないけど妹や弟を持つってそういうことなのだろうか。ちなみに作者には双子の弟がいるらしいのだがまったくそんな気にはならないそうだ。現実と虚構の壁は厚いということだ。
「アナタ何バカな顔してますの?」
「は!? いや、ちょっと考え事をしてた。それで、その妹はどこ行ったんだ?」
「トイレですわよ」
「ああ」
「あ、来ましたわ」
向こうの方から九条(姉)をひとまわりかふたまわり小さくした感じだが九条(姉)のように性格はきつそうではない女の子が歩いてきた。どこかおっとりしているというか人見知りというか気の弱そうな印象を受ける。九条(姉)とは正反対の印象の九条(妹)だ。違いといえば九条(姉)が髪を二つ結びというかツインテールというかにしているのに対し九条(妹)は結んでいないというくらいだ。
「お姉ちゃ~ん~!」
「そんなに走ると転びますわよ~!」
「大丈――きゃっ!!」
転けた。かなり痛そうだ。
「まったく何やってますの」
九条(姉)が九条(妹)のもとに駆け寄って行く。とりあえず僕も行く。
「ふえぇ~痛いです~」
「ほらほら、しっかりしなさい。大丈夫ですわよ」
物凄く意外な光景だ。どこか人を見下した感じの九条(姉)が妹には優しい。
「膝をすりむいてますわねえ~っととりあえず保健室に」
「大丈夫だよ~」
「駄目ですわよ」
妹には取り合わず九条(姉)は妹を連れて行こうとする。が九条(妹)は抵抗する。
「きちんと処置しといた方がいいぞ」
そのまま膠着状態になりそうだったから言った。小さな怪我でもきちんと処置するにこしたことはない。
「!?」
今になって僕の存在に気がついたらしい九条(妹)は驚きの速さで九条(姉)の後ろに隠れてしまった。
「…………」
「………………」
思わぬところで膠着状態になった。僕の心境としてはいきなり隠れられて結構悲しいのだが。とりあえず説明を九条(姉)に求める。
「この子は昔から人見知りなんですの。同世代の女の子なら良いんですけど男子、特に年上の男を見るとすぐこれですわ」
「そうか」
ひとまず納得する。いきなり隠れられたのは悲しかったがそういうことなら納得できるし対処のしようがある。
「ほら、ひとみ。この男は嫌な奴ですけどヘタレで無害ですから安心して挨拶なさい」
「おい」
かなり馬鹿にされたぞ。初めてだよ人に紹介されるときに馬鹿にされたの。だが、そんな紹介で安心したのかおずおずと顔を出して九条(妹)は名乗った。
「九条ひとみ、です」
「よろしくひとみちゃん。僕は狩野悠。よろしく」
「あなたがお姉ちゃんがよく話してた人ですか」
おい、九条、ひとみちゃんに何を話したんだよ。当の九条は知らん顔だ。
「まあ、そんなことより保健室に行きますわよ」
「いいよ~」
そしてまた振り出しに戻る会話。
「ひとみちゃん。とりあえず保健室に行って消毒位はした方がいいよ」
二人だけにすると話が進まないので僕はひとみちゃんを保健室に行くように説得する事にする。そっちの方が何かと良さそうだし。
「む~」
「ほら、あなただけですわよ」
「む~、わかった」
「じゃあ、行きますわよ。一応礼は言っておきますわありがとうございました」
「別に構わない」
「そう、では」
九条姉妹は保健室に向かった。
「姉妹ね」
僕はそれを見送った。




